たけし君は、海に浮かんだヨットのロープを
手から離すと、ズボンが濡れないようにスロ
ープの少し上側に避難した。
「何をやっているんだよ!?手を離したら、
ヨットだけが海に出て行ってしまうよ」
たけし君とペアの長沢が、たけし君に注意し
たが、その時には、海に浮かんだヨットは、
岸を離れて沖へと流されてしまっていた。
「どうするんだよ、俺達のヨット」
長沢が流れていくヨットを眺めていた。
たけし君は、海に浮かんだヨットのロープを
手から離すと、ズボンが濡れないようにスロ
ープの少し上側に避難した。
「何をやっているんだよ!?手を離したら、
ヨットだけが海に出て行ってしまうよ」
たけし君とペアの長沢が、たけし君に注意し
たが、その時には、海に浮かんだヨットは、
岸を離れて沖へと流されてしまっていた。
「どうするんだよ、俺達のヨット」
長沢が流れていくヨットを眺めていた。
2人1ペアで乗って、1人は船の後端でティ
ラー、舵を握って握って操船していた。もう
1人は、船の中央部分に乗って、セイルに繋
がっているシート、ロープを操作していた。
岸壁では、まだヨットを海に浮かべようと大
騒ぎしている子達もいた。
「このまま、まっすぐ船を降ろせば、海に浮
かべられるよ」
「待って待って、船は海に入って浮かぶかも
だけど、俺も入って、ズボン濡れちゃうよ」
「そっち持ってよ」
「もう少しゆっくり降ろしてよ」
子供達は、大騒ぎしながらも、ヨットをスロ
ープから海上に降ろし、水面に浮かべた。
「俺、ラダーを持つ方で良いか?」
「うん、じゃ、俺はシートを握って、セイル
を操作するよ」
ヨットを降ろし、海に浮かべ終わった生徒か
ら順番に、海に浮かんでいるヨットの上に乗
りこんで、ヨットを走らせていた。
そんな中、洋ちゃんと健ちゃんは怖がらずに
一番最初にヨットをスロープから海際に降ろ
して、ヨットを海上に出した。
「俺らも、ヨットを出そうぜ」
洋ちゃん、健ちゃんがヨットを海へ出してい
る姿を見て、他の子たちも洋ちゃん、健ちゃ
んを真似して、自分たちのヨットを持ち上げ
ると、海に降ろし始めた。
「うわっ、水が冷たい」
「でも、なんか気持ちいい」
「先生、海に出るのこわいよ」
初めてヨットに乗る子の中には、まだ怖がっ
ている子も何人かいた。
「大丈夫!ほら、見てごらん。沖にボートが
出ているだろう。先生たちが、ボートでちゃ
んとくっついているから、海に落ちてしまっ
ても、すぐに助けて上げられるから」
先生たちは、怖がっている生徒たちに説明し
ていた。
「絶対に一緒にくっついて来てよ」
「ライジャケの確認が終わった子から、順番
にヨットを海に出しましょう!」
片桐先生が、皆に指示を出していた。
「俺らも、海にヨットを出そうか」
洋ちゃんは、一緒にペアで乗る健ちゃんに言
うと、船の前後を2人で持ち上げて、スロー
プを降り始めた。
「地面が濡れてて足が滑る」
「いいよ、気をつけながらゆっくり進もう」
洋ちゃんは、健ちゃんに言った。
「洋ちゃん、僕のライフジャケットもう大丈
夫かな?ちゃんと着れているかな」
健ちゃんが、再度洋ちゃんに確認した。
「うん、大丈夫!ちゃんと着れているよ」
洋ちゃんは、健ちゃんのライフジャケットを
もう一度確認してから答えた。
「俺は大丈夫かな?」
「大丈夫!」
洋ちゃんは、隣にいた別の子のライフジャケ
ットまで確認してあげていた。
「そうだ!皆さん、ヨットで海に出る前に、
今一度、自分の着ているライフジャケットの
前ジッパーが上がっているかどうか、ちゃん
と着用できるか確認してください!」
片桐先生も、大声で生徒たちに伝えていた。
洋ちゃんも、健ちゃんも自分の着ているライ
フジャケットを改めて確認した。
「俺は大丈夫だ」
「健ちゃん、ジッパー開いてるよ」
洋ちゃんは、健ちゃんのジッパーを上げた。
「でも、その前にちゃんとライフジャケット
を着用してからにしましょう」
先生は、美穂ちゃんの着ているライフジャケ
ットの前側に付いているジッパーを上までし
っかり上げて着用させた。
「皆も、ライフジャケットの前のジッパーを
ちゃんと上げていない人は、しっかりジッパ
ーを上まで上げて着用してください!」
先生は、美穂ちゃんだけでなく、美穂ちゃん
の周りにいた生徒たちにも伝えた。
「それでは、これから今、準備し終わったヨ
ットを海に出して乗りましょう!」
「どうやって、海に出すんですか?」
美穂ちゃんは、側にいた先生に質問した。
「2人1組でペアを組んでいるのだから、2
人で一緒に船の前と後ろで持ち上げて、この
坂道、スロープを降りましょう。そして、そ
のまま、海にヨットを浮かべます」
先生は、美穂ちゃんに返事した。
「前後でヨットを持つんだってさ」
「皆さん、自分のヨットのマストはちゃんと
立ちましたか!?」
片桐一郎は、ヨットの艤装をしている子供達
の周りを見回理ながら聞いた。
「皆、マストも無事に立てられて、センター
ボードやラダーも付けられたみたいですね」
全てのヨットのマストやセイル、艤装品が設
置し終わっているのを確認して、片桐先生は
答えた。
「これで、ヨットの準備は完了です」
「同じように、ラダーも一番下までは、地面
があって下ろせないから、今はこのシートを
引いて、ラダーは上に向かって跳ね上げてあ
ります」
先生が言った。
「じゃ、海に船を浮かべたら、センターボー
ドとラダーを海の中に突き刺すのですか」
「そうです!正解です」
片桐先生は、生徒たちに答えた。
「そういうことか」
「センターボードは、一番奥まで差し込みた
くなりますが、船体の下に地面があるから、
一番奥まで突っ込めないじゃないですか」
センターボードの先を船体下にある地面に当
てて見せながら、先生は説明した。
「あ、そうか」
「地面があるから、奥まで差せないんだ」
花ちゃんたちは、地面にセンターボードがぶ
つかっていることに気づいた。
「海に浮かべれば、奥まで入るのね」
女の子、花ちゃんは、センターボードの下の
方だけが船に刺さっていて、上の方のほとん
どが船体から上部に飛び出してしまっている
のを気にしていた。
「ああ、もちろん海に船を下ろしたら、セン
ターボードも一番下まで突き刺しますよ」
先生は、花ちゃんの差し込んだセンターボー
ドに軽く手を添えながら言った。
「今は、ヨットが陸上に置かれているから、
一番奥まで入らないだけです」
センターボードを船体中央の穴に差し込もう
としていた女の子が呼んだ。
「はい、花ちゃん。なんでしょうか?」
「先生、センターボードがうまく入らない」
「ちゃんと入っているじゃないの」
先生は、女の子がちゃんと船体中央の穴に差
し込めているのを確認して言った。
「こんなものでいいの?」
「大丈夫ですよ」
「なんか、もっと奥まで入るのかと思った」
先生は、マストの説明をしていた。
「これがブームというセイルを右に出したり
左に出したりするものです」
先生は、マストを立てながら、子供達へ説明
していた。
「このブームとラダーに付いているティラー
を左にしたり、右にしたり、入れ替えること
で、ヨットは左、右へと方向転換します」
「先生!」
女の子が手を上げた。
「ラダーの先っぽに棒が付いていますが、こ
の棒、ティラーを左に押したり、右に引いた
りして、ヨットを左右に動かします」
ずっと大声で説明していたので、片桐先生の
声はだんだんかすれてきていた。
「マストは、船体の前の方にある穴に差し込
みます。穴に差し込んでマストが立ったら、
ロープ、シートでぐるぐる巻きにしてあるロ
ープを解いて、マストに沿って付いていた金
属の棒を船の前から後ろへ垂直に下ろす」
「センターボードのセンターっていうのは英
語で真ん中という意味です」
先生達が必死に説明していた。
「ヨットの、船体の真ん中に取り付けるボー
ド、板だからセンターボードです」
まだ小学校では、英語を習っていなかったが
先生たちは英語の意味を教えて、センターボ
ードのことを説明していた。
「ラダーは、ヨットの、船体の後ろ側に付け
る板です」
片桐先生は、子供達に指示していた。
「これ、こっち側?」
「この穴に入れれば良いのかな」
「重くて、マストが船体の穴に入らないよ」
先生たちは、取り付け方のわからない子供達
の組み立てを手伝っていた。
「センターボードは、ヨットの船体の真ん中
の穴に入れます」
片桐先生たちは、生徒たちの周りを周って、
取り付け方を説明していた。
をしたラダーとセンターボードを手渡した。
小さい子たちは、それらを表に置いてある船
体のところへ持って行った。
「1つの船体に対して、1つのセイルとマス
トのセット、それにラダー1つ、センターボ
ード1つで1セットになります!」
先生たちの指示で、子供達は表に並べられて
いるヨットの備品を1艇ずつ揃えていた。
「ぜんぶ揃った船から、今持ってきたものを
ヨットに取り付けて組み立てていきますよ」
「ヨットの船体と違って、大きい子たちなら
ば、2人じゃなくても1人でも持って行ける
かもしれないですね」
小学校高学年の子たちは、1人でマストとセ
イルを表に持ち出していた。
「小さい子たちは、ラダーとセンターボード
を持って行きましょう」
大きい子たちがセイルとマストを1人で持っ
て行ってしまったので、片桐先生は、手の空
いた小さい子たちには、四角い木製の板の形
片桐先生は、その中の1本を手で取り出すと
生徒たちに見せた。
「これがセイルとマストです」
1本を高く上に持ち上げてみせながら、先生
は生徒たちに言った。
「また2人1組で1個持って、自分たちのヨ
ットのところに持って行きましょう」
生徒たちは、先生に言われた通り、2人1組
でセイルとマストを艇庫から持ち出した。
「こっちは軽いね」
「でも、ヨットなのにまだマスト、セイルが
船には付いていません」
片桐先生は、敷地に並べられたヨットを指差
しながら、皆に説明した。
「まず、マストを立てて、そこにセイルを広
げましょう」
生徒たちと共に、もう一度、艇庫に戻った。
「はい。艇庫の中、天井付近にいっぱいクル
クルと巻かれた状態で仕舞われているものが
ありますね」
「ミニホッパー?」
「そう、あっちの四角いヨットの名前はOP
こっちの白いのはミニホッパーです」
片桐先生が、2人に教えた。
生徒たち皆が協力して、艇庫の中にあったヨ
ットは全て、横浜市民ヨットハーバーの表、
広くなった敷地に1艇ずつ表向きに並べられ
ました。
「これで、ヨットは全て表に並びました」
片桐先生は、生徒たちに告げた。
片桐先生が、先頭を1人、子供達が後ろを2
人で持って、ようやく持ち上がり、艇庫の外
へと持ち出した。
白いヨットを持ち出した2人は、小学校高学
年で少し大きい子たちだった。
「君たちは、身体つきも他の子よりも大きい
し、この白いヨットに乗ろうか」
片桐先生が、2人に言った。
「ちなみに、この白いヨットのことをミニホ
ッパーといいます」
「それも表に出すよ」
片桐先生に言われて、白い船体の前後に1人
ずつ別れて挟み、持ち上げようとした。
「重たい!」
2人は、白いヨットも先に持ち出したOPと
同じように持ち上げようとして、その重さに
閉口していた。
「これは、2人だけじゃ無理だな」
片桐先生が手伝いにやって来てくれた。
「先生が前を持つから2人で後ろを持って」
「前側を持ってよ」
洋ちゃんも、健ちゃんとペアになって、自分
たちの乗るヨットを持ち上げて、艇庫の外の
広い敷地のところに持ち出した。
皆が、それぞれ艇庫の中に折り重なっていた
ヨットを全て出し終わった。
「あと、この白いヨットも出すんですか?」
少年たちが、艇庫の中に1艇だけまだ残って
いた三角形のヨットを指差して、片桐先生に
聞いた。
先生たちの指示で、子供達は2人1組になっ
て、積み重なっているヨットを1艇ずつ持ち
艇庫から表の広い敷地に出した。
「けっこう軽い!」
「ぜんぜん簡単に持ち上がる」
OPは、木製の合板でできているため、小さ
い子でも2人で船の前後で挟みこんで持ち上
げれば、女の子でも割と簡単に持ち上げて移
動できた。
「けっこう楽勝で持てるよ」
そう聞けば、皆がすごいと思ってやる気が出
るかと思ったのだが、生徒達の反応はそれほ
どでもなかった。
「では、これから、このヨットを海上に出し
て、実際に乗ってみましょうか」
片桐先生は、一番上に重なっているヨットの
船体を持ち上げてみせた。
「1人では、サイズも大きいですし、重たい
から持てませんよ。2人1組で、ヨットの前
と後ろで挟んで持ち上げて移動しましょう」
がすごく小さく感じてしまっていた。
「このヨットは、OPといってヨットのオリ
ンピック競技にも使われているヨットです」
片桐先生が言った。
「オリンピック競技にもなっているヨットな
ので、皆さんも、このヨットを乗りこなせる
ようになれば、オリンピックにも出場できる
かもしれませんよ」
片桐先生は、オリンピックにも出場できるか
もしれないヨットと紹介した。