ジュニアヨット教室物語・第223話

「うん、まだ先週から始めたばかりだし、わ

からないけど多分無いと思うよ」

洋ちゃんは、お母さんに答えた。

「レースの遠征とかしたかったの?」

「お母さんは、別にしたくはないわよ」

「そうか、ならばヨットレースの遠征なんて

無い方が良いじゃん」

「まあ、そうよね。あんただって、数年で受

験だって控えていることだしね」

お母さんは、洋ちゃんに言った。

ジュニアヨット教室物語・第222話

「そうなのね」

お母さんは、洋ちゃんに答えた。

「全国規模でやっていて、地方にレースの遠

征に行くなんてことあるのだったら、お母さ

ん喜んで、車にヨットを積んで、どこでも連

れて行ってあげるわよ」

お母さんは、洋ちゃんに言った。

「そんな全国規模のレースなんてないよ」

「あら、そうなの」

お母さんは、残念そうに呟いた。

ジュニアヨット教室物語・第221話

「レースっていうのは、全国規模かなんかで

競い合ったりしているの?」

「え、わからないよ」

洋ちゃんは答えた。

「多分していないじゃないかな」

「そう」

「ヨット教室の仲間内だけでレースしている

だけだよ。ヨットってマイナーなスポーツだ

から、全国規模なんかでヨットレースしてい

ないよ、きっと」

ジュニアヨット教室物語・第220話

「で、なあに。あなたは、頭の使うことをぜ

んぶ健ちゃんにお願いしちゃっているの?」

「え、その代わりに、俺はヨットの操船とか

体を使うことをやっているの」

「そう」

「役割分担だよ、適材適所っていうやつ」

洋ちゃんは、2人で上手くやれているんだと

いうところを自慢してるつもりだった。

「あんたも少しは頭も使いなさいよ」

お母さんは、洋ちゃんに言った。

ジュニアヨット教室物語・第219話

ダイオースーパーは、洋ちゃん家の近く、反

町駅にある小さなスーパーのことだ。

ここら辺に住んでいるお母さんたちは、よく

この小さなスーパーを利用していた。

「健ちゃんと一緒に乗っていると、頭良いか

らレースのスタート時とかのカウントダウン

とか頭の使うことは、ぜんぶ健ちゃんがカバ

ーしてくれるから助かるんだ」

洋ちゃんは、お母さんに説明した。

「まあ、呆れた。そうなの?」

ジュニアヨット教室物語・第218話

「先週だって、健ちゃんとずっと一緒の同じ

ヨットに乗ってたんだから」

洋ちゃんは、お母さんに返事した。

「そうなの。昨日、健ちゃんのお母さんとダ

イオースーパーで会ったんだけど」

お母さんが言った。

「先週は、知らない人ではなくて、あんたと

ずっと一緒に乗れたから、安心してヨットに

乗れたらしいわよ」

「でしょう!仲良くやってたんだから」

ジュニアヨット教室物語・第217話

「明日は、あんたもヨット教室でしょう」

お母さんは、洋ちゃんに聞いた。

「そうだね」

「健ちゃんがヨット教室に来ない方が良いと

か言わないで、普段はあまりアウトドアに出

ない子なんだから、アウトドア派のあんたが

リードして、あげなさいよ」

明日は、ヨット教室2回目の日曜日だった。

「わかってるよ」

洋ちゃんは、お母さんに答えた。

ジュニアヨット教室物語・第216話

「お母さんと健ちゃんのお母さんでは、心配

する部分が全く逆ね」

「どういうこと?」

洋ちゃんは、お母さんに聞き返した。

「あなたは、いつも外で遊んでばかりで、勉

強のことが心配だけど。健ちゃんは、お家で

勉強ばかりしていて、もっと遊ぶときは皆と

遊んで欲しいって心配して」

「はいはい」

洋ちゃんは、お母さんに返事した。

ジュニアヨット教室物語・第215話

「俺たち2人で1位だったんだぜ」

洋ちゃんは、お母さんに自慢した。

「初めて乗ったヨットで、レースやって優勝

したんだ」

「それはすごいじゃないの!」

お母さんは、洋ちゃんのことを褒めた。

洋ちゃんは、優勝した経緯をぶっち切りでス

タートして、そのまま圧倒的な差をつけてゴ

ールしたと説明した。他のヨットがスタート

時間がわからなかったことは伏せておいた。

ジュニアヨット教室物語・第214話

「協力って?」

「健ちゃんが、ヨット教室に行くの嫌になら

ないようにしてあげなさいよ」

「あ、それは大丈夫!」

洋ちゃんが返事した。

「ヨットって、2人1組で乗るんだよ」

洋ちゃんは、お母さんに説明した。

「それで、俺たちは一緒のチームだから、た

ぶん次乗りに行った時も一緒だと思うし」

「そうなの」

ジュニアヨット教室物語・第213話

「いつも、インドアであまり運動とかする子

でなくて、塾で勉強している子たちとばかり

一緒にいるから少し活発に遊び回っているよ

うな子とも仲良くなって、新しいことも始め

てほしいとお母さんは、健ちゃんにヨットへ

通わせたんじゃないの」

お母さんは、洋ちゃんに説明した。

「そうなんだ」

「だから、あなたも小さい頃から仲良く遊ん

でいた健ちゃんに協力してあげなさいよ」

ジュニアヨット教室物語・第212話

「だったら、別にヨット教室に行かなくても

塾に行くのに毎日歩いているし、運動はして

いるじゃん」

洋ちゃんは、お母さんに聞いた。

「塾までの道を歩くぐらいじゃ運動とは言わ

ないでしょうが」

お母さんは、洋ちゃんに言った。

「まあ、それはそうか」

「ヨット教室は2週に1度でしょう。そのぐ

らいは身体を動かした方が良いじゃないの」

ジュニアヨット教室物語・第211話

「だって、外で遊んだりするよりも、家の中

とかで過ごす方が好きなじゃないかな」

「そうよ。だから、健ちゃんのお母さんは、

健ちゃんの身体のことを心配して、少し外で

運動させたいって、ヨット教室に通わせるこ

とにしたんじゃないの」

「そうなんだ」

洋ちゃんは、お母さんの話に頷いた。

「でも、毎日学校から帰ってくると、塾に行

っているとは言っていたよ」

ジュニアヨット教室物語・第210話

「そうね」

「一緒にヨット乗っていても、乗っているの

が楽しくなさそうで、海で乗っているときよ

りも、早く陸に戻りたそうな」

「そうかもね」

「無理して、ヨット教室に通わなくても良い

んじゃないかなと思ったの」

「そういうこと言わないの」

お母さんは、洋ちゃんに言った。

「せっかく始めたばかりじゃないの」

ジュニアヨット教室物語・第209話

「ええ」

「彼めちゃすごくて、昨日の帰りに有隣堂」

洋ちゃんは、健ちゃんのことを話すつもりで

また有隣堂での話を言いそうになった。

「っていうか」

おっと、また有隣堂から自分の勉強の話に戻

ってしまったらまずいと思ったので、急いで

話を中断した。

「有隣堂でも難しい本とか得意だし、なんか

ヨット乗りたくないのかなって」

ジュニアヨット教室物語・第208話

お母さんは、後でお父さんが会社から帰って

きてから一緒に食べるので、今は食事してい

なかった。

「そうそう、健ちゃんなんだけどさ」

「ええ」

ようやく、お母さんが勉強の話を忘れてくれ

て、俺の話を聞いてもらえると思って、洋ち

ゃんは安心して話を再開した。

「彼なんだけどさ、ヨットに本当は乗りたく

ないんじゃないかな」

ジュニアヨット教室物語・第207話

この子は、結局やる気なんか出なかったみた

いねと、お母さんは、自分の息子の態度をし

っかり見抜いていた。

「早く食べちゃいなさい」

お母さんは、洋ちゃんの茶碗にご飯を装いな

がら言った。

「いただきます!」

洋ちゃんは、夕食を食べ始めた。

「で、さっきの話は健ちゃんどうしたの?」

お母さんは、自分の息子に質問した。

ジュニアヨット教室物語・第206話

「夕食よ!」

学校から戻ってきて、お母さんに言われて、

自分の部屋で勉強をしていた洋ちゃんが部屋

から出てきた。

「夕食できたの?」

「できているわよ」

お母さんは、洋ちゃんに返事した。

「で、勉強はできたの?やる気は出たの?」

「まあね」

洋ちゃんは、お母さんに曖昧な返事をした。

ジュニアヨット教室物語・第205話

「いや、だから、俺だってやる気にはなれる

とは思うよ。試しに、俺の部屋の机に座って

やる気を出してくるよ」

洋ちゃんは、これ以上お母さんと話していて

も、健ちゃんの話どころではなく、やぶ蛇に

なりそうなので、慌てて自分の部屋に一旦退

却することにした。

「ちゃんと勉強するのよ!」

「はーい」

「寝るんじゃないわよ!」

ジュニアヨット教室物語・第204話

「どうでも良くないわよ」

「俺だって、勉強すればわかるようになるの

だろうけど、問題は、勉強机に座っても、他

のことにばかり気を取られて、ぜんぜん勉強

する気になれないんだよね」

洋ちゃんは、笑顔でお茶らけてみせた。

「勉強をやる気にならないじゃないわよ!何

なのよ、この間のあの成績は」

お母さんは、洋ちゃんに向かって怒鳴った。

「あれはさ」

ジュニアヨット教室物語・第203話

「やっぱ、あいつめちゃ頭良いよ」

「あなただって、頭悪くないんだから。お母

さん、あなたのことを、ちゃんと頭の良い子

に産んでいるはずよ」

お母さんは言った。

「だから、あなただって勉強をちゃんとすれ

ば、健ちゃんと同じぐらい勉強が出来るよう

になれるわよ」

「そうだね。って、俺のことは、どうでも良

いんだけど」

ジュニアヨット教室物語・第202話

「まず、コミックじゃなくてさ」

洋ちゃんが話していた。

「俺なんか全然行ったことも無い参考書がず

らっと並んだコーナーに行ってしまってさ」

洋ちゃんは、お母さんに話した。

「俺なんかが読んでも、全然わからないよう

な難しい分厚い参考書を広げちゃってさ」

「ええ」

「あんな中学生がいるんだね」

洋ちゃんは、世も末だみたいな顔をした。

ジュニアヨット教室物語・第201話

「あのさ、もしかして、健ちゃんってさ」

洋ちゃんは、野菜を切っているお母さんの横

顔を覗きこんだ。

「いや、ヨット教室の帰りにさ、横浜駅で有

隣堂に寄りたいっていうから、俺も一緒に行

ったんだ」

「そうなの」

「そしたらさ、やっぱ健ちゃんって優等生な

んだなって思ったんだ」

洋ちゃんは、感嘆な声を上げた。

ジュニアヨット教室物語・第200話

「健ちゃんね。健ちゃんがどうしたの?」

お母さんは、キッチンで夕食の準備をしなが

ら、背後の洋ちゃんに返事した。

「あのさ、健ちゃんなんだけどさ」

「ええ」

「昨日、ヨット教室で一緒のヨットに乗った

んだけどさ」

「一緒のヨット?それは良かったじゃない」

お母さんは、忙しそうに夕食の野菜を切りな

がら、洋ちゃんに答えた。

ジュニアヨット教室物語第199話

「うん、わかっているよ!石鹸もいま使って

いるから」

洋ちゃんは、手を洗いながら、洗面所から大

声でお母さんに言い返した。

「それでさ」

洋ちゃんは、洗面所で手を洗い終わってくる

と、お母さんに続きを話し出した。

「え、なんだったっけ」

「だから、健ちゃんの話」

「ああ、そうだったわね」

ジュニアヨット教室物語・第198話

「外から戻ってきたら、まず手をしっかり洗

ってきなさい」

お母さんは、洋ちゃんに注意した。

「はーい」

洋ちゃんは、話を中断すると、洗面所に行き

自分の手をよく石鹸で洗い始めた。

「ちゃんとしっかり石鹸を使って、指の先ま

で洗うのよ!」

お母さんは、台所から大声で洗面所の洋ちゃ

んに命令していた。

ジュニアヨット教室物語・第197話

「ね、お母さん。けんちゃんなんだけどさ」

洋ちゃんは、学校から帰ってくると、お母さ

んに話しかけた。

「健ちゃんがどうかしたの?」

「うん。健ちゃんなんだけどさ。昨日、一緒

にヨット教室でヨット乗ったんだけど」

「その前に、あんた、学校から帰ってきて、

手とか洗ったの?」

「え。まあ、手は後で洗いに行くけど」

洋ちゃんは、お母さんに答えた。

ジュニアヨット教室物語・第196話

逆に洋ちゃんの言葉は少なくなっていった。

「え、そんなに買うの?」

洋ちゃんは、健ちゃんが手にしている参考書

の数に驚いてしまっていた。

「半分持とうか」

「いえ、大丈夫です」

健ちゃんは、洋ちゃんに答えた。

が、結局、健ちゃんの家まで、洋ちゃんは半

分ほど購入した参考書を持ってあげていた。

「けっこう重たいね」

ジュニアヨット教室物語・第195話

「ここの店舗は、塾の帰りとかにも、本当よ

く来ますよ」

健ちゃんは、学習参考書を何冊も手に取りな

がら、洋ちゃんに話しかけた。

「けっこう学校の授業の参考になる本もあり

ますよね」

「まあ、そうだね」

ここの有隣堂の店舗に入った途端、健ちゃん

は元気になって、洋ちゃんに話しかける言葉

も多くなっていた。

ジュニアヨット教室物語・第194話

洋ちゃんは、健ちゃんに頷いた。

有隣堂といえば、洋ちゃんにとってはコミッ

クコーナーしか立ち寄ったことなかったが、

健ちゃんにそう言われてなんとなく頷いてし

まっていた。

「こっち、こっち」

健ちゃんは、横浜銀行奥の店舗、学習参考書

の置いてある棚に向かった。

「これこれ、これを探していたんだ」

健ちゃんが、本を手にしていた。