ヨット教室物語・第261話

「寝坊してしまったよ」

隆は、陽子と一緒にアフトキャビンを出ると

デッキ上に出た。デッキには、雪と瑠璃子も

起きていた。

ラットは、香代が握っていた。

「おはよう、ウォッチの間ずっと香代ちゃん

にヘルムを取ってもらってしまった」

麻美子が、起きたばかりの隆に報告した。

「麻美子は、ヘルムを取らなかったの?結局

サボってしまったんだ」

ジュニアヨット教室物語・第29話

「まあ、また予算が少し割り当ててもらえた

時に、もう一隻購入すれば良いさ」

「そうですね」

艇庫の中のヨットを、2人は眺めていた。

「明日の開催か」

「ええ、うちの息子も参加します」

片桐一郎は、土居先生に言った。

「そうか!君の息子さんも参加するのか」

「私も、親戚の甥には声を掛けたんだが」

土居先生が言った。

ジュニアヨット教室物語・第28話

むしろ、土居先生が是非開講しようと言って

くれたからこそ、開講できたといっても良い

くらいだった。

「本当は、もう一隻だけミニホッパーが欲し

いところなんですけどね」

「ミニホッパーは一隻だけなの?」

「ええ、なのでミニホッパー同士で競い合う

ってことができないんです」

「それは、寂しいね」

「もう予算がギリギリで・・」

ジュニアヨット教室物語・第27話

ト界のすごい人だった。

「大分、ヨット教室らしくなって来たんじゃ

ないの」

「ええ、おかげさまで」

片桐一郎は、土居先生に答えた。

片桐一郎が、今回ジュニアヨット教室を開講

したいと理事会に提案した時、一番ジュニア

ヨット教室の開講を応援してくれたのが、土

居先生だった。

「いよいよ始まるんだな」

ジュニアヨット教室物語・第26話

「あ、土居先生!」

片桐一郎は、土居先生に挨拶を返した。

土居先生は、横浜マリーナに20フィートの

小さなセーリングクルーザーを保管している

ヨットオーナーであった。

そして、ヨット業界では、その名を知らない

人はいないぐらいのヨットの権威だった。

若干20フィートの小さなセーリングクルー

ザーで日本全国を周ったり、太平洋をシング

ルハンドで横断してしまったりしているヨッ

ジュニアヨット教室物語・第25話

紺色の石鹸箱の形をしたOPに比べて、YA

MAHA製のミニホッパーは一隻当たりの艇

体価格が高いのだ。

「まあ、明日からのヨット教室のスタートは

まずこの数でのスタートで仕方ないか」

生徒の数も、一応30名ぐらいは参加の応募

があった。

「片桐くん」

片桐一郎が、後ろを振り返ると、土居さんが

立っていた。

ジュニアヨット教室物語・第24話

そこにOPという四角い石鹸箱のようなヨッ

トを20隻、ミニホッパーという三角に先が

尖ったヨットを一隻用意することができた。

「本当は、もう一隻分、ミニホッパーを用意

したかったんだよな」

片桐一郎は、ミニホッパーの白い船体が一隻

しか艇庫に置かれていないのを眺めながら皆

と話していた。

「一隻では、競争できませんものね」

「そうなんだよ」

ジュニアヨット教室物語・第23話

片桐一郎は、OPヨットの船体が20個重な

って置かれている姿を眺めながら呟いた。

「いよいよ、ヨット教室始まりますね」

「ええ、ようやくです」

そこには、片桐一郎と同じように、ジュニア

ヨット教室の開催に尽力してきたボランティ

アの先生たちが集まっていた。

横浜のマリーナ奥の敷地に、余っていた小さ

なプレハブ小屋をジュニアヨット教室の場所

として使わせてもらえることになった。

ジュニアヨット教室物語・第22話

「すげぇ、予備校のためにヨット教室に通う

んだ。さすが優等生だな」

洋ちゃんは、お母さんに返事していた。

「ヨット教室っていつからなの?」

「4月からよ」

お母さんは、洋ちゃんに答えた。

4月

「うん、これで大分ヨット教室らしくなって

来たんじゃないのかな」

片桐一郎は、ヨットの仲間達と話していた。

ジュニアヨット教室物語・第21話

「そうなんだ。健ちゃんって優等生だよね」

帰り道、洋ちゃんとお母さんは話していた。

「でね、中学に入ったら、医大受験用の予備

校に通いたいんですって」

「そうなんだ」

「それで、お母さんに今度できるジュニアヨ

ット教室へ1年間ちゃんと通ったら、医大受

験用の予備校に通わせてあげるって約束して

もらえたんですって」

「すげぇな」

ジュニアヨット教室物語・第20話

「そうよ。健ちゃんと一緒なんだから、周り

に全く誰もお友達がいないでヨットを始める

生徒さんよりも、あなたの方が始めやすいと

思うわよ」

お母さんは、洋ちゃんに答えた。

「確かにそうだね」

帰り道は、お母さんと一緒に、絵画教室のす

ぐ近くにある自宅まで帰る洋ちゃんだった。

「健ちゃんなんだけど、将来は医大に進学し

たいんですって」

ジュニアヨット教室物語・第19話

洋ちゃんは、お母さんに答えると、来春から

始まる横浜マリーナのジュニアヨット教室に

健ちゃんと一緒に通うこととなった。

「ヨットなんて、ぜんぜん乗ったことないん

だけど、乗れるかな」

「大丈夫よ。皆、どの生徒も初めてヨットに

乗る子たちばかりだから」

お母さんは、洋ちゃんに言った。

「健ちゃんも一緒なんだものね」

「そうよ、2人で乗っていらしゃい」

ジュニアヨット教室物語・第18話

洋ちゃんは、お母さんの横に腰掛けると、健

ちゃんのお母さんが作ったおやつを頂いた。

「美味しいね」

「ね、健ちゃんも来年の4月からヨットを習

いに行くんですってよ」

「健ちゃんも行くんだ」

「だから、あなたも一緒に行かないかって」

お母さんは、洋ちゃんに聞いた。

「健ちゃんが1人で行くの不安らしいのよ」

「別に良いけど」

ジュニアヨット教室物語・第17話

絵画教室のレッスンが終わると、美味しいお

やつがあるのと誘われて、お父さんのアトリ

エから健ちゃんの家の自宅のリビングに移動

した洋ちゃんだった。

リビングには、洋ちゃんのお母さんも遊びに

来ていて、健ちゃんのお母さんとお茶をしな

がら、お喋りをしていた。

「レッスン終わったの?」

「うん」

洋ちゃんは、お母さんに返事した。

ジュニアヨット教室物語・第16話

「洋ちゃんもやらない?」

来年、中学1年生になる洋ちゃんは、近所の

絵画教室の先生の奥さんに誘われた。

洋ちゃんは、小さい頃から絵を描くのが好き

で、幼馴染みの健ちゃんの画家のお父さんが

自宅でやっている絵画教室に通っていた。

お父さんが自分のアトリエでやっている絵画

教室のレッスンを終えて、帰ろうとしていた

時に、先生の奥さん、健ちゃんのお母さんに

誘われたのだった。

ジュニアヨット教室物語・第15話

来春オープンすることが決まって、片桐一郎

たちは、これから忙しくなりそうだった。

「まずは、子供達の乗るヨットの手配を」

片桐一郎は、数名の理事達とヨットを買うた

めの資金を自腹で負担していた。

「市報にいつも掲載を出している大人のヨッ

ト教室公募の隅にでも、ジュニアヨット教室

の公募も掲載させてもらいましょう」

「そうですね、それが良いです」

片桐達は、打ち合わせをしていた。

ジュニアヨット教室物語・第14話

その結果、どうにか片桐一郎の熱意が、理事

たちに伝わり、来春から横浜マリーナでは、

試験的にジュニアヨット教室の開講が決まっ

たのであった。

「ジュニアヨット教室に参加する子供達を集

めないとならないですね」

「そうですね。とりあえず、うちの息子には

ジュニアヨット教室のことを伝えています」

「私も、自分の子供や周りの子供達の両親に

も声をかけてみますよ」

ジュニアヨット教室物語・第13話

「だったら、私たちジュニアヨット教室の開

講に前向きな理事たちだけで、有志で集めた

資金がいくらかありますので、それでヨット

を購入させてください」

片桐一郎は、理事長に訴えた。

「そのヨットを置かせていただく艇庫を、マ

リーナ内に用意してもらいたいのと、毎日曜

日に子供達がマリーナの敷地内で活動するこ

とだけお許し願いたい」

片桐一郎は、必死でお願いした。

ジュニアヨット教室物語・第12話

片桐一郎の意見に賛同してくれる理事も何人

かはいたが、大多数はそんなもの必要ないだ

ろう、クルージングヨット教室を毎年開講し

ているのだから、ヨットをやりたい人は大人

になってから始めれば良いだろうとというも

のが多かった。

「その予算はどうするんだ」

反対する理事の多くは、子供達が乗るヨット

を購入する資金が横浜マリーナには無いとい

うのが理由だった。

ジュニアヨット教室物語・第11話

「今、横浜マリーナにあるクルージングヨッ

ト教室は、生徒の対象が18歳以上の大人た

ちばかりじゃないですか」

片桐一郎の熱弁は続いた。

「そうではなくて、もっと下の年齢、子供達

が楽しんで乗れるようなヨット教室を始めた

いのです!これからのヨット人口の普及、活

性化のためにも必要だと思うんです」

片桐一郎の意見に賛同してくれる理事も何人

かはいたが、大多数は反対が多かった。

ジュニアヨット教室物語・第10話

「だから、それは対象者が大人たちだけのヨ

ット教室ですよね」

片桐一郎は、理事会での討論に思わず熱が入

ってしまっていた。

「そうじゃなくて、少年少女たちのためのヨ

ット教室を始めたいのです!」

片桐一郎の理事会での熱弁は続いていた。

「今、横浜マリーナにあるクルージングヨッ

ト教室は、大人のためじゃないですか」

片桐一郎は、理事会で発言していた。

ジュニアヨット教室物語・第9話

片桐一郎には、今年6年生になる息子が1人

いた。

「俺だけじゃなく、息子がヨットを楽しめる

環境も作ってやりたいな」

いつも自分だけが、日曜日になるとヨットへ

乗りに、横浜マリーナに来てしまうのではな

く、息子にもヨットに親しんで楽しんでもら

えるようになったら良いのにと考えていた。

そのために、わざわざやりたくもない横浜マ

リーナの理事にも立候補したのだった。

ジュニアヨット教室物語・第8話

片桐一郎は、自分のヨットの傷んできている

箇所をあっちこっち眺めながら呟いた。

「今度、セイルも新調しなきゃならないな」

ブームに付いている古いセイルを確認しなが

ら独り言を呟いていた。

「いや、その前に、今は子供たちのOPを何

隻か購入しなければならないな」

OPを買うための資金源が、片桐一郎の頭を

悩ませていた。

「理事会で、予算を多少でも頂けたらな」

ジュニアヨット教室物語・第7話

共同所有といっても、8人で同額の資金を均

等に出し合って購入したというわけではなく

1/3ぐらいを片桐一郎が負担して、残りの

分を7人で分担して購入したヨットだった。

資金でいくと、片桐一郎が一番多く負担して

いるので、8人のオーナーの中では、片桐一

郎が筆頭オーナーということになる。

筆頭オーナーが片桐一郎で、8人での共同所

有なので、八郎丸という船名だった。

「この船も、だいぶ古くなってきたな」

ジュニアヨット教室物語・第6話

ラッコやアクエリアスは、今井隆や中村さん

が単独で所有しているヨットだった。

片桐一郎のヨットは、8人共同で所有してい

るヨットだった。

共同所有といっても、8人で同額の資金を均

等に出し合って購入したというわけではなく

1/3ぐらいを片桐一郎が負担して、残りの

分を7人で分担して購入したヨットだった。

1人でヨットを所有するのは、コストが大変

なので共同所有するヨットは多かった。

ジュニアヨット教室物語・第5話

「ありがとう!」

「いいえ、お気をつけて」

テンダーが、片桐一郎のヨットに着艇すると

片桐一郎はテンダーを操船してきてくれたマ

リーナ職員にお礼を言ってから、自分のヨッ

トに乗り移った。

片桐一郎のヨットは、YAMAHA製の30

フィートのヨットだ。もう進水してからだ

いぶ経つヨットで、マリーナでも結構古い

方のヨットだった。

ジュニアヨット教室物語・第4話

どちらかというと、今井隆のラッコよりも、

中村さんのアクエリアスと同じような保管ス

タイルだった。

「あ、こんにちは」

「これから出港ですか?」

「いえ、少し船内でのんびりするだけ」

片桐一郎は、3つ隣の場所に係留している顔

見知りのアクエリアスの中村さんと一緒のテ

ンダーになって、2言3言、言葉を交わして

会釈をしていた。

ジュニアヨット教室物語・第3話

今井隆のラッコは、隆が出航したい時には、

マリーナの職員に頼んでクレーンでヨットを

海上に降ろしてもらってから、海に出航して

いる。

片桐一郎のヨットは、マリーナ沖合いの海上

に係留されているため、マリーナの職員が操

船しているテンダー、小型のボートに乗って

そこまで連れて行ってもらってから、ヨット

を出航させている。

「送っていただきありがとうございます」

ジュニアヨット教室物語・第2話

といっても、今井隆が33フィートのナウテ

ィキャット、ラッコを保管している敷地内に

ヨットを保管しているわけではなかった。

「お願いします」

片桐一郎は、理事会での熱の入った討論で熱

くなった自分の頭を冷やすため、横浜マリー

ナのテンダーボートサービスに乗って、沖に

停められている自分のヨットへ向かった。

片桐一郎のヨットは、アクエリアスと同じよ

うに、マリーナ沖に係留されていた。

ジュニアヨット教室物語・第1話

「だから、それは対象者が大人たちだけのヨ

ット教室ですよね」

片桐一郎は、理事会での討論に思わず熱が入

ってしまっていた。

「そうじゃなくて、少年少女たちのものを始

めたいのです!」

片桐一郎は、ヨットマンだった。

今井隆がヨットを保管している横浜マリーナ

に同じくヨットを保管していた。

そして、マリーナの理事の1人でもあった。