ヨット教室物語・第261話

「大島リス村」

三原山のあとにレンタカーでやって来たのは

大島リス村だった。

「リスがいるの?」

香代は、隣の助手席に座っている麻美子に聞

いた。

「うん、リスがいっぱいいるところ」

麻美子は、香代に答えた。

「そういえば、リス村も良いんだけど、温泉

とかは行かないの?」

ヨット教室物語・第260話

隆が後ろを振り向くと、麻美子と香代が観光

用の馬の背中に乗って、歩いていた。

「あ、いいな」

隆は、馬に跨っている麻美子と香代を羨まし

そうに眺めていた。

「隆、帰りは、ここで代わろうか」

麓の溶岩の隙間にできた道を突き当たりまで

馬に乗って行くと、麻美子がそこで馬から降

りて、隆と交代しようと言ってくれた。

帰りは、駐車場まで隆と香代が馬に乗った。

ヨット教室物語・第259話

「はい、その先の駐車場に車を停めて」

麻美子に言われて、隆は車を麓にある駐車場

に停車した。

皆は、車を降りると、麓のところにできてい

た通路を歩いていた。

「すごい溶岩ね」

雪は、道の脇に落ちている溶岩を拾い上げて

眺めていた。

「隆、ヤッホー!」

皆が歩いている後方で、麻美子の声がした。

ヨット教室物語・第258話

「うん」

麻美子は、隆に頷いた。

「なんか真っ黒な岩ばかりね」

車が三原山の麓辺りまでたどり着くと、周り

の景色が黒い溶岩だらけになった。

「噴火の後なんだ」

「まだ三原山は噴火しているじゃん」

隆が、車窓から見える三原山の頂上を指差す

と、山の頂上からは、未だに煙がモクモクと

上がっていた。

ヨット教室物語・第257話

真ん中には、香代と瑠璃子が座って、最後部

に雪と陽子が座った。

「そこを右ね、その先を左折」

隆は、これからどのコースでどう島を周るの

か知らなかったが、ぜんぶ行き先を麻美子が

把握、指示してくれるので、なにも心配せず

に、ただ麻美子に言われるまま走っていた。

「最初の目的地って三原山なの」

車は、海沿いからどんどん島の中央、内陸に

向かってずっと登っていた。

ヨット教室物語・第256話

港からアクエリアスが見えなくなるまで見送

ってから、レンタカーに乗車した。

「私、道をナビゲーションするから助手席に

座るね」

隆が運転席に座ると、反対側の席から麻美子

が助手席に乗り込んだ。

「今日は、ナビぜんぶ麻美子にお任せか」

「うん、任せて」

車は、サザエさんたちがよく乗車している日

産セレナで、6シーターだった。

ヨット教室物語・第255話

「確かに、その方が横浜に近づくから、明日

の帰りは楽ですね」

隆は、中村さんに返事した。

「それじゃ、うちらはアクエリアスが出航す

るの見送ってから、島内観光に出ようか」

隆たちは、岡田港への移動で出航するアクエ

リアスを見送ってから、レンタカーで島内観

光に出かけることになった。

岸壁から出航するアクエリアスの舫いロープ

を外して、出航を見送った。

ヨット教室物語・第254話

「レンタカーを借りているので、皆で島内観

光してこようと思っています」

隆は、中村さんに答えた。

「それじゃ、今日は1日じゅう、ラッコの船

は出さないんだ」

「ええ」

「うちらは、明日の帰りが楽になるから、今

日のうちに波浮を出て、大島北端の岡田港に

移動しようと思ってるんだけど」

中村さんは、隆に言った。

ヨット教室物語・第253話

朝、起きると、アクエリアスのクルーたちも

皆、ラッコのメインサロンにやって来て一緒

に朝食をしていた。

アクエリアスのクルーたちが、ラッコのメイ

ンサロンで朝食を食べていたので、瑠璃子や

陽子たちラッコのクルーたちは、パイロット

ハウス一段下がった所のダイニングで朝食を

食べていた。

「隆くんたちは、今日の予定はどうするつも

りなの?」

ヨット教室物語・第252話

「レンタカーは、朝8時に港の前まで持って

来てくれることになっているよ」

隆は、麻美子に伝えた。

「お昼は懐石のお料理予約してるから、朝は

簡単でいいよね」

麻美子は、昨夜の残りもので簡単に朝食を作

ってしまっていた。

「一晩経ったのくさやも、うまいよ」

中村さんは、ラッコのメインサロンで朝食を

食べながら、話していた。

ヨット教室物語・第251話

「確かに、まだ幼い子が出来たばかりの若夫

婦みたいかもしれないわね」

麻美子は、自分たちが3人で川の字に寝てい

るのを眺めて、呟いた。

「麻美子と夫婦って・・」

「なに吹き出しているのよ」

麻美子は、思わず苦笑しながら吹き出してい

る隆の顔をチラッと見、睨んだ。

「明日は、ヨットで移動するの?」

「しないよ。レンタカーで島内を移動する」

ヨット教室物語・第250話

麻美子は、一番奥の壁側で横になった。

続いて、中央に香代が横になって、隆は、一

番手前のところで横になった。

「なんだか親子みたいだな」

麻美子は、ラッコのメンバーの中では雪に次

いで二番目に背が高かった。

隆は、それほど背が高いわけではないが、ラ

ッコのメンバーの中では唯一の男性で、三番

目に背も高かった。香代は、ラッコのメンバ

ーの中では一番背も低く、チビだった。

ヨット教室物語・第249話

「隆たちは、私と一緒に一番後ろね」

麻美子は、隆を船の最後部、アフトキャビン

に連れていった。

「ここに3人で寝るのか」

アフトキャビンの広めのダブルバースには、

もうしっかり3人分のタオルケットが準備さ

れていた。

「香代ちゃん小さいもん。3人で並んで寝れ

るでしょう」

麻美子が答えた。

ヨット教室物語・第248話

ラッコのメンバーの中で一番背の高い雪が、

船の最先端にあるフォアキャビンのVバース

で寝ていた。

その手前のギャレー前にあるダイニングスペ

ースのコの字型ソファはダブルバースに変換

されていて、瑠璃子が奥側に眠っていた。

「陽子ちゃん、ここで瑠璃子ちゃんと一緒に

寝るのでもいいかな?」

陽子は、麻美子に言われ、頷いて瑠璃子の横

手前側の寝床についた。

ヨット教室物語・第247話

3人は、アクエリアスの人たちとは別れ、ア

クエリアスのメンバーたちはアクエリアスの

キャビンの中に、隆たちはラッコのキャビン

の中へと入った。

「お帰り」

3人がキャビンの中に入ると、麻美子が声を

かけてくれた。

隆は、キャビンの中で、まだお喋りの続き、

宴会でもしているのかと思ったら、皆は既に

ベッドの中に入っていた。

ヨット教室物語・第246話

それから、アクエリアスのメンバーたちと共

に、来た時の山道を下って、魚港のヨットま

で戻った。

バス停の前まで戻ると、船の前に敷いてあっ

たブルーシートはもう片付けられてしまって

いて、ラッコのメンバーたちは皆、キャビン

の中に入ってしまっているようだった。

「もうお開きになっている」

「蚊も出てくるだろうしね」

ラッコのキャビンの電気が点いていた。

ヨット教室物語・第245話

香代が答えた。

「よく知っているじゃない」

隆が、香代に言った。

「あるよ。何年か前に三原山って大島の火山

が噴火したことあっただろう」

「ああー、三原山の温泉ね」

陽子は、隆に頷いた。

「明日は、今お風呂に来ていない皆も、お風

呂へ入れるね」

「ああ」

ヨット教室物語・第244話

「そんなにガラガラだったんだ」

「うん」

「それは良かったな。男湯は、結構いっぱい

人が入っていたよ」

隆が答えた。

「明日、レンタカーを予約してあるから、島

の中央辺りまで行って本当の温泉に入ろう」

「温泉なんてあるんだ」

陽子が、隆に聞いた。

「三原山でしょう」

ヨット教室物語・第243話

「良いお湯だった」

他のお客さんはいたが、知り合いは誰もいな

かった女湯の中でお風呂を楽しんで来た陽子

は、香代と一緒にエントランスロビーの待合

室で、風呂上がりの牛乳を飲んでいた隆のと

ころに戻って来た。

「温泉じゃなくて沸かしだったろう」

「うん。でも広くて気持ちいいお風呂だった

よ。女湯は、数人しか入っていなかったし」

陽子は、隆に返事した。

ヨット教室物語・第242話

隆は、男性クルーの多いアクエリアスのメン

バーたちと一緒の入浴だったが、陽子は女湯

に香代と2人だけの入浴だった。

「アクエリアスは、女性クルーはいなかった

んですか?」

「生徒さんで1人いるんだけど、今回のクル

ージングには参加しなかった」

中村さんは、隆に答えた。

「彼女は、普段のセーリングの日でも、全然

来ないもの」

ヨット教室物語・第241話

かんぽの宿の受付で、入浴の手続きを済ます

と、ロビー奥にある階段を下って、お風呂場

に向かった。

「三原山って温泉出ているよね」

「ここって大島の温泉なの?」

「ここは、温泉ではなく沸かしだけど、広々

としていて気持ち良いお風呂だよ」

隆は、男湯の方に入りながら答えた。

陽子は、香代と一緒に奥の女湯と書かれた扉

の方へ入った。

ヨット教室物語・第240話

隆と香代は、陽子に追いつき、アクエリアス

のメンバーと共に、山道を少し上がっていく

と、すぐに開けた舗装した道路に出た。

その舗装された道路の先に郵便局の「かんぽ

の宿」は在った。

「なんだ。すぐ近くなんじゃないの」

陽子が言った。

「近くだよ、もっと遠いと思ってたのか」

「このぐらいの距離だったら、ほかの皆も

一緒に来れば良かったのにね」

ヨット教室物語・第329話

「わかった」

隆が山道の入り口で待っていると、麻美子は

香代と一緒にキャビンへ入ると、香代の入浴

へ行く準備をしてきた。

「それじゃ、お願いね」

麻美子は、香代を隆に渡した。

「よし、行こう」

隆は、香代と山道を登り始めた。

先へ行ってしまったアクエリアスと陽子たち

を2人は追いかけて行った。

ヨット教室物語・第328話

隆は、後ろを振り向いて、麻美子たち待機組

に声をかけた。

「香代ちゃん、お風呂入りたければ、隆と一

緒にお風呂へ行って来ても良いのよ」

麻美子は、香代に言った。

香代は首を傾げて、麻美子の腕を掴み、どう

しようか悩んでいた。

「隆、待って!」

麻美子が、隆を呼んだ。

「香代ちゃんが行きたいって」

ヨット教室物語・第327話

それを見て、一番若い香代も一緒にお風呂へ

行こうかなと一瞬立ち上がりかけた。

しかし、麻美子がぜんぜん立ち上がる気配が

ないので、香代もまた麻美子の横、ブルーシ

ート上に座り直してしまった。

隆と陽子が、バスタオルなど入浴セットを持

って、ラッコから出て来ると、アクエリアス

のメンバーたちと一緒にバス停の奥の山道か

らお風呂に向かった。

「みんなは、お風呂行かないで就寝かな」

ヨット教室物語・第326話

「確かに、昨夜もそんなに寝れてないから、

今夜はしっかり早く寝たいかもね」

ウォッチで一番先に寝ていた麻美子が、瑠璃

子に同意していた。

「お風呂に入らないで寝るの?」

隆は、1人でお風呂の準備をしに、ラッコの

キャビンの中に入りながら、皆に聞いた。

「私は、お風呂に入ってこようかな」

陽子も立ち上がって、隆を追いかけて、ラッ

コのキャビンの中へ入った。

ヨット教室物語・第325話

「そこのバス停の前の細い道を上がって行っ

たところに、大きなホテルというか郵便局の

かんぽの宿泊施設があるんだ」

隆が説明した。

「そこで日帰り入浴させてもらえるんだよ」

隆が指差したバス停の先には、上に上ってい

く山道が伸びていた。

「今日は、もうあの山道を登っていく気力は

ないかな」

瑠璃子が隆に答えた。

ヨット教室物語・第324話

アクエリアスのメンバーは、自分たちの船か

らタオルや着替えなど入浴のセットを持って

またアクエリアスの中から表に出てきた。

「あ、お風呂に行きますか?」

隆は、中村さんに聞いた。

「おーい、お風呂に行くってよ」

夕食後、ブルーシートの上でのんびりお喋り

していたラッコのメンバーたちに言った。

「お風呂って、どこにあるの?」

麻美子が聞いた。

ヨット教室物語・第323話

瑠璃子は、隆に言った。

「はいはい、麻美子お母さん」

隆が、麻美子に返事した。

なんだか、隆お父さんに麻美子お母さん、瑠

璃子お姉ちゃん、一番上の雪お姉ちゃん、陽

子、一番末っ子の香代ちゃんと、良い感じで

ラッコファミリーになって来た皆だった。

「お風呂に行ってくるよ」

夕食後、アクエリアスのメンバーたちは、立

ち上がると、隆たちに言った。

ヨット教室物語・第322話

「隆が一緒にキャビンに入った時は、なんか

絡まれているんじゃないかと心配だったわ」

麻美子が、隆に言った。

「本当に絡まられているんだとしたら、危な

いから中に入ってくるなよ」

「そんなこと言ったって、隆のことが気にな

るじゃないのよ」

麻美子は、隆に言った。

「隆さん、ダメだよ。麻美ちゃんが心配にな

るようなことしたら」