神津島の港は狭いので、新島のように2艇で
縦に並んで停泊できるスペースは無かった。
運よく、ラッコとアクエリアスは停泊できる
空きスペースを見つけられたが、その後にや
って来たボートとヨットは、もう停泊できる
スペースが無く、神津島に停泊するのを諦め
て、港外へと出て行った。
「あのヨットって、泊めれなくて出て行って
しまったけど、今晩はどこに泊まるのかな」
麻美子が心配そうに呟いた。
神津島の港は狭いので、新島のように2艇で
縦に並んで停泊できるスペースは無かった。
運よく、ラッコとアクエリアスは停泊できる
空きスペースを見つけられたが、その後にや
って来たボートとヨットは、もう停泊できる
スペースが無く、神津島に停泊するのを諦め
て、港外へと出て行った。
「あのヨットって、泊めれなくて出て行って
しまったけど、今晩はどこに泊まるのかな」
麻美子が心配そうに呟いた。
「陽子、今回も仕方ない」
隆が、陽子に言った。
「前のアンカーは使えないから、手動で後ろ
側からアンカーを打とう」
「うん、わかった」
陽子は、瑠璃子や雪とアンカーの準備した。
岸壁に停泊しているボートとヨットの隙間に
ようやく2艇分の空きスペースを見つけて、
アクエリアスと並んで、スターンにアンカー
を打って停泊させた。
アクエリアスの中村さんが、ラッコに向かっ
て大声で呼びかけたのに対して、隆は、アク
エリアスに手を上げて、了解と合図した。
「じゃ、入港しようか」
隆は、セイルを下ろして、港の入り口近くに
来るギリギリまで、香代にヘルムを取らせて
港内に入るギリギリでヘルムを交代した。
「ここの港も、ボートやヨットで随分混み合
っているな」
隆は、ヘルムを取りながら言った。
さっきまで見ていた側の神津島は緑が多かっ
たのに、逆側に来たら、緑が切り開かれてい
て、山の上の方まで家々が建ち並び、街が出
来上がっていた。
「こちら側が、熱海からやって来ている観光
船も泊まる神津島の中心だもの」
隆は、麻美子と雪に伝えた。
「今日は、神津島に入りませんか!?」
ラッコの真横に寄って来て、並んで並走して
いたアクエリアスが声をかけてきた。
「神津島って緑豊かな島なのね」
「三宅島も緑多くなかった」
「それに比べると、新島って民家とか岩場が
多くて緑が少なかったよね」
麻美子と雪は、話していた。
ラッコとアクエリアスは、順調にセーリング
を続けて来て、昼過ぎには神津島を半周して
神津島の三宅島側とは反対側に来ていた。
「え、家の数が多くなってない」
麻美子は、神津島を見て言った。
「昨日、うちが魚を釣ったから、今日は向こ
うが釣り上げようと張り切っているのかな」
麻美子が、香代に言った。
「そういえば、昨日のシイラってまだ残って
いるの?」
「もう残ってない、みんな食べてしまったじ
ゃないの」
麻美子が、隆に答えた。
「そうなんだ。残ってたら、今日のお昼ごは
んに食べたかったのにな」
今日も、真夏にしては珍しく良い風が吹いて
いるので、ラッコはメインセイル、ミズンセ
イルにジブセイルも出して、エンジンは停止
し、セーリングで神津島を周っていた。
斜め右前方を走っているアクエリアスも、メ
インとジブセイルでセーリングしていた。
「アクエリアスって釣りをしているよ」
視力が2・0の香代が、アクエリアスの船尾
から垂れ流しているトローリング用の赤い飛
行機を見つけて、隆に報告していた。
「どうせなら、昨日は新島から直線距離で三
宅島まで走ってきたけど、帰りは、このまま
沖合いから神津島をぐるっと周って、反対側
から式根島の方へ戻ろうか」
隆は、舵を握っている香代に指示を出した。
「はあい!で、私も御蔵島に来るときは、一
緒に来たいんだけど」
「ああ、もちろん香代も一緒に、ラッコに乗
って御蔵島に来よう!あと、雪もな」
隆は、香代にも頷いていた。
「陽子ちゃん、隆さんは麻美ちゃんと一緒に
来たくて聞いたんじゃないの」
「あ、そうか!ごめんごめん」
陽子は、雪に言われて、横の席に座っている
隆に謝っていた。
「あ、いや別に、麻美子だけじゃなく陽子と
も一緒に行きたかったよ」
隆は、陽子に返事した。
「それじゃ、また皆でも来ましょう!」
「でも、来年は西伊豆でしょう」
「俺もまだ上陸したことない島だ、御蔵島は
一度行ってみたいんだ」
「じゃ、また今度、たっぷり時間を作って、
ここまで本当に来ないとね」
麻美子は、隆に言った。
「時間を作って、御蔵島に行く時は、俺に付
き合って一緒に行ってくれるか?」
「うん!」
麻美子よりも先に、陽子と瑠璃子が大きく頷
いていた。
「近くに見えているのかもしれないけど、意
外にあそこまで距離があるよ」
隆は、麻美子に言った。
麻美子は、御蔵島に行ってみたがっていた。
「俺もまだ上陸したことない島だ、御蔵島は
一度行ってみたいんだ」
「じゃ、また今度、たっぷり時間を作って、
ここまで来ないとね」
麻美子は、隆に言った。
「ああ、俺もあの島は一度行ってみたい」
「あそこに見える島は、なんて島なの?」
翌朝早くに、三宅島の阿古漁港を出港してす
ぐに、麻美子が隆に質問した。
「あれは、御蔵島」
「御蔵島?あれも人とか住んでいるの?」
麻美子は、さらに隆へ質問した。
阿古漁港を出てすぐのところ、新島や式根島
とは逆方向の方角、沖合いに御蔵島は大きく
見えていた。
「どうせなら、上陸してみたいわね」
陽子が、隆に囁いた。
「ね、隆!聞こえた?」
麻美子が隆に言うと、隆は苦笑していた。
「麻美ちゃんは、どこでシイラのお料理を覚
えたんですか?」
「サンフランシスコで食べた時の料理のうろ
覚えかな」
麻美子は、瑠璃子と話していた。
「麻美子のお父さんって、高級輸入食品の貿
易商だものね」
「おいしいな」
シイラは美味しくないと言っていた隆も、中
村さん、アクエリアスのクルーたちも皆、舌
鼓を打っていた。
「シイラも料理の腕次第で味が変わるんだ」
「麻美ちゃんは料理が上手だよな」
「麻美ちゃんと結婚して、お婿さんになる人
は、本当にお得だよな」
アクエリアスのクルーが言った。
「だってよ」
「牧場は、もういいよ」
麻美子は苦笑した。
「船に帰って、夕食にしましょうか」
皆は漁港に戻ると、また今夜もアクエリアス
のメンバーもラッコのキャビンに集まって、
合同の夕食会になった。
麻美子は、釣れたシイラを部位ごとに分けて
白身のフライと野菜炒め、お刺身に盛り付け
て食卓に出した。
「これがシイラなんですか」
「無理。高校生の頃だって、山とか上ったり
下りたりきつかったのに、今はもう無理」
瑠璃子は、隆に答えた。
「三宅は火山と温泉に、寺ぐらいだけど、
ここであんまりゆっくりしていると、お盆
休みって1週間しかないから、他の島を巡
れなくなってしまうけど」
隆に言われて、明日は、また別の島に行こう
って予定になった。
「後、ここの島も牧場があるよ」
「レンタカーを借りないと、この島は広いか
ら観光できないよ」
隆は、麻美子に言った。
「昔、うちの高校の修学旅行で三宅島に来た
ことあるけど、その時は生徒皆が自転車を借
りて、自転車であっちこっち島内を観光して
周ってた」
瑠璃子が、高校時代の思い出を話した。
「レンタル自転車もあるものな。自転車でも
借りて周るか?」
お風呂は、港から徒歩で10分ぐらいのとこ
ろにある民宿で、入浴できた。
「日帰り入浴やっていますか?」
漁港の近くの民宿のお風呂を借りた。
「明日は、三宅島の島内を1日観光で周れる
感じなの?」
「いや、神津島か式根島に移動しようかと」
隆は、明日の予定を麻美子に伝えた。
「せっかく、ここまで来たのに三宅島の島内
観光はしないの?」
行く準備を始めた。
「お風呂行くよ!」
隆たちラッコのメンバーは、船から岸壁に移
ると、前に停泊しているアクエリアスのメン
バーたちにも声をかけていた。
昨日の新島港と違い、漁港が空いているので
二重に停泊する必要もなく、ラッコとアクエ
リアスは、それぞれ別々に舫いロープで直接
岸壁へ停泊していた。
「お風呂に行くってよ」
とアクエリアスの2艇しかいなかった。
「今夜は、静かな夜になりそうだな」
アクエリアスのクルーたちが岸壁で、海を眺
めながら話していた。
「夕食の前に、お風呂でも行きませんか」
隆は、アクエリアスの中村さんに言った。
隆も陽子も、もう既にバスタオルなどを持っ
て、お風呂に出かける準備が終わっていた。
「早いな」
麻美子は、慌てて、バスタオルなどお風呂に
昨日の新島港での大混雑がまるで嘘のように
三宅島の漁港には、ヨットやボートの姿が1
隻も無かった。
東京からのレジャーボートもヨットも、さす
がに三宅島まで来る船はいないようだった。
ラッコとアクエリアスが三宅島に入港した直
後には、50フィートぐらいある大型のモー
ターヨットが漁港の岸壁に停泊していたが、
そのモーターヨットも、今は阿古漁港を出港
してしまっていて、レジャーボートはラッコ
そしたら大物が釣れたんですよ」
麻美子は、中村さんに説明した。
「大物?」
「シイラって大きな魚」
「シイラは、あんまり美味しくないんだよ」
「隆も、そんな話をしていた」
麻美子は、中村さんに返事した。
ラッコとアクエリアスは、新島港を出港して
無事に、三宅島の阿古漁港に入港していた。
「今夜は、ここで泊まるよ」
「今夜は、釣れたてのお魚があるから夕食の
買い出しは行かなくても大丈夫なの」
麻美子は、アクエリアスの中村さんと笑顔で
話していた。
「なんか釣れたの?」
「そうなの、隆が釣りをしようって始めたく
せに、ぜんぜん釣れないものだから早々に諦
めてしまって」
麻美子は、隆のことを苦笑していた。
「それでも瑠璃ちゃんだけ1人で頑張って、
「さあ、冷蔵庫にしまってしまいましょう」
麻美子は、ビニールの袋を持ち上げた。
「私も持っていくよ」
瑠璃子と陽子も、別のビニール袋を持ち上げ
ると、キャビンの中に入った。
「冷蔵庫の中が魚で一杯ね」
麻美子たちは、冷蔵庫の中を覗いて言った。
「これだけデカい魚だったら、今夜はお買い
物に行かなくても、夕食の量は十分ね」
麻美子は、冷蔵庫を閉めながら話した。
「開ける時は、ハサミで切ってしまうから」
麻美子が、陽子に言った。
「できるだけ、きつく縛っていいわよ」
「そうなの?」
「うん。それよりも、生の魚の匂いは、一回
冷蔵庫にこびり付くと、なかなか取れなくな
ってしまうから」
「わかった」
瑠璃子と陽子は、これでもかというぐらいに
ビニール袋の入り口を縛り上げてしまった。
イラを部位ごとに分解していった。
「瑠璃ちゃん、ビニールに入れて縛って」
麻美子は、瑠璃子にお願いした。
「冷蔵庫に入れるけど、魚の匂いが漏るから
ビニールはしっかりきつく縛ってね」
「はい」
瑠璃子と陽子は、シイラの部位をビニールに
詰めると、きつく縛っていた。
「あんまり、きつく縛ってしまうと、開ける
時に開けられなくなちゃうかも」
ると、シイラの身体にメスを入れた。
ブスッ
出刃包丁は、シイラの身体の中に入り、その
まま雪が力を込めると、シイラの身体は真っ
二つに切れた。
「おおっ!」
皆は、雪の力に感嘆する声を上げた。
「すごいな!」
「ここまで切ってもらえれば、後は簡単よ」
麻美子が、雪から出刃包丁を受け取ると、シ
「うわっ、硬い」
麻美子は、必死に出刃包丁をシイラの身体に
入れて切ろうとしていた。
「隆、こっちきて手伝ってよ」
隆は、麻美子に呼ばれて、出刃包丁を受け取
ると、シイラを切ろうとした。
「硬いな」
隆が切るのを諦めかけた。
「そんなに硬いの?」
雪がやって来て、隆が手放した出刃包丁を取
「それじゃ、血抜きをしなきゃね」
「魚の血抜きなんてしたこともないよ」
隆が麻美子に言った。
仕方ないので、麻美子自身が、ギャレーから
出刃包丁を持ってくると、デッキ上でシイラ
の血抜き作業を始めた。
釣った本人の瑠璃子も、麻美子のことを手伝
おうとしていた。
「まず血抜きして、血が抜けたら、部位ごと
に解体して冷蔵庫に入れておきましょう」
「美味しいの?」
「いや、それほどでもない」
隆が呟くのと、ほとんど同時に、
「あっさりしていて美味しかったよ」
と、麻美子が瑠璃子に答えた。
「それは、たぶんシェフの料理の腕が良かっ
たんだな、きっと」
「このお魚どうするの?」
「もうお亡くなりになられているし、リリー
スも出来ないから美味しく頂きましょう」