横浜マリーナのすぐ近くには、大手スーパー
マーケットの相鉄ローゼンも出店している大
きなショッピングモールが在って、モール内
には、スーパー以外にニトリやヤマダ電機ま
で揃っていた。
「ニトリやヤマダ電機があれば、必要な物は
ほとんど揃うわよね」
「本当はさ、ヤマダ電機のある所にダイクマ
が在って、その頃は本当に便利だったな」
隆は、瑠璃子に言った。
横浜マリーナのすぐ近くには、大手スーパー
マーケットの相鉄ローゼンも出店している大
きなショッピングモールが在って、モール内
には、スーパー以外にニトリやヤマダ電機ま
で揃っていた。
「ニトリやヤマダ電機があれば、必要な物は
ほとんど揃うわよね」
「本当はさ、ヤマダ電機のある所にダイクマ
が在って、その頃は本当に便利だったな」
隆は、瑠璃子に言った。
「来週は、お盆で1週間のクルージングに出
かけるのだから、今日はその準備をしよう」
お盆休みの前週の日曜日、隆は、横浜マリー
ナでラッコの皆に伝えた。
「前回の海の日に行ったクルージングで、何
か足りなかった物あったら揃えましょう」
麻美子が、皆と話している。
「すぐ近所にニトリとかもあるしな」
「足りないものは、いちおう何でも揃えられ
ると思うよ」
ラッコが、猿島の脇を通り、八景沖を越えて
横浜マリーナに到着したのは、アクエリアス
の到着よりもだいぶ遅くなってしまった。
「ずいぶん遅かったじゃん」
横浜マリーナで再会した中村さんに、隆が声
をかけられてしまったぐらいだった。
「ちょっとヴェラシスに寄って、お昼ごはん
していましたから」
「それは、良いお昼ごはんだったね」
中村さんは、羨ましそうに答えた。
「サラダとかカレーの野菜は、三浦半島の地
のものを使っているはずだよ」
「確かに、野菜が美味しい」
中目黒の良い料理屋さんで食事していて、舌
が鍛えられている麻美子も満足できる味のよ
うだった。
「そろそろ1時だ、横浜マリーナに戻ろう」
隆が言って、皆はレストランの席を立った。
ラッコが、ヴェラシスマリーナを出航して、
観音崎を周って横浜港内に入った。
ラッコの今日のお昼ごはんは、ヴェラシスマ
リーナに在るレストラン特製カレーライスと
なった。
「確かに美味しい」
マリーナレストランには、バルコニーが付い
ており、表のバルコニーで食事をした。
「味も美味しいし、素材もかなり立派な野菜
良い素材を使っているわよね」
麻美子はカレーを一口食べて感想を述べた。
「うん、美味しいわ」
「ここは、浦賀に在るヴェラシスというマリ
ーナ、民間のマリーナなんだ」
隆は、ヴェラシスマリーナのポンツーンにラ
ッコを着岸させながら、香代たちに言った。
「横須賀はカレーの街だろう。で、ここのマ
リーナのカレーが美味しいんだよ」
ポンツーンにラッコを停泊させると、皆でマ
リーナの1階にあるレストランへ向かった。
「カレーください」
レストランで注文した。
麻美子は、フェリー船と無邪気に競争してい
る香代のことを微笑んでみていた。
「ちょっと、ステアリング握らせて」
隆は、香代からステアリングを交代した。
「まだ少し時間あるし、ちょっと寄り道して
いかないか」
そう言うと、隆は、ラッコが浦賀に差しかか
ったところで、左折して浦賀のマリーナに途
中寄港した。
「ここで、お昼ごはんにしよう」
その船体の左右には、大きなお日様の絵が描
かれていた。そのお日様は、ちょうど下半分
が海の中で隠れていて、水面にはお日様の上
半分しか出ていなかった。
「横浜までお日様と一緒に走りたいのに、向
こうの方が速くて追いつけない」
香代は、日の出のついたフェリー船にどん
どん追いていかれてしまうのが、悔しそう
だった。
「それは無理よ」
「日の出じゃん」
ラッコは、大島から東京湾内に戻ってきた。
「日の出?」
もう朝はとっくに過ぎていて、そろそろお昼
になろうかという時間だ。
「あそこ」
隆は、東京湾内の中央付近、本船航路の方を
指差した。
「本当だ!日の出だ」
そこには、フェリー船が走っていた。
「城ヶ島」
香代は、ヘルムを取りながら、航海計器のモ
ニターに映し出された島の名前を読んだ。
「城ヶ島は、三浦半島の先っぽにある島の
名前よね」
麻美子は、香代に答えた。
「伊豆の島も良いけど、今度、1泊ぐらいで
三崎に行って、城ヶ島行ってみるか」
「うん!」
香代は、隆に頷いた。
麻美子が、隆に言った。
「ね、陽子ちゃん」
隣に腰掛けていた陽子に言った。
「未だに、あまりヨットのことがわからない
の私だけか」
瑠璃子が、麻美子に答えた。
「そんなことないわよ。瑠璃ちゃんだって、
航海計器の操作は、隆よりも上手じゃない」
「マニュアル読まなくても操作できるしな」
隆も、瑠璃子のことを褒めた。
香代は、ステアリングの正面に取り付けられ
ている航海計器のモニターを眺めて、前方の
陸地と見比べながら針路を取っていた。
「お、すごい!香代は、だいぶヨットの針路
の取り方とかわかってきたじゃん」
隆は、香代がヨットのことを理解してきてく
れたことに満足そうだった。
「うちの生徒で、一番成長しているよな」
「そんなことないわよね、陽子ちゃんだって
ヨットが上手になってきているわよね」
「あっちに見えている陸地って、もしかして
横浜かな」
瑠璃子が、大島を離れると、前方に見えて来
た陸地を指差した。
「あれは房総半島、千葉県」
隆が、瑠璃子に説明した。
「左側が三浦半島だから、三浦半島の奥が横
浜になるのよね」
ラッコのステアリングを握っている香代が、
モニターを見ながら、隆と瑠璃子に答えた。
隆の説明を聞いて、陽子は納得していた。
「別に、敢えて女性の生徒しか取らなかった
わけじゃないんだけど」
隆が言った。
「でも、私は、うちのヨットに、今のこのメ
ンバー達がクルーになってくれて、私は嬉し
かったな」
麻美子は、隆に言った。
「まあ、そうだね」
隆が、麻美子に答えた。
「ラッコのようにマストが2つあるヨットを
ッチというんだ」
隆が、麻美子に説明した。
「マストが2つあると、2つのセイルを上げ
られるから、その分、1つのマストの高さを
低くして、1つのセイルの大きさを小さくで
きるから、力が無くてもセイルの操作が扱い
やすくできているんだ」
「なるほど、だからラッコは、力の無い女性
ばかりでも乗れるヨットなのね」
「マストの高さを比べてみな。うちよりも、
アクエリアスの方が背が高いだろう」
隆は、前方を行くアクエリアスを指差しなが
ら麻美子に答えた。
「でも、うちの方がマストが2つあるよね」
「マストが2つあるのは、速く走らせるため
に2つあるわけじゃないんだよ」
隆は、麻美子以外にも説明していた。
「アクエリアスのように、マストが1つのヨ
ットをスループっていうんだ」
「まあ、レースをする船じゃなくて、こんな
感じでクルージングするヨットだからね」
隆は、自分のヨットのことを説明した。
「アクエリアスだって、クルージングをする
船じゃないの?」
麻美子が、隆に質問した。
「アクエリアスの方がセイルも大きいし、船
内のインテリアも軽く造られている」
「そうなんだ。セイルが大きいんだ」
麻美子が、アクエリアスを眺めてみた。
「やっぱり、うちのヨットは、フィンランド
製の重たい木材をたくさん使って、船内のイ
ンテリアを造作しているから、どうしても重
たくて速くは進まないよ」
隆が言った。
「この間のレースの時も、ビリになってしま
たものね」
雪が、隆に言った。
「この間のは、アクエリアスを助けに戻った
りしていたのもあるけど」
帰りは、出港時にだけかけていたエンジンを
停止して、風の力だけで順風満帆にセイリン
グで横浜を目指していた。
「やっぱり、風が吹くと、うちよりアクエリ
アスの方が速いんだな」
隆は、風を受けて、ラッコよりも遥か先を走
っていくアクエリアスの姿を見て、呟いた。
「うちのヨットって遅いの?」
瑠璃子が隆に質問した。
「そうね。まあ、遅いわな」
今日の海上は、夏の季節にしては珍しく、風
がそれなりに吹いていた。
ラッコは、メインとミズンセイルにジブセイ
ルも上げると、ラッコの船体は風を受けて、
それなりのスピードで走っていた。
一緒に並走していたアクエリアスも、メイン
とジブセイルを上げてセイリングしていた。
横浜から大島まで来るときは、風がほとんど
吹いてなくて、セイルだけでは風が弱く走ら
ず、エンジンだけでは走らなかった。
ラッコも、アクエリアスも、岸壁に舫ってい
た舫いロープを外し、アンカーを海底から上
げて、波浮港の港を出港した。
まだ朝が早いため、皆は朝食を食べずに出航
していた。出航して、海上に出てから食べる
予定だった。
「香代、ヘルムをお願い」
「了解!」
波浮港を出港するまでは、隆がずっとヘルム
だったが、出港してから香代と代わった。
「さあ、出航しようか」
まだ、早朝の5時だったが、今日の夕方まで
には横浜へ戻りたいので、ラッコの皆は早起
きして出港の準備をし終わっていた。
昨日、岡田港に移動しているはずだった隣に
停泊しているアクエリアスのメンバーも皆、
ラッコと一緒に出航する準備を終えて、準備
万端だった。
「それでは、行きましょうか」
隆は、アクエリアスに声をかけた。
「ここの食事美味しいから、ここで食べて行
くのもいいよ」
隆は、麻美子に答えた。
その日の夕食は、かんぽの宿にあるレストラ
ンで、食事して行くことになった。
「美味しかったね」
麻美子が言った。
「明日の出航は朝早いから、今夜は戻って早
めに寝ようか」
皆は、ヨットに戻った。
「今から、ラッコに戻って、お料理を作るの
も面倒じゃない」
麻美子は、隆に言った。
「だから、今夜の夕食は、ここで食べて行こ
うってことになったの」
レストラン奥のテーブルには、「ラッコ様」
と書かれたプレートが立っていた。
「ラッコに戻って、夕食にしたかった?」
麻美子は、隆に聞いた。
「いや、別に」
1階下のお風呂場から階段を上がって、エン
トランスフロアへ向かおうとしていたら、
「隆!」
奥から麻美子に呼ばれた。
お風呂場と同じフロアには、階段の手前に卓
球台が置いてあって、その奥に食事ができる
レストランがあった。
麻美子だけではなく、他の女性クルーたちも
皆、そこに集まっていた。
「卓球か」
「それじゃ、お先に」
先にお風呂に入っていたアクエリアスのクル
ーたちが帰ってしまった。
隆は、1人でのんびりと大きく身体を伸ばし
てお風呂に浸かっていた。
「そろそろ出るかな」
女湯の連中も、お風呂から出ている頃だと思
ったので、隆もお風呂から出ると、服を着て
男湯を出た。
「気持ちよかったな」
「いや、また海の真ん中で故障してもなと思
ってね。念のためだけど」
中村さんは、隆に言った。
「あれは故障じゃないし、ただのエアを噛ん
だだけだから」
隆は、行きにアクエリアスのエンジンが掛か
らなかった原因を説明した。
「それにしても、うちのクルーたちじゃ、そ
の対処法がわからなかったから」
「帰りも、ラッコと一緒なら安心だから」
「波浮港の沖で良い風だったので、のんびり
セーリングだけして、また波浮に戻った」
「そうなんですか」
「また、エンジンが故障して止まるといけな
いと思ってさ。帰りも、隆くんたちと一緒に
ランデブーで横浜まで帰ろうと思ってね」
中村さんは、隆に説明した。
「そんなにいつもいつもエンジンだって止ま
らないでしょう」
隆が言った。
昨日は、隆とアクエリアスの面々がいて、女
性が陽子が1人だけだった。
今日はラッコの女性クルーたちだけなので、
隆だけが男湯で1人だった。
「あ、中村さん」
隆が脱衣所で服を脱いで、お風呂に入ると、
そこには中村さんたちアクエリアスのクルー
たちがいた。
「どうしたんですか?岡田港に行ったんじゃ
なかったですか」
「右!そこからだと、もうお風呂屋の建物も
見えているはずだけど」
隆が、山道を登りながら、麻美子たちの方に
向かって叫んだ。
「かんぽの宿」
「そう、それ!」
隆と陽子は、昨日も来ているホテルのエント
ランスで日帰り入浴をお願いした。
「それじゃあね」
麻美子は、隆と別れて女湯に入った。