瑠璃子は、隆に答えた。
「私も、ワードぐらいなら会社で使っている
けど、航海計器の使い方なんて、ぜんぜんわ
からないけどな」
雪が、隆に言った。
「俺も、ぜんぜんわからなかったよ」
「私、エクセルはコードとか使って事務シス
テムを開発しているから」
どうやら、瑠璃子は、機械関係の操作が得意
のようだった。
瑠璃子は、隆に答えた。
「私も、ワードぐらいなら会社で使っている
けど、航海計器の使い方なんて、ぜんぜんわ
からないけどな」
雪が、隆に言った。
「俺も、ぜんぜんわからなかったよ」
「私、エクセルはコードとか使って事務シス
テムを開発しているから」
どうやら、瑠璃子は、機械関係の操作が得意
のようだった。
隆は、瑠璃子に伝えると、瑠璃子は、しばら
く航海計器のスイッチ類をいじっていた。
すると、パイロットハウス前面にあるモニタ
ーに東京湾の地図が映し出された。
地図には、横浜港から伊豆大島までの航路が
線で引かれていた。
「今日、初めて、この航海計器を触ったんだ
ろう?よく操作方法がわかったな」
「会社で、エクセルとかワードのソフト関係
をずっと触っているもの」
「このナビ、触ったことあるの?」
「全然ないけど」
瑠璃子は、隆に答えた。
「さっき、相鉄ローゼンへ出かける前に、ち
ょっとだけ触った」
瑠璃子は、香代と場所を代わって、航海計器
のスイッチ類を触っていた。
「登録は伊豆大島までで良いのよね?
「ああ、大島の波浮港までの針路が設定でき
るなら、設定しておいて」
「で、大島までの針路は、しっかりインプッ
トできたの?」
「ぜんぜん!わからない」
香代が、隆に返事した。
「俺も、この航海計器は触るの初めてだから
後でマニュアル見ながら設定しよう」
「私、わかったよ」
瑠璃子が、隆に言った。
「マジかよ、登録できたの?」
「うん」
キャビンの中では、雪と香代が航海計器をい
じっていた。
「どうしたの?」
「ううん、別にどうもしないけど。大島まで
向かうのに、ナビゲーションに針路を登録し
ておこうかなと思ったの」
瑠璃子が、隆に言った。
「それで、航海計器のスイッチをあっちこっ
ち触っていたんだけど」
香代が、隆に答えた。
「こんばんは!」
4人は、ポンツーンの手前のところに泊まっ
ていたアクエリアスの人たちに挨拶をしてか
ら、その奥に泊まっているラッコの船体に乗
り移って乗船した。
「ああー、疲れた」
隆は、残業で疲れた肩を解しながら呟いた。
「隆、荷物積むの手伝って」
隆は、麻美子から持っていた重たい荷物を受
け取ると、ラッコのキャビンの中に入れた。
夜遅くまでお仕事頑張ってきて疲れたみたい
にカッコつけていた隆だったが、残業中にブ
ーブー文句を言いながら仕事していたことは
もうしっかり麻美子から皆に伝わってしまっ
ていたようだった。
「もう全部伝わっているんだ」
「そうよ」
麻美子は、隆の頭を小突いた。
「アクエリアスの人たちには、ちゃんと黙っ
ておいてあげるわね」
「渋々、残業していたのよね」
陽子は、隆に返事した。
「えっ」
「もう続きは来週でいいよって言ってるのを
来週じゃ間に合わなくなるでしょうって、麻
美ちゃんに言われて渋々、会社に残ってお仕
事して来たんだよね」
「なんで、知っているの?」
「もうバレバレなんだけど」
陽子は、苦笑していた。
「おはよう!」
隆が、陽子に声をかけた。
「っていうか、こんばんはでしょう」
麻美子が、隆に言った。
隆と麻美子が、会社での残業を終えて、よう
やく横浜マリーナにやって来た。
ちょうど、近くのコンビニまで夜食を買いに
行って来た陽子と瑠璃子とすれ違った。
「仕事が、どうしても今週中に終えなければ
ならなくて、今まで残業してきたんだ」
「あれ、隆さんはいないんですか?」
「残業で、こっちに来るの遅くなるって」
陽子は、遅れてきたアクエリアスのクルーた
ちにも、隆たちの残業のことを説明した。
「先に軽く夕食を食べて待っていよう」
瑠璃子が、ラッコのクルーたちに言って、ラ
ッコのキャビンで簡単な夕食となった。
「隆さんの分も取っておこう」
「そうね、お腹空かして来そうだし」
瑠璃子が言った。
海上まで乗ってきた小さなボートは、アクエ
リアスの後ろにぶら下げたまま、アクエリア
スをマリーナのポンツーンまで移動させた。
ポンツーンに到着すると、ポンツーンには遅
れて到着したアクエリアスのクルーたちが来
ていた。船の上の香代と陽子が、彼らに向け
て舫いロープを投げると受け取ってくれた。
舫いロープを受け取った彼らは、アクエリア
スの船体をポンツーンに結んでくれた。
「船が固定されました」
そのため、ポンツーンに結ばれている小さな
ボートを自分で操船して、自分のヨットまで
取りにいかなければならなかった。
香代と陽子は、中村さんの操船する小さなボ
ートに乗って、海上に浮かぶアクエリアスま
で行くと、アクエリアスに乗り移った。
小さなボートは、アクエリアスの船体後部に
ロープでしっかり結ばれた。
「このまま、引っ張っていく」
中村さんは、自艇のエンジンをかけた。
小さなエンジンの付いたボートで、海上のヨ
ット、ボートまで取りに行くと、ヨットを出
航準備のため、マリーナのポンツーンまで運
んで来るのだった。
昼間だと、マリーナの職員が出勤しているの
で、海上に浮かんでいる自分のヨットまで、
マリーナの職員が小さなボートを操船して連
れていってくれる。
夜間は、マリーナ職員は、もう帰宅してしま
っているため誰もいなかった。
ラッコの船体は、普段は船台に載せられて、
横浜マリーナ敷地内の陸上にて保管されて
いる。しかし、アクエリアスの船体は、マ
リーナの沖合にある入り江にロープで結ば
れて、海上に浮かんだ状態のままで保管さ
れていた。
海上に浮かんだ状態で保管されているヨット
やボートは、出航する時には、マリーナの準
備してくれている小さなボートに乗って、自
分のヨット、ボートを取りに行く。
中村さんも、東京での仕事を終えて、たった
今、横浜マリーナに来たばかりのようだ。
中村さん以外には、まだアクエリアスのクル
ーたちは来ていないようだった。
「船を、ここに持って来たいんだけど、一緒
にちょっと手伝ってもらえないか」
中村さんに言われて、ラッコのクルーたちの
うち香代と陽子が中村さんと一緒にアクエリ
アスを取りに行くこととなった。
「あのボートで行くんですね」
「金曜日だものね」
「皆、休み前で仕事忙しいよね」
3人は、キャビンの中で話していた。
「おはよう」
今回、一緒にクルージングすることになって
いるアクエリアスのオーナーである中村さん
も、ラッコのキャビンに入ってきた。
「おはようございます」
「おはよう」
中村さんも仕事を終えての到着だった。
瑠璃子は、電話を切った陽子から隆と麻美子
の残業の話を聞いて、返事した。
ヨットは、昼間にマリーナの職員が海上に下
ろしておいてくれたみたいで、瑠璃子や陽子
が仕事を終えてマリーナにきたときには、既
にポンツーンへ舫いロープで結ばれていた。
「雪さんも、少しだけ残業で、こっちへの到
着が遅くなるんだって」
香代が、ラッコのキャビンに入ってきて、皆
に報告した。
麻美子は、陽子からの電話を切った。
「ほら、陽子ちゃんも頑張ってねだって。あ
ともう少しなんだから頑張ろう」
麻美子は、隆のことをなだめながら、自分も
作業の手を進めていた。
「麻美ちゃんたち、残業で少し遅くなるらし
いわよ」
陽子は、瑠璃子に伝えた。
「忙しいんだ」
「そうみたいだね」
「私たち、今どうしても今週中にやらなけれ
ばならない仕事があって」
麻美子は、陽子と電話で話していた。
「残業しているのよ」
「そうなんだ、大変だね」
「もう少し、そっちに行けるの遅くなる」
「わかった、頑張ってね」
陽子は、麻美子に返事した。
「こっちは、皆でできる準備はやっておくか
ら、心配しないでお仕事頑張ってね」
「まったく、これじゃ、どっちが社長なんだ
かわからないわね」
麻美子は、渋々作業している隆のことを眺め
ながら、自分でも作業を進めていた。
それから、2人は真っ暗になっている社長室
の中で黙々と作業を進めていた。
リンリーン・・
「はい、もしもし、あら、陽子ちゃん。もう
マリーナに着いたんだ」
電話の相手は、陽子のようだった。
「こんなに机の上にまで貯まっているんだけ
ど、もうこれって週明けで良くない?」
隆は、麻美子に言った。
「さっきから文句ばかりうるさいな!私も手
伝ってあげるから早く終わらせましょう!」
いつまでも文句ばかり言っている隆に、麻美
子の怒鳴り声が落ちた。
「ほら、手を動かさないと終わらないよ」
麻美子は、自分でも手を動かしながら隆に告
げた。隆も渋々目の前の作業をやり始めた。
「もうヨットは、しっかりポンツーンに泊め
てくれたってさ」
麻美子は、残業で機嫌の悪い隆をなだめた。
「いくら船が海上に下ろしてあっても、それ
に乗る人が行かなければ、大島に出港できな
いんだけど」
「だから、早く仕事を終わらせましょう」
麻美子は、隆に優しく伝えていたのに、隆の
機嫌はなかなか直らなかった。
「続きは来週明けで良くない?」
「今日は金曜日なんだけど、明日から三連休
なんだけど」
隆は、社長秘書の麻美子にブーブー文句を言
っていた。
「ね、今夜から大島に向けて、横浜マリーナ
を出港する予定なんだぞ」
「だから、私が昼間にマリーナの人に電話し
て、夜すぐに出航できるようにとヨットを下
ろしてもらってあるから」
麻美子が、隆に言った。
「ラッコは、まだ今年の初めに進水したばか
りだからね」
「そうか」
瑠璃子が答えた。
「それじゃ、隆さんもラッコで大島に行くの
は初めてなんだ」
「そうだね」
隆は、瑠璃子に答えた。
「だから、俺も楽しみだ」
「そうだよね」
皆は、初めてのクルージングに目をキラキラ
させて、隆の話を聞いていた。
「隆さんは、大島に行ったことあるの?」
陽子が、隆に聞いた。
「あるよ。もう何度も行っているよ」
「ヨットで?」
「もちろん」
隆が、陽子に頷いた。
「ラッコで行ったの?」
「ラッコでは行っていないよ」
隆は、自分の船のクルーたち皆に説明した。
「夜って、徹夜でずっとヨットを走らせてい
る感じになるの?」
「それじゃ、疲れてしまうからね。ウォッチ
といって、何人かずつのグループに別れて、
順番に交代でヨットを操船して、操船してい
ない方のグループは、キャビンの中で寝泊ま
りする感じかな」
「船の中で寝泊まりするんだ」
瑠璃子が言った。
「大島か。大島まで行って、また戻ってくる
のも良いですね」
「大島まで行ってみたいな」
雪も、中村さんの計画に賛同して、来週はラ
ッコとアクエリアスの2艇で伊豆大島までク
ルージングしてくることに決まった。
「大島だと、千葉辺りまで行くのと違うから
金曜、前日の夜から夜通しでセイリングして
次の日の朝か昼ごろに、大島の波浮港に入港
することになるんだ」
その日のお昼は、中村さんたちアクエリアス
のクルーたちが、ラッコのメインサロンにや
って来て、皆で賑やかなお昼となった。
「隆くんのところは、来週の三連休はどこか
に行くの?」
中村さんが、隆に質問した。
「千葉辺りまで行って来ようと思います」
「うちは大島に行こうと思ってる」
中村さんが、アクエリアスの三連休の予定を
隆に伝えた。
イルカのプールに横付けし終わると、皆はキ
ャビンの中に入って、お昼ごはんの料理を作
り始めていた。
お昼ごはんを作っていると、先日のクラブレ
ースの時、一緒になった中村さんのアクエリ
アスも入港して来た。
隆と陽子がキャビンから飛び出して、アクエ
リアスの舫いロープを取ってあげて、イルカ
のプール岸壁に舫いを結んであげた。
「お疲れ様」
「ここからだと、保田の方が館山より近いか
な。今からどちらに行くか決めないで、当日
の風とか天候次第で、どちらに行くか決めた
ら良いんじゃないかな」
隆は、皆に提案した。
「そろそろ、お昼だから、まずは貯木場に入
港して、お昼ごはんにしましょう」
麻美子が言って、ラッコは貯木場のイルカの
プールに横付けした。
「左舷側で横付けしよう!」