ジュニアヨット教室物語・第455話

「そうか、でも、まだ冬には早くないか」

「え、その上着は、冬用ではないよ。ちょう

ど学校の行き帰りに羽織るのに良いんだよ」

「そうなのか」

洋ちゃんの通っている中学校はには、特に制

服が無いので皆、自由な服装で通っていた。

「お前の学校は、けっこうファッションに拘

っている生徒が多いのか」

「ファッションに拘ってはいないけど」

洋ちゃんは、お父さんに答えた。

ジュニアヨット教室物語・第454話

「あ、コート!学校に着ていく上着が無いっ

て話してたやつのこと」

洋ちゃんは、お父さんに聞いた。

「あ、そうそう。ベイサイドのアウトレット

にはユニクロもあるだろう」

「行く行く!ユニクロに良い上着があるよ」

洋ちゃんは、お父さんの誘いにのった。

「表が紺色でさ、裏が緑のチェックになって

いるやつ。かっこ良い上着があるんだよ」

車の助手席で、ユニクロの上着の話をした。

ジュニアヨット教室物語・第453話

「ちょっと横浜ベイサイドマリーナまでドラ

イブに行かないか」

その翌週の土曜日、お父さんは、洋ちゃんに

声をかけた。

「え、ベイサイドまで何をしに行くの?」

「何ってこともないけど、ただのドライブ」

「ドライブ?」

「ほら、ベイサイドにはアウトレットモール

とか色々あるだろう」

お父さんが言った。

ジュニアヨット教室物語・第452話

それまで持ちそうもなかったのか、お父さん

はヨットハーバー前にあったコンビニに寄っ

て、そこでおにぎりと飲み物を何個か購入し

て戻って来た。

「これでも食べるか」

結局、三連休最終日の夜は、道路が大渋滞し

ていて、夕食のお店に立ち寄っている時間が

なく、お父さんがコンビニで買って来たおに

ぎりで夕食を済ました3人だった。

「山梨で乗ったヨットは楽しかったね」

ジュニアヨット教室物語・第451話

ミニホッパーを陸に上げて、艤装を解いてか

ら片付けると、ヨットハーバーに返した。

「お腹は空かないか?」

「ううん、大丈夫」

「家まで持ちそうか?」

「家まで?家に着くまでは持たないかな」

洋ちゃんが、お父さんに答えると、

「帰りに、どこか美味しそうな店があったら

夕食を食べていきましょう」

お母さんが言った。

ジュニアヨット教室物語・第450話

洋ちゃんは、ヒールがきつくなってくると、

事前にメインシートを緩めて、沈しないよう

にしていた。

「さあ、そろそろ暗くなりそうだな」

2人で湖をぐるっと一周してくると、夕刻の

時間になっていた。

「暗くなる前に、横浜に向けて帰ろうか」

「明日は、あなたも会社ですし、洋ちゃんも

学校ですものね」

お母さんは、お父さんに賛成した。

ジュニアヨット教室物語・第449話

「いつも毎日会社で働いていて疲れているの

に、一生懸命あなたのことを、ここまで連れ

て来てくれたんですから」

お母さんに言われて、洋ちゃんは、お父さん

と一緒にもう1回ミニホッパーで湖に出た。

「今度は、お父さんがティラーを持つ?なる

だけ、メインシートを引きすぎないようにし

て、スピードが出ないようにするから」

お父さんがティラーを持つと、洋ちゃんは前

方でメインシートを持っていた。

ジュニアヨット教室物語・第448話

「え、また」

「ああ、お父さんは、もう一周ぐらいヨット

に乗ってみたいな」

お父さんが言った。

「良いじゃない。もう1回ぐらいお父さんと

一緒に乗ってきなさいよ」

お母さんは、洋ちゃんに伝えた。

「お父さんは、ヨットに乗ってみたくて、こ

こまで来たんだし、乗ってきなさい」

お母さんは、洋ちゃんに言った。

ジュニアヨット教室物語・第447話

「え、健ちゃんのお父さんの絵画教室は、ち

ゃんと続いているじゃん」

「あれだって、健ちゃんのお父さんが描いて

いる時に比べると、あなたのは、すぐに飽き

てしまって集中力に欠けるじゃないの」

「そうかな」

洋ちゃんは、お母さんに見透かされてしまっ

ている気がしていた。

「よし、もう1回乗りに行こうか」

お父さんが、洋ちゃんに言った。

ジュニアヨット教室物語・第446話

ほんのすぐそこを一周してきただけだったが

お母さんは乗った感想を呟いた。

「あなたには、色々な教室に通わせてきたけ

ど、サッカー部とかテニス、ゴルフ教室、ヨ

ット教室とやっぱり運動系の教室はなんでも

得意ね」

お母さんは、洋ちゃんに言った。

「その代わり、運動系じゃない教室は、から

っきし駄目よね」

お母さんは、洋ちゃんに言った。

ジュニアヨット教室物語・第445話

「お母さんも乗ってみる?」

洋ちゃんは、もう1回着岸すると、お母さん

にもう一度聞いた。

「そんなさっきみたいに遠くには行かないよ

すぐ、そこを少しだけ周ってくるだけだよ」

「そうね、じゃ、せっかくだし、少しだけ乗

ってこようかしら」

お母さんは、洋ちゃんと一緒にヨットへ乗り

込んで、湖に出た。

「風を受けて走るのは気持ち良いわね」

ジュニアヨット教室物語・第444話

「ヨット教室で習っていたとしても、沈から

あんな見事に濡れずに、起き上がれるのは大

したものですよ」

「そうですか」

お父さんは、我が息子に惚れ惚れしていた。

それはそうだ、当然だ。ついこの間、片桐先

生の前で上手く乗れずに沈ばかりしていて、

さんざん練習して上手に起き上がれるように

なったばかりなのだ。

洋ちゃんは、2人の話を聞きながら思った。

ジュニアヨット教室物語・第443話

起き上がる前に、また船を跨いで、ヨットの

上に全く濡れずに戻っていた。

「あら、上手に起こしたわね」

お父さんとお母さんは、自分の息子のことを

褒めていた。

「お子さん、ヨットが上手ですね」

「ええ、まあ、週末いつも横浜のヨット教室

に通っていますから」

敷地内を見回っていたヨットハーバーの職員

に言われて、お父さんは答えた。

ジュニアヨット教室物語・第442話

「大丈夫、ひっくり返っても濡れないから」

洋ちゃんは、そうお母さんに言うと、1人で

ミニホッパーをポンツーンから離岸して、2

人が見ているすぐ目の前で、ミニホッパーを

わざとヒールさせて沈させてみせた。

「あらあら・・」

沈はしたが、横に倒れたミニホッパーの上で

洋ちゃんは上手に船を跨いでみせて、船底側

に出ているセンターボードの上に乗っかって

自分の体重で船を起き上がらせると、完全に

ジュニアヨット教室物語・第441話

「今度は、お母さんも乗せて上げたい」

お父さんに言われて、洋ちゃんはヨットハー

バーのポンツーンに着岸した。

「ほら、今度はお母さんが乗ってきなよ」

お父さんがヨットから降りると、お母さんに

言った。

「お母さんは別に良いわよ。なんかひっくり

返りそうだし」

お母さんは、ヨットに乗るのを拒んでいた。

「大丈夫だよ」

ジュニアヨット教室物語・第440話

とを思い出していた。

「沈してしまっても、1人ならば上手くセン

ターボードに乗り移って、湖に落ちて濡れず

に済むんだけど、2人だと、どちらかが湖に

落ちてしまって、全身ずぶ濡れになってしま

うからね」

洋ちゃんは、お父さんに説明した。

「そろそろ1回ヨットハーバーに戻ろうか」

湖をぐるっと一周するとお父さんが言った。

「もう戻るの?」

ジュニアヨット教室物語・第439話

初めは、洋ちゃんがティラーを握って、お父

さんがメインシートを操作していた。

「なるほど、こんな感じで走るのか」

「お父さん、もう少しだけシートを緩めて」

洋ちゃんは、メインシートを持っているお父

さんにお願いした。

「あんまり引きすぎると、そのままヒールが

きつくなって横に沈、倒れてしまうからね」

初めて乗った時、片桐先生に言われたように

上手くできず、何度も沈してしまっていたこ

ジュニアヨット教室物語・第438話

「乗ってみるか」

お父さんに言われて、洋ちゃんは、お父さん

と一緒にミニホッパーへ乗り込んだ。

「ヒールしないように、身体をこうして横向

きにして、風上側に乗り出すんだよ」

洋ちゃんは、ティラーを持ちながら、お父さ

んに乗り方を説明した。

「こうか」

「それで、このメインシートを持って引くと

セイルが風を受けて走り出すから」

ジュニアヨット教室物語・第437話

「お母さんには、もっと勉強しなさいとか成

績を良くしなさいと言われ続けているけど、

ちゃんとヨット教室で習ったことをしっかり

覚えられているじゃないか」

お父さんは、素直に自分の息子、洋ちゃんの

ことを褒めていた。

「本当ね、勉強もこれぐらいしっかり覚えて

くれると良いんだけどね」

お母さんが、お父さんの言葉に付け加えた。

「船を湖に出してみるか」

ジュニアヨット教室物語・第436話

「どうやって、マストとかセイルを、船体に

立てるんだ?」

洋ちゃんは、お父さんに聞かれて、ヨット教

室で教えてもらったことを思い出しながら、

お父さんと一緒に山中湖ヨットハーバーのミ

ニホッパーを艤装していた。

「おお!これで無事にうまく組み立てられた

じゃないか!」

お父さんは、艤装を終えたミニホッパーの姿

に感動していた。

ジュニアヨット教室物語・第435話

スピンネーカーとは、クルージングヨット教

室で今井隆が、アクエリアスで横浜マリーナ

のクラブレースに出場した際に、陽子と手助

けしていたセイルのことだ。

「前に付いているジブセイルとか、俺も上げ

たことないから慣れているミニホッパーじゃ

ないと操船する自信がないよ」

「それじゃ、ミニホッパーにするか」

洋ちゃんは、お父さんに答えて、ミニホッパ

ーを借りることになった。

ジュニアヨット教室物語・第434話

お父さんが言ったヨットを職員が説明した。

「FJはメインセイルだけでなくジブセイル

も付いています」

マストに付いている三角のセイル以外に、も

う1枚ヨットの前方に張るジブセイルが付い

ているヨットだった。

「カラフルなセイルも付いているよ」

追っ手の風用のスピンネーカーというセイル

も付いていた。

「きれいな色のセイルじゃないの」

ジュニアヨット教室物語・第433話

「ミニホッパーもあるじゃん」

山中湖ヨットハーバーでは、ヨットを借りる

ことができた。

この中から乗るヨットをお決めくださいと職

員に言われたヨットの中に、ヨット教室でも

乗ったミニホッパーがあった。

「こっちの大きい方が皆で乗れないか?」

お父さんは、ミニホッパーの奥に置いてあっ

た白いヨットを指差した。

「そちらはFJというヨットになります」

ジュニアヨット教室物語・第432話

「このテントって結局、中で寝ていないし、

何のために立てたんだろうね」

洋ちゃんは、お母さんに聞いた。

「そうね。テントを立てた意味ないわね」

お母さんも、洋ちゃんに答えた。

「いや、テントの中でお母さんが着替えする

事ができただろう」

朝食を持って、戻って来たお父さんは、2人

に答えた。朝食を食べ終えると、山中湖ヨッ

トハーバーを目指しキャンプ場を出発した。

ジュニアヨット教室物語・第431話

翌朝、お父さんは朝のトーストと目玉焼きに

ベーコンを焼いていた。

「おはよう」

「時間があったら、出かけるからテントを畳

んで片付けておいてくれるか」

洋ちゃんは、お父さんに言われて、車の脇に

立てられているテントを畳んでいた。

「そのペグを外さなきゃ」

お母さんも起きて来て、洋ちゃんにテントの

解体のやり方を指示していた。

ジュニアヨット教室物語・第430話

頷くお母さんに、1個寝袋を持って、車に行

くと、後部座席をフラットにして毛布などを

敷くと、お母さんが寝やすいように、お父さ

んは、車に寝床を作っていた。

「俺も、車で寝たいな」

車の中に出来上がった寝床を見た洋ちゃんは

お父さんに言った。

結局、テントを立てたものの家族3人は、車

の中に寝袋を敷いて、そこで3人並んで寝る

ことになってしまった。

ジュニアヨット教室物語・第429話

お母さんは、どうしてもテントの床に寝るの

が不安そうだった。

「だから、寝袋の中に、毛布を何枚か敷いて

あるんだけど」

「私、車の床をフラットにして、車の中で寝

ようかしら」

お父さんに言われても、テントの中で寝るこ

とには躊躇しているお母さんだった。

「車で寝るか?」

お父さんが、仕方なく聞いた。

ジュニアヨット教室物語・第428話

お母さんは、お父さんに聞いた。

「寝袋を敷く台みたいの無いのですか」

「そういうのは特にないな」

テントの床に寝袋を並べながら、お父さんは

お母さんに答えた。

「そこって、殆ど地面じゃないですか」

「地面ではないよ。ちゃんとテントの床があ

るじゃないか」

お父さんは、お母さんに言った。

「地面のゴツゴツで痛くならないですか」

ジュニアヨット教室物語・第427話

「洋ちゃん、こっちに来て、飯ごう炊くの手

伝いなさい」

お父さんに言われて、キャンプ場の炊飯場所

でお米を炊いているお父さんを手伝った。

出来上がった夕食のカレーライスを食べ終え

ると、テントの中に寝袋を敷いて寝る。

「ここに寝袋を並べて、皆で寝よう」

お父さんは、寝袋の準備をしながら、家族皆

に説明した。

「なんか地面で寝るのですか?」

ジュニアヨット教室物語・第426話

お母さんは、パンツに着替えるため、テント

の中に入った。

「キャンプに行くのに、なんでスカートなん

か履いて来たの?」

「お母さんだって、まさかキャンプするとは

思っていなかったのよ。ちゃんとどこかホテ

ルでないとしても、民宿に泊まるものと思っ

ていたのよ」

「そうなんだ」

お母さんは、テントでスカートを着替えた。