ヨット教室物語・第905話

香織も、隆と陽子が話している会社であった

ことの話に加わっていた。

お昼の食事の準備とかは、ほとんど麻美子と

瑠璃子たちのグループが準備してくれてしま

うので、こちらの3人は、お昼の買い出しと

は全く関係のない話をしていた。

「何のお菓子にする?」

「私、ぜったいマカロンがいい」

「マカロンなんて、デパートでも行かないと

相鉄ローゼンに売っているのかな」

ヨット教室物語・第904話

中村さんは、スーパーまでの道を麻美子と話

しながら歩いていた。

「なんかさ、私、今週は会社で倉庫作業とか

ばかりやっていた」

「マジで、陽子ってオフィスワーカーの仕事

じゃないの?」

「そうなんだけど。人手が足りないとかで、

駆り出されていた」

「私も、基本は国語の授業なんだけど、体育

館で体育の授業させられることもあるよ」

ヨット教室物語・第903話

中村さんは、香織がラッコと一緒に行きたそ

うなのを察してくれたようだった。

「アクエリアスさんは、今日のお昼は何にし

ますか?」

「何にしようかね。たぶん毎度お馴染みのパ

スタかな」

中村さんは、麻美子に答えた。

「うちは、野菜シチューにする予定です」

「相変わらず、ラッコさんの料理は、いつも

凝っているね」

ヨット教室物語・第902話

「備品の取り出しは後回しにして、うちも、

お昼の買い出しにスーパー行こうか」

中村さんが、アクエリアスのクルーたちに声

をかけた。

「行きましょう!」

香織が、中村さんの提案に賛同して、隆や陽

子の横に並んで、もう一緒に行くつもりにな

っていた。

「よし、アクエリアスも一緒に、買い出しへ

出かけよう!」

ヨット教室物語・第901話

ラッコのクルーたちは、マリーナの正門を抜

けて、どこかに出かけるところだった。

「すぐそこのスーパーまで、今日のお昼の買

い出しに行ってくるの」

麻美子が、香織に返事した。

「え、隆さんも皆揃ってゾロゾロと相鉄ロー

ゼンまで買い出しに行くの?」

「なんかね、それぞれ好きなお菓子も買いた

いし、皆で行こうって話になったのよ」

陽子が、香織に答えた。

ヨット教室物語・第900話

「おはよう!」

香織が、アクエリアスの備品を、横浜マリー

ナにあるアクエリアスのロッカーから中村さ

んと一緒に取り出そうとしていた時、ラッコ

のクルーたち皆とすれ違ったので、元気に挨

拶した。

「おはよう、香織ちゃん!」

ラッコのクルーたちも香織に挨拶を返した。

「これから、どこかに行くの?」

「うん、ちょっとそこまで」

ヨット教室物語・第899話

「今のは、ただの例え話だからね」

隆は、麻美子の顔を覗き込んだ。

「別に、今の時点では、ラッコの誰も、他の

ヨットに行くなんて話をしていないからね」

「ええ、わかっているわよ」

麻美子は、隆に答えた。

「え、何?どうしたの?」

麻美子は自分の顔を覗いている隆に聞いた。

「泣いているのかと思って」

「え、泣いてなんかいないわよ」

ヨット教室物語・第898話

「あるいは、他の船に行くのは香代じゃない

かもしれない。瑠璃子がアンドサンクに乗り

たいって言うかもしれない。雪がうららに

たいって言うかもしれない」

「それはそうだよね、皆それぞれに乗りたい

ヨットはあるんだし、仕方ないよね」

麻美子は、少し寂しそうに納得していた。

「その時は、だめって言うのではなくて、そ

の子のことを笑顔で送り出してあげるわ」

麻美子は、少し寂しそうに言った。

ヨット教室物語・第897話

「え、それはそうよね」

麻美子は、隆に答えた。

「もしかしたら、香代ちゃんが卒業して乗り

たいのは、アクエリアスではないかもしれな

い。ぜんぜん別のヨットで、うららかもしれ

ない。あるいはフェリックスかもしれない」

麻美子は、隆から香代がラッコでないヨット

に行ってしまうかもって話を聞いて、別に、

そう香代が話した訳でもないのに、少し寂し

くなってしまっていた。

ヨット教室物語・第896話

「何?」

麻美子は、隆に聞いた。

「香織ちゃんが卒業してラッコに来ましたは

良いんだけど、それは、今うちの船にいる皆

にも同じことが言えるってことだからね」

隆は、麻美子に言った。

「例えば、香代ちゃんが11月に卒業して、

ラッコじゃなくてアクエリアスに乗りたいっ

て言った時は、香代ちゃんはアクエリアスに

乗っても良いんだからね」

ヨット教室物語・第895話

隆は、麻美子に言った。

「やっぱり、私から話すわ」

麻美子が、隆に言った。

「隆から話すと、話がややこしくなりそう」

「何それ?」

隆は、麻美子に抗議したが、

「まあ、麻美子が話してくれるのだったら、

その方が俺も助かるけど」

隆が、話を続けた。

「一つ、麻美子に付け加えておくけど」

ヨット教室物語・第894話

「わかった!そしたらさ、その説明は隆から

香織ちゃんにしてあげてくれる」

「え、なんで俺が?俺は、別に香織からそん

な相談されていないんだけど」

「だって、隆の方が香織ちゃんや陽子ちゃん

とも仲が良いじゃないの。いつもお喋りして

いること多いし」

麻美子は、隆に言った。

「機会があったら、その話を俺から香織にす

るのは良いけどさ」

ヨット教室物語・第893話

「ちなみに、11月過ぎて香織ちゃんがラッ

コに乗る時は、うちの船では特に生徒は募集

していないから、香織ちゃんはクルーとして

乗ることになるけど」

「そういうことか」

麻美子は、隆の説明で理解できた。

「そしたら、香織ちゃんにそう説明してあげ

れば良いってことね」

「そうだね」

「ヨット教室のシステムがよくわかったわ」

ヨット教室物語・第892話

誰かのヨットに乗り続けても良いんだよ」

「つまり、11月を過ぎて卒業証書をもらっ

て卒業してしまえば、横浜マリーナからも、

そこで配属されていたヨットからも、生徒は

実質フリーになるってことね」

麻美子が話を続けた。

「11月を過ぎて、香織ちゃんがラッコの生

徒さんになりたいと言ったら、香織ちゃんも

ラッコの生徒さんになれるってこと」

「そうだね」

ヨット教室物語・第891話

麻美子は、隆に頷いた。

「じゃ、どっちにしても香織ちゃんだけじゃ

なくて、香代ちゃんも、皆も11月で終わる

んだ」

麻美子は少し寂しそうに呟いた。

「せっかく仲良くなれたのに残念ね」

「え、なんか勘違いしていない?」

「11月でクルージングヨット教室を卒業し

たら、その後は、自分の新しいヨットを購入

してもいいし、そのまま配属されたヨットや

ヨット教室物語・第890話

「横浜マリーナの、クルージングヨット教室

の開催時期は5月〜11月までの6ヶ月間が

受講期間なんだよ」

隆が説明した。

「11月の終わりにヨット教室の卒業式があ

って、生徒たちは、そこでマリーナからヨッ

ト教室の卒業証書をもらって、そこでクルー

ジングヨット教室は終わりなんだよ」

隆は、麻美子に伝えた。

「そうね、それはそうか」

ヨット教室物語・第889話

ばさん仲間だし」

「なんか麻美子って欲張りだな」

隆は、麻美子のひとり言に苦笑した。

「ただ、可能性として考えられるのは、香織

っていうのは、うちらが船を保管している横

浜マリーナで主催しているクルージングヨッ

ト教室の生徒さんなんだよ」

「それは、わかっているわよ」

麻美子は、隆に返事した。

「ってことは、」

ヨット教室物語・第888話

「トレードって言うけど、アクエリアスから

香織ちゃんを出すとして、ラッコからは一体

誰を香織ちゃんの代わりに出すつもりなの」

「それはそうね」

麻美子は、隆に言われて、気づいた。

「香代ちゃんはぜったい駄目だし、陽子ちゃ

んは隆の話し相手だし、瑠璃ちゃんはラッコ

にいてくれるだけで雰囲気が明るくなる大切

なムードメーカーだし、雪ちゃんは私とほぼ

同い年のおばさん同士の井戸端会議できるお

ヨット教室物語・第887話

「それって、今ここで話す内容なのか?周り

に他の社員もいっぱい食べに来ている中で」

隆は、麻美子に言った。

「別に良いんじゃないの。知られて困るよう

な話でもないし、今はお昼休みなんだから、

仕事と何の関係も無い、プライベートな話を

していても良いんじゃない」

「まあ、そうだけどね」

隆は、麻美子に答えた。

「トレードね」

ヨット教室物語・第886話

「香織ちゃんってトレード出来ないかな?」

会社で、お昼休みの時間になったので、麻美

子は、隆に話しかけた。

「トレード?」

「うん。香織ちゃんがね、アクエリアスじゃ

なくて、私たちと一緒に、ラッコに乗りたい

って言うのよ」

麻美子は、隆に相談した。

麻美子が隆に相談していたのは、会社の昼休

み中に来ていた渋谷の食堂だった。

ヨット教室物語・第885話

麻美子は、車を運転しながら助手席の隆に声

をかけたが、隆からは返事が無かった。

麻美子は、信号待ちでチラッと助手席の方に

目を向けると、隆は眠ってしまっていた。

「なんか倦怠期の夫婦みたいなんだけど」

さっきまで香織や陽子たちと大声で話して

いた隆が、皆が降りてしまうと、すぐに居眠

りしてしまっているのを見て、麻美子は苦笑

していた。

「お酒かな、気持ち良さそうな寝顔」

ヨット教室物語・第884話

車は、マリーナ駐車場を出発すると、近くの

根岸駅まで移動し、そこで皆を車から降ろし

て、皆は根岸線に乗り換えて、それぞれの自

宅に帰っていった。

皆を降ろすと、麻美子は助手席の隆だけ乗せ

て、東京の中目黒の自宅に向かって、運転を

続けていた。

「香織ちゃんって、かわいい子だったよね。

本当にうちのラッコになれたら良いのにね」

麻美子は、隆に言った。

ヨット教室物語・第883話

隆が、香織に言った。

「普段は、おとなしそうに見えていて、内心

はすごい情熱を持っている。一度、ヨットの

ラットを握らせれば、その本性はすごい」

隆が言った。

「何よ、それ」

運転していた麻美子が吹き出していた。

「それは一度、ラッコに乗って、香代ちゃん

が変身した姿を拝見してみなきゃだわ」

香織は、隆に返事した。

ヨット教室物語・第882話

「ボースンは、ヘルマーのこと」

隆が説明した。

「ヨットの舵を握っている人のこと」

「ああ、今日のレースだと、隆さんの担当し

ていた場所のこと」

「そうだね」

隆は、香織に頷いた。

「可愛いから、ぜんぜんそう見えない」

「だろう、ぜんぜん見えないだろう。でも、

実はラッコのヘルマーなんだよ」

ヨット教室物語・第881話

麻美子が運転席に座り、隆と一緒に香代が助

手席に座っていた。

「香代ちゃんって、いつも隆さんと一緒に、

そこの席に座っているんだ」

「うん。うちのかわいい子供だからね」

運転席の麻美子が、香代の頭を優しく撫でな

がら、香織に答えた。

「こう見えて、香代はうちのボースンだよ」

隆が、香織に言った。

「ボースン?」

ヨット教室物語・第880話

「もしかして、皆いつも、この車に乗ってい

て、ヨットの行き帰りも一緒なの?」

香織も、皆と一緒に隆の車へ乗り込みながら

聞いた。

「すぐ近くの最寄り駅までだけどね」

陽子が、香織に答えた。

「本当、ラッコの活動って、合宿みたいで楽

しそうなんだけど」

香織は、陽子に言った。

「他のヨットもだいたいこんなだと思うよ」

ヨット教室物語・第879話

「なんか、香織ちゃんも、うちのヨットのク

ルーみたいに思えるんだけど」

麻美子が今日出会った新しい仲間、香織に話

すと、香織も嬉しそうに麻美子へ頷いた。

「香織ちゃんも、来週からラッコへ一緒に乗

れば良いのにね」

「私も、ラッコのクルーになりたいな」

香織は、隆に言った。

マリーナの駐車場に到着すると、皆は停まっ

ている隆の丸い車、エスティマに乗った。

ヨット教室物語・第878話

「私たち友達チームで、香織ちゃんも一緒で

うらら借りてレースに出るの良いね」

陽子が、隆の案に微笑んだ。

ビールパーティーが終わって、ラッコのクル

ーたちは隆の車が停まっているマリーナの駐

車場までの道をブラブラとお喋りをしながら

歩いていた。

「香織ちゃんも一緒にいるよね」

麻美子は、隆と陽子の横に並んでいる香織を

見つけて言った。

ヨット教室物語・第877話

陽子が言った。

「このメンバー?」

「うん。ラッコのメンバーの隆さん、麻美ち

ゃん、香代ちゃんに瑠璃ちゃん、雪ちゃんと

私に、香織ちゃんも入れたメンバーで優勝し

たくない」

「してみたいね」

雪が頷いた。

「そしたら、今のメンバーで、松浦さんから

うららのヨットを借りるか」

ヨット教室物語・第876話

「ラッコが優勝したとき?」

隆は、麻美子の言葉に反応した。

「ラッコが優勝する時って、そんな日はほぼ

来ないだろうけどな」

自分のヨット、木材が豊富に使われた重たい

船体を想像しながら、隆は苦笑していた。

「だから、きたらの話よ」

「きたらの話ね」

隆は、麻美子に頷いた。

「このメンバーで優勝できたら良いな」