中古車輸出・第10話

ゆみの配属された輸出部門は、国際色豊かで

スリランカ人、アフリカ人、ベトナム人など

バラエティに富んだ男性や女性スタッフ達で

構成されていた。

一方、育成部門のスタッフ達は、日本人スタ

ッフ3名のみで、若い男性ばかりだった。

彼らの仕事は、これからの、未来の中古車輸

出業者を育てるためのオンライン通信教育講

座への受講者を募ること、そして集まってき

た受講者達を、立派な中古車輸出業者として

独り立ちさせることだった。

明星学園・第1話

「お姉ちゃん、ちょっと待ってよ」

ゆみは、玄関先で急いで靴を履きながら、前

を行く姉に声をかけた。

「ゆみ、道がわからない間だけだからね」

祥恵は妹に返事をした。

今日は、ニューヨークから日本に帰国してき

て、初めて姉と同じ武蔵野の学校に通う日だ

った。姉は、最初の間のまだ通学路がよくわ

からない間だけ妹と一緒に通って、その後は

ゆみとは別々に学校へ通うものだとばかり思

っていたのだった。

ヨット教室物語・第100話

今日は、初めてのヨット乗船日だった。

先週からクルージングヨット教室は始まって

いたが、先週はクラブハウスの2階で座学の

講習を受けただけだったので、実質今週が初

めてヨットに乗る日だった。

今日は、永田瑠璃子も皆と同じようにスカー

トではなくパンツを着ていた。

「さあ、メインセイルを上げようか」

隆の号令で、皆はラッコのメインセイルを上

げるのに必死になっていた。

「そのロープを引っ張ってくれる」

ヨット教室物語・第99話

「いいかな?」

「全然いいんじゃないの、別に」

隆は、運転しながら麻美子に答えた。

「正直、さっきもう乗りに来ないとか言われ

た時、麻美子が本当に乗りに来ない気かと思

ってドキドキしたよ」

「そうなの?」

隆は、麻美子に頷いた。

「後さ、乗せてもらうとか言ってたけど、あ

のヨットは、麻美子も、自分のヨットって思

ってもらって良いんだからね」

ヨット教室物語・第98話

「私さ、ヨット教室の生徒さんたちが、うち

のラッコにクルーとして大勢来るようになっ

たら、隆が1人ぼっちでヨットに乗ることも

なくなるだろうから、今週でヨットに乗るの

は辞めようかなと思ってたのよ」

「マジで、なんで?」

帰りの車の中で、麻美子は隆に話した。

「でもさ、あの子たちとヨットに乗るのだ

ったら、なんかおしゃべりしてて楽しいし

もうしばらく隆のヨットに乗せてもらおう

かなと思い直しているんだけど」

ヨット教室物語・第97話

「それじゃ、来週の日曜日ね」

皆が駅から電車に乗って帰ってしまうと、隆

は麻美子を乗せて東京の自宅まで車を走らせ

た。隆は、渋谷のマンションで一人暮らしし

ていて、麻美子は、中目黒の実家で両親と暮

らしていた。

麻美子には、弟がいるのだが、弟は、いまサ

ンフランシスコに単身赴任していた。

「ね、私なんだけど」

麻美子は、ずっと隆に話し出せずにいたこと

をようやく車の中で話せた。

ヨット教室物語・第96話

「でも、それじゃ、真下にいる麻美子にスカ

ートの中まる見えだろう」

「え、ぜんぜん見えていないよ」

キャタツを下で抑えていた麻美子は、降りて

くる瑠璃子に向かって話しかけた。

「皆、ここから電車で帰るのかな」

隆は、自分の狭いセダン車に全員ぎゅうぎゅ

う詰めで乗せると、横浜マリーナの最寄り駅

、京浜東北線の根岸駅まで送り届けた。

「それじゃ、来週ね!バイバイ」

皆は、駅で別れた。

ヨット教室物語・第95話

隆の声で、皆は飲み終わったお茶のカップと

お茶菓子を片付けて、船台の上のヨットから

帰るために降りた。

「大丈夫か、スカートで下りられるか」

さっき上がるとき、麻美子が心配したのと同

じことを、今度は隆が瑠璃子に言っていた。

「大丈夫、スカートでどこでも普通に動き回

れるから」

瑠璃子は、隆の前で普通にスカートでヨット

のライフラインを飛び越えると、颯爽とキャ

タツを降りてみせた。

ヨット教室物語・第94話

隆が麻美子に言った親子という言葉を、香代

が言い直してくれていた。

「そうよね。お姉ちゃんと妹よね」

麻美子は、訂正してくれた香代の言葉に嬉し

そうだった。

それから隆1人が混じってはいたが、日が暮

て周りが暗くなるまで、ラッコのキャビンの

では、女の子たちの黄色い声で女子会トーク

盛り上がっていた。

「そろそろ、お開きにしようか」

隆が皆に言った。

ヨット教室物語・第93話

麻美子は、隣の席に座っている香代の頭を撫

でながら、隆に答えた。

クラブハウスでの講義中に、ロープワークを

香代に教えてあげて以来、麻美子と香代はす

っかり仲良くなっていた。

「すっかりお友達だよね」

麻美子が、香代に話しかけると、香代は麻美

子の方を嬉しそうに見ながら、頷いた。

「お友達というよりも、見た目は親子だな」

隆は、麻美子のことを笑った。

「お姉ちゃんと妹」

ヨット教室物語・第92話

「麻美子より年上なのはさっき聞いたよ。俺

より上かなって聞いたんだけど」

「何を言っているの?」

麻美子は、隆のことを見た。

「私と隆って同級生だよね、私より4つ上だ

って言っているでしょう」

「あ、そうか。じゃ、俺とも4つ上なのか」

隆がやっと気づいたように言ったので、皆

はキャビンの中で大笑いになった。

「それじゃ、この中で1番の年下は?」

「香代ちゃん」

ヨット教室物語・第91話

「だって、私より4歳も年上だもの」

「そんなこと気にしなくてもいいよ、雪って

呼んでくれていいよ」

雪は、麻美子に言った。

「へえ、麻美子よりも年上なんだ」

「そう、私がこの中で1番の年長者かな」

雪は、隆に答えた。

「そうなんだ。俺よりも年長なのか」

「だから、私よりも4歳年上だって言ってい

るじゃないの」

麻美子は、隆に言った。

ヨット教室物語・第90話

「そうよね、お茶淹れるから寛いでてね」

「ルリちゃんは、会社で経理のお仕事してい

るんだよね」

麻美子は、今日会ったばかりの永田瑠璃子と

もすっかり仲良くなってしまっていて、ルリ

ちゃんと呼ぶようになっていた。

永田瑠璃子だけでなかった。鈴木香代は香代

ちゃん、中村陽子は陽子ちゃん、柏木雪のこ

とだけは、雪さんと呼んでいた。

「なんで、柏木さんだけは雪さんなの?」

隆は、麻美子に聞いた。

ヨット教室物語・第89話

麻美子は、その手前にあるキッチンでお湯を

沸かして、紅茶とちょっとしたお菓子の準備

を始めた。

「お手伝いします」

永田瑠璃子と中村陽子が率先して、お茶の準

備をしている麻美子の側にいくと、麻美子の

手伝いをしてくれようとしていた。

「ね、今日はずっと1日お勉強してたから疲

れたでしょう?」

麻美子は、皆に聞いた。

「うん、知恵熱が出たかも」

ヨット教室物語・第88話

横浜マリーナでのクルージングヨット教室は

いつも毎年春から秋にかけて開催されていて

いつも生徒の比率は男性より女性の方が多い

から、男性生徒はレース艇に振り分けられて

しまい、隆たちのようなクルージング専門の

クルージング艇には女性生徒しか振り分けれ

なくなってしまうのも定番になっていた。

「ソファに座って寛いでいてね。いま温かい

お茶を淹れるわね」

皆は、パイロットハウス前方の一段下がった

ところにあるダイニングソファに腰掛けた。

ヨット教室物語・第87話

「いっらしゃい」

メインサロンの床板を開けて、中に入ってい

るエンジンの整備をしていた隆が顔をあげて

中村陽子に返事した。

「生徒さんたちは皆、若くてかわいい女の子

達ばかりよ」

麻美子は、隆が喜ぶかなと思いながら、そう

伝えたが、隆は別にそうでもなさそうだ。

隆自身は、ラッコに振り分けられる生徒さん

なんて皆、おそらく女の子ばかりだろうなと

は想定済みだ

ヨット教室物語・第86話

麻美子も、初めてこのキャタツを登ったとき

には、上手くよじ登れなかったものだ。

横浜マリーナの船台上への上り下りするシス

テムは、もう少し登りやすいシステムがある

と良いのにと麻美子は思っていた。

「そのドアを開けて、中へどうぞ」

麻美子は、一番ドアの近いところに立ってい

た中村陽子に声をかけると、中村陽子はドア

を開けて、ヨットのキャビンの中へ入った。

「おじゃまします」

他の皆も、キャビンの中へ入った。

ヨット教室物語・第85話

むしろ、キャタツの上り下りで苦労していた

のは、自分と同年代ぐらいの柏木雪だった。

柏木雪は、スカートではなくパンツを着てい

たが、うまくキャタツを登れずに、麻美子が

下でずっとしっかりキャタツを抑えてあげて

ようやく上まで登れたのだった。

「中に作業中の汚いおっさんがいるけど、オ

ーナーだから驚かなくて大丈夫よ」

麻美子は、一番最後にキャタツをよじ登って

デッキへ上がると、デッキ上にいた皆に声を

かけた。

ヨット教室物語・第84話

永田瑠璃子は、何の問題もなく手でスカート

をくるっと捲利上げると、上手にキャタツを

よじ登ってデッキ上に上がってしまった。

「うわ、さすが若い子は身体が柔らかくて機

敏だわね」

麻美子は、スルスルとロングスカートでキャ

タツをよじ登ってしまった永田瑠璃子の姿を

見て呟やいていた。

「私より上がるの上手ね」

むしろ、パンツしか着ない麻美子よりも、よ

り上手にキャタツを上がっていた。

ヨット教室物語・第83話

そのため、ヨットが陸上で保管されていると

きは、ヨットの船体に長いキャタツを立てか

けて、キャタツを登って船体のデッキ上に乗

り降りしなければならなかった。

「スカートじゃ上がれないものね。私と一緒

に下でお話しながら待っていようか」

生徒のうち永田瑠璃子は、その日はパンツで

なく、オーバーオールタイプのジャンパース

カートを着ていた。それを見て、麻美子は、

永田瑠璃子にそう伝えた。

「え、ぜんぜん大丈夫です」

ヨット教室物語・第82話

そのため、必然的にラッコへの振り分けは女

性ばかりになってしまうのだった。

「それじゃ、うちのヨットを案内しますね」

麻美子は、生徒たちに言うと、ラッコの船体

にキャタツをしっかり掛け直した。

隆のヨットは、横浜マリーナの海上に係留さ

れて保管されているわけではなかった。

横浜マリーナ内の敷地に船台というヨットの

船体を上に載せて保管しておける台車があっ

て、その台車の上にラッコのヨットを載せて

陸上で保管されているのだった。

ヨット教室物語・第81話

麻美子は、自分が生徒を迎えにきたせいかと

反省していたが、実はそうではなかった。

ヨット教室の生徒さんの振り分けは、麻美子

が迎えにくる以前から既にマリーナのスタッ

フ間で決めていて、クルージングヨット教室

の生徒さんたちは、もともと7:3で女性の

数の方が多いのだった。

ウララのようなレース艇たちに若い男性生徒

さんたちを先行して振り分けしてしまうと、

もうあと残りは、ほぼ女性の生徒さんしか残

っていないのだった。

ヨット教室物語・第80話

隆は、毎週自分と一緒にヨットへ乗ってくれ

るクルーを求めて、クルージングヨット教室

の生徒さんたちを自分のヨットに受け入れる

ことにしたはずだった。

一緒に乗ってくれるということは、セイルを

上げたり下げたりする際、一緒にヨットを操

船してくれる人を求めているはずだ。

セイルを上げたり下げたりするのに、女の子

ばかりだったら困るんじゃないかな。

「私が、隆に変わって生徒さんのお迎えに来

てしまったからかな」

ヨット教室物語・第79話

「彼女、うちのヨットに振り分けられたんだ

麻美子は、彼女の名前が呼ばれたとき、なん

かちょっと嬉しかった。

「永田瑠璃子さん、柏木雪さん、中村陽子さ

ん、鈴木香代さん」

麻美子は、クラブハウスで先生から受け取っ

た資料を確認しながら、ラッコのヨットに振

り分けられた生徒さんたちの顔を確認した。

みな女性ばかりだった。

「これじゃ、隆が困らないかな」

と麻美子は思った。

ヨット教室物語・第78話

「永田さん、柏木さん、中村さん、鈴木さん

は、前へ出てきてください」

麻美子が教室の前方に移動すると、マリーナ

職員は、今度はラッコに振り分けられる予定

の生徒さんたちの名前を順番に呼んでいた。

先生に名前を呼ばれる度に、呼ばれた生徒さ

んが返事をして教室前方に出てくる。

最後に、鈴木さんと呼ばれた生徒が教室の一

番後ろから返事して、教室の前方に歩いて来

た。麻美子がさっきロープワークを教えてあ

げていたあの可愛い女の子だった。

中古車輸出・第9話

ゆみには、輸出部門のホームページを作るこ

ととは別に、もう1つ育成部門の受講生たち

のホームページを作るという仕事もあった。

育成部門のオンライン通信教育で受講してい

る受講生さん達にだって、これから中古車輸

出業者として独り立ちしていかなければなら

ないから、海外バイヤー向けの英語ホームペ

ージは必要になってくる。

そんな彼らの英語ホームページも、ある程度

の英語は帰国子女でわかるゆみが担当し、制

作してあげていた。

中古車輸出・第8話

営業担当者たちは、それらの海外バイヤーへ

の返信、商談も進めつつも、既に受注済みの

海外バイヤーの自動車を仕入れたり、船積み

の手配もしなければならない。

海外バイヤーたちは、会社の英語向けホーム

ページから車のオファーを出してくるため、

横浜の貿易会社が売上げを順調にあげていく

ためには、ゆみの作っている、運営している

ホームページが重要になってくる。

「少しハイエースの掲載増やそうかな」

ゆみは、ホームページの構成を考えていた。

中古車輸出・第7話

「今日のオファーは27件だから5件ずつ」

ゆみは、その日届いた海外バイヤーからのオ

ファーを輸出部門の営業担当者たちに振り分

けていた。

営業担当者たちは、その日振り分けられたオ

ファーに対して、メールで返信する。

5件ぐらいのメール返信なら、すぐに終わっ

てしまうと思うかもしれないが、処理しなけ

レバならない海外バイヤーは、当日届いた分

だけではない。前日に出した分やその以前に

返信した分からも届いていたりする。

ヨット教室物語・第77話

「うちのヨットには、どんな生徒さんたちが

振り分けられるのかな」

麻美子は、自分が呼ばれるのを待ちながら、

考えていた。さっき、ロープの結び方がよく

わからずに私が教えてあげた女の子って素直

で可愛かったし、あの子がうちのヨットに振

り分けられるといいな。

「ラッコさーん」

教壇のマリーナ職員に呼ばれた。

「はーい」

麻美子は、慌てて教室前方へ移動した。

ヨット教室物語・第76話

マリーナ職員は、ウララに振り分けられる生

徒さんたちの名前を呼び、呼ばれた生徒さん

たちも教室の前方に移動して、これからお世

話になるヨットのオーナーさんと対面した。

「皆さん、若い男性ばかり」

レース艇のウララに振り分けられる生徒さん

たちは流石に皆、若くて力のありそうな男性

たちばかりであった。

「それはそうよね、あのヨットだし」

麻美子は、ウララの船内に置いてあったバケ

ツのトイレのことを思い出していた。

ヨット教室物語・第75話

「それでは、生徒さんたちを振り分けます」

マリーナ職員が皆に伝えた。

「自分の船の名前が呼ばれたら、オーナーさ

んは教室の前方に出てきて下さい」

教壇の先生に代わってマリーナ職員が、教室

の後ろの方に集まっていたヨットのオーナー

さんたちに声をかけた。

「ウララさーん!」

「はーい」

先生に呼ばれて、オーナーの松浦さんは、教

室の前方に移動した。

ヨット教室物語・第74話

「そのバケツはあまり触れない方が良いよ」

「そうなんですか?」

「うちの皆のトイレだから」

松浦オーナーは、麻美子に苦笑していた。

トイレの用だって、扉も何もない、ちょっと

した仕切りの影へバケツを持って行って、そ

こで済ませてくるのだと説明してくれた。

「私、ウララには乗れないわ」

「まあ、そうだろうね」

松浦オーナーは苦笑していた。

麻美子は、その時のことを思い出していた。

ヨット教室物語・第73話

麻美子は、以前、ウララの船内を覗かせても

らった時、速く走れるようにと船体を軽くす

るため、ほぼ何もない空っぽの船内に驚いた

ものだった。

パイプベッドが両サイドに4個備え付けられ

ており、カセットガスコンロ1個とバケツが

置いてあるだけの船内を見せてもらったこと

があった。

「え、これがトイレなんですか」

ただの青いバケツがウララのトイレで、そこ

へ用を足して海に流すのだそうだ。

ヨット教室物語・第72話

「松浦さんのところも、生徒さん取られるの

ですか?」

麻美子は、この冬の間ずっとヨットへ乗りに

来ていて、すっかり顔見知りになってしまっ

たウララの松浦オーナーに話しかけた。

「うちのヨットは、若い男性クルーがいない

と走らせられないヨットだから」

ウララは、隆の乗っているラッコのヨットと

は、まるっきり違うタイプのヨットで、ヨッ

トレースで速く走ることだけに特化して造ら

れているヨットだった。

ヨット教室物語・第71話

隆は、午前中、セーリングをして来たヨット

の後片付けで忙しそうだった。お昼ごはんの

後片付けを終えた麻美子は、隆に提案した。

「よろしく頼むよ」

ヨットのセイルを折りたたんでいた隆は、黙

って麻美子に頷いた。

麻美子がクラブハウスに行くと、他にも多く

のヨットオーナーさんたちが生徒たちのこと

を迎えに来ていたのだった。

その中に、麻美子が最近知り合ったウララの

松浦オーナーの姿もあった。

ヨット教室物語・第70話

お昼、ヨットで海に出航して昼過ぎにマリー

ナへ戻って来て、キャビンでお昼を作って、

デッキで昼食を食べているときも、麻美子は

隆にそのことを伝える機会を逃していた。

「そろそろ各艇に生徒さんたちを振り分けま

すので、オーナーさんはクラブハウスの方へ

お集まり下さい」

マリーナの職員さんが、各艇のオーナーさん

に伝えていた。

「生徒達を迎えに行くの私が行こうか」

麻美子は、忙しそうにしている隆に言った。

ヨット教室物語・第69話

あんなに大勢の生徒さんたちがヨットに乗り

に来てくれるのだったら、来週からは別に私

が隆と一緒にヨットへ来なくても、隆もさみ

しくないわねと麻美子は思っていた。

「来週からは、私がヨットに来なくても、い

っぱい人いるし大丈夫だよね」

麻美子は、隆にそう伝えようと思いつつも、

ずっと言い出せずにいた。

午前中、ヨットで海に出航して、いつもの貯

木場には立ち寄らずに、昼過ぎにはマリーナ

へ戻って来て、お昼を食べていた。

ヨット教室物語・第68話

今朝の横浜マリーナは、随分と人が多く騒が

しかった。

今日から今年のクルージングヨット教室が始

まるので、マリーナにはヨット教室に参加す

る生徒さんたちがいっぱい集まって来ていて

いつもは静かなマリーナの敷地内が若い人た

ちのお喋りする声で騒々しかった。

生徒たちの間をかき分けて、麻美子は隆と一

緒に自分たちのヨットへ向かった。

「夕方から生徒たちの引き渡しだから、午前

中少しだけ海に出て帆走してこよう」

ヨット教室物語・第67話

「俺らも、来週からあそこに停まっているど

れかのヨットに乗れるんだよな」

前の席の男性が、ロープワークの練習しなが

ら、横にいる仲良くなった彼と話していた。

香代は、彼の話を聞きながら、このお姉さん

もヨットのオーナーさんで、生徒のことを迎

えに来ているんだろうなと思った。

「私は、このお姉さんのヨットに振り分けら

れると良いのにな」

香代は、お姉さんにロープの結び方を教わり

ながら考えていた。

ヨット教室物語・第66話

教室に集まって来たおじさん、おばさんたち

は、ここのマリーナにヨットを停泊している

オーナーさんたちで、ロープワークの実習が

終わったら、生徒たちは、彼らのヨットに振

り分けられる予定になっていた。

「隆!私が生徒さんたちを迎えに行って、後

で、そっちに連れて行くね」

「わかった!頼む」

ストレートの長い髪のお姉さんは、教室の窓

から見えるヨットのデッキで作業している男

性に声をかけていた。

ヨット教室物語・第65話

初めて教わるヨットのロープワークに、生徒

たちは皆、ロープ結びに苦労していた。

教室の先頭にいた先生だけでは、生徒たち皆

のロープワークを見てあげられず、集まって

来たおじさん、おばさんたちも生徒たちのや

っているロープワークをそれぞれ手伝ってい

たのだった。

「上手に結べるようになれたじゃないの」

香代は、ストレートの長い黒髪のお姉さんが

すっかり気に入ってしまって、彼女に全て教

わってしまっていた。

ヨット教室物語・第64話

「そっちは、こうやって下から通すと、うま

く結べるわよ」

ストレートの長い黒髪のお姉さんは、香代に

優しく結び方を教えてくれた。

香代が気づくと、午前、午後の座学の間は、

教壇の先生とヨット教室の生徒たちしかいな

かった教室に、他にもたくさんのおじさん、

おばさんたちが集まって来ていた。

香代が、髪の長いお姉さんにロープワークを

教わったように、教室の周りに集まって来た

人たちも、生徒達に結び方を教えていた。

ヨット教室物語・第63話

座学の講習は、教本を片手に先生の話を聞い

ていて、だいたい内容を理解できていた香代

だったが、いざロープワークの実習になると

なかなかうまくロープを結べずにいた。

「うまく結べる?ヨットのロープの結び方っ

て本当に難しいよね」

香代がロープの結び方で苦労していると、そ

れを後ろで眺めていた長いストレートの黒髪

を胸の辺りまで垂らしたお姉さんが香代に話

しかけてきてくれた。

「そうそう、そこは上から通すのよ」

ヨット教室物語・第62話

香代は、あまりお腹も空いていなかったし、

バッグの中に持ってきたグミの袋を開けて、

それをつまみながら、午前中に教えてもらっ

た座学の内容を1人机で復習していた。

「午後の授業を始めましょうか」

教壇に先生が戻ってくると、午後の座学が始

まった。

午後は、1時間ぐらい教壇の先生の話す座学

を聞くと、その後は、生徒たちそれぞれに短

い長さのロープを3本ずつ配られて、そのロ

ープを使って、ロープ結びの実習になった。

ヨット教室物語・第61話

いつも学校の授業の成績もわりと優等生だっ

た香代は、初めて聞くヨットの知識でも教本

の内容を読みながら、座学の先生の話を聞い

ていると殆どの内容を理解できた。

「それでは、お昼休憩にしましょう。午後は

1時から始めます」

午前の座学の授業が終わって、教壇の先生も

お昼を食べに教室を出ていった。

生徒たちも、それぞれ教室を出て、近くのス

ーパーに行って、お昼の弁当などを買ってく

ると、マリーナの敷地内で食べていた。

ヨット教室物語・第60話

周りの人たちが隣の席の人たちとおしゃべり

をしている姿を眺めながらも、香代は眺めて

いるだけで話しかけられずにいた。

「それでは、座学を始めます」

50代ぐらいの先生が教室の先頭で挨拶をし

て、ヨット教室の座学が始まった。

「座学で使う教科書を配りますね」

まず最初に、コピー機でプリントされた教本

が生徒たちに配られた。香代のところにも教

本が配られて、香代は教本を読みながら、教

壇の先生の話に耳を傾けた。

ヨット教室物語・第59話

後ろの席から他の受講生たちの姿を観察して

いると、授業が始まるのを待ちながら、周り

にいる同世代の生徒たち同士で仲良くおしゃ

べりをしていた。

お友達同士でヨット教室に応募して来たのか

と思うぐらい仲良くおしゃべりしていたが、

話を聞いていると、みな特にお友達同士って

わけではなく、たまたまヨット教室で一緒に

なった人たちが多いようだった。

「私も、あんな風に話しかけられたらな」

香代は、周りの皆を眺めていた。

ヨット教室物語・第58話

香代は、男性スタッフに案内されて、クラブ

ハウスのハウスの表に付いている階段を上が

って、2階の部屋に入った。

クラブハウスの中には、既にこれからクルー

ジングヨット教室を受講しようという人たち

でいっぱいだった。

「すごい人の数」

自分と同じ20代ぐらいの人もいたが、30

、40、50代ぐらいの人もいて、年代は様

々だった。女子と男子では、7:3ぐらいで

女性の参加者の方が多かった。

ヨット教室物語・第57話

「大丈夫かな、私」

横浜マリーナの正面には、大勢の人たちが集

まっていた。自分と同じクルージングヨット

教室に参加するために来ていた人たちのよう

だった。こんなに大勢の人たちの姿を見て、

既に、香代の心臓はドキドキしていた。

入り口に立っていた男性スタッフに、クルー

ジングヨット教室の案内ハガキを見せた。

「クルージングヨット教室は、クラブハウス

2階で開催されます」

男性スタッフは、香代に伝えた。

ヨット教室物語・第56話

鈴木香代は、短大を卒業後、会社に就職して

OLをしていた。会社では仕事が終わるとす

ぐに家へ直行して、お休みの日もずっと家の

中で過ごしていることが多かった。

そんな性格の香代だったが、なんとなく自分

を変えてみたい、何か新しい挑戦をしてみた

いと考えていた。そんな香代が広報誌で目に

したのが、横浜マリーナで開催されるクルー

ジングヨット教室の生徒募集の告知だった。

ヨットなんて一度も乗ったことがなかったが

教室に応募してみたら当選したのだった。

ヨット教室物語・第55話

日曜日の朝、鈴木香代は横浜マリーナにやっ

て来ていた。

中学、高校とも女子バスケット部だったし、

運動は苦手というわけではないのだが、人見

知りで賑やかな場所で過ごすことが苦手だっ

たため、あまり外に出かけることもなく過ご

してきた彼女だった。

「私って、人と話すのがどうしても苦手だな

ヨットでも始めたら得意になれるかな」

そう思って、横浜市の広報誌に載っていたヨ

ット教室に応募してみたのだった。

ヨット教室物語・第54話

冬の間ずっと隆と一緒に乗っていたおかげで

いちおう中央の一番背の高いメインセイルと

先頭についているジブセイル、最後部の操縦

席の近くにあるミズンセイルを上げてヨット

を動かすっていうことぐらいは、麻美子でも

理解できるようにはなっていた。

でも、基本的にヨットのことなんて全然わか

らなかった。

「こんな私が、ヨットに乗り続けていても仕

方ないじゃないの」

麻美子は、そう考えていたのだった。

ヨット教室物語・第53話

「そうだね。いよいよ、麻美子も先輩クルー

になる日が来たんだね」

「先輩クルーって・・」

隆は、新しくヨット教室の生徒さんが来た後

も、麻美子が一緒にヨットへ乗り続けると未

だに思い続けているみたいだった。

「麻美子が生徒達に教えてやってくれよ」

だが、麻美子自身は、新しいクルーが来て、

隆と一緒に毎週ヨットに乗ってくれるように

なったら、自分はもうヨットに乗るのはやめ

ようと考えていた。

ヨット教室物語・第52話

「大学の時、夏休みで一緒に行ったサンフラ

ンシスコ、モントレーの海で見たラッコから

つけたの?」

麻美子は、隆に聞いた。

「まあ、それもあるけど」

ラッコのように海の上でのんびりプカプカ浮

かんでいたいという隆の思いから船名を「ラ

ッコ」にしたのだと説明した。

「先週、隆が言っていた新しいクルーが来る

っていうのは、来週のヨット教室の生徒さん

のことだったの?」

ヨット教室物語・第51話

「隆くんのところは、ヨット教室の生徒さん

を取るの初めてじゃないの」

「はい、まだラッコ自体が1月に進水したば

かりのヨットですしね」

隆と市毛さんは、ラッコのキャビンの中でお

酒を飲みながら話していた。

隆のヨット、フィンランド製のナウティキャ

ット33という33フィートのモーターセー

ラー、セーリングクルーザーは、船名をラッ

コといった。

「初の生徒さんか」

中古車輸出・第6話

あとは、社長と経理を担当している社長の奥

さんというのが、今井ゆみが就職した横浜の

貿易会社スタッフ全てだった。

「シャラン、オファー届いているよ」

今井ゆみは、輸出部門に配属して、会社の海

外バイヤー向けホームページを制作し運用し

ていた。会社のホームページへのアクセスを

増やして、海外バイヤーからのオファーを増

やし、営業スタッフ達が車の注文をより多く

取れるようにしてあげるのが、彼女の仕事、

ミッションであった。

中古車輸出・第6話

あとは、社長と経理を担当している社長の奥

さんというのが、今井ゆみが就職した横浜の

貿易会社の総メンツだった。

今井ゆみは、輸出部門に配属して、会社に海

外バイヤー向けのホームページを制作し運用

していた。会社のホームページへのアクセス

中古車輸出・第5話

輸出部門には、日本人の部長1名に海外バイ

ヤー達と商談して車の注文を受ける営業とし

て外国人スタッフが5名、そこへ今井ゆみが

専任のウェブデザイナーとして1名加わった

形だった。

育成部門には、特に部長は在籍しておらず、

3名の日本人スタッフがウェブデザイナーと

して在籍していた。3名全てがウェブデザイ

ナーなのは、中古車輸出業者の育成方法がオ

ンラインによる通信教育を採用しているから

だった。

中古車輸出・第4話

今井ゆみが就職した横浜の貿易会社には、輸

出部門と育成部門の2部門があった。

今井ゆみが配属となったのは、輸出部門で日

本の自動車を海外のバイヤーへ実際に輸出し

ている部署だった。

一方、育成部門の方は、今井ゆみが配属とな

った輸出部門で実際に行なっている「中古車

輸出業」という職業を応募してきた受講生た

ちに教えている部署だった。

会社が成長していくための輸出部門と将来の

中古車輸出業者を育てる育成部門だ。

ヨット教室物語・第50話

横浜マリーナのクルージングヨット教室の生

徒募集は毎年、神奈川県や横浜市の広報誌に

て公募されている。

応募してきた生徒たちは、スクール初日だけ

マリーナのクラブハウスで座学、基本的なヨ

ットの乗り方について職員から学んだあと、

隆たちマリーナにヨットを停泊しているヨッ

トで生徒の受け入れを希望しているヨットに

それぞれ振り分けられて次の週からは各艇の

オーナーさんたちの元でヨットに乗艇し、半

年間ヨットの乗り方を学ぶのであった。

ヨット教室物語・第49話

「隆くんのところは、ヨット教室の生徒さん

何人か取るつもりなの?」

「一応、そのつもりです」

隆は、市毛さんに答えた。

隆がヨットを停泊している横浜の公営マリー

ナでは、毎年春に「クルージングヨット教室

」と称して、横浜市民の中からヨットを習い

たいという大人たちを募って、春から秋まで

半年間のヨット教室を開催していた。

生徒たちは、マリーナに保管しているヨット

に乗船して、ヨットを学ぶのだった。

ヨット教室物語・第48話

隆たち、横浜マリーナに停泊しているヨット

たちは、お昼の時間になると、そこへやって

来て、もう使われていないプール脇にヨット

を舫うと、そこの台座でお昼ごはんを料理し

皆で食事を楽しんでいた。

このプールが意外に頑丈でしっかりしている

ため、皆でヨットを止めて上陸して楽しむの

には、ぴったりの施設だった。

現在、横浜の貯木場は横浜ベイサイドマリー

ナとして生まれ変わって、イルカのプールは

その沖にオブジェとして舫われていた。

ヨット教室物語・第47話

横浜の金沢港沖の貯木場には、木材は浮かん

でいないが、その代わりに昔、横浜で開催さ

れた万博、横浜博覧会の時に使用されていた

六角形のステージ型プールが舫われていた。

博覧会では、プールの中でイルカが飛び跳ね

ていて、博覧会の入場者たちに芸を見せて楽

しませていた場所だった。

「そうですね、来週はヨット教室ですね」

「もう春だものね」

博覧会で使い終わったプールは、役目を終え

て貯木場跡地で静かに舫われていた。

ヨット教室物語・第46話

「来週から今年のヨット教室が始まるね」

お昼、隆が自分のヨットを貯木場に入れると

先に泊まっていたフェリックスのヨットのオ

ーナー、市毛さんが隆に話しかけてきた。

貯木場というのは、港内の海外から輸入した

木材などを海上に保管しておく場所のことで

そこの海上には、たくさんの木材が浮かべら

れていた。というのが、本来の貯木場の姿な

のであろうが、ここ横浜の貯木場は、貯木場

跡地みたいなところで海上には流木がちょっ

ことしか浮かんでいなかった。

ヨット教室物語・第45話

「麻美子も先輩になるのか」

「先輩クルーって、私、ヨットのことは全然

わからないんだけど」

麻美子は、隆に答えた。

「でも、メインセイルもジブセイルも上げら

れるようになっただろう」

「他に乗ってくれる仲間が増えたら、私はも

うヨットに乗りに来なくても平気よね」

「なんで?」

「なんでって、私が一緒に乗らなくても、隆

は彼らと一緒に乗れば良いでしょう」

ヨット教室物語・第44話

横浜マリーナの中を、ヨット専門の暖かいオ

イルスキンを着て歩き回っていると、格好だ

けは一人前のヨットウーマンに見えている麻

美子ではあった。

そして、半年があっという間に過ぎて、季節

は春を迎えて、せっかく初めて隆に買っても

らったヨット用のオイルスキンも着ていると

暑すぎる季節になってきた。

「そろそろ、うちのヨットにも麻美子以外の

クルーも来るようになるから、そしたら、麻

美子も先輩クルーだね」

ヨット教室物語・第43話

「こんなに高くないの?」

「いいよいいよ、俺といつも一緒に乗ってく

れているし。麻美子が毎週寒そうに乗ってい

るから暖かく乗ってほしいし」

「隆は、社長さんでお金持ちだものね」

麻美子は、隆の頭を小突きながら、笑顔で笑

った。たまには、隆に甘えて、このぐらいの

もの買ってもらっても良いか。

その7万円もする暖かいオイルスキンを着て

ヨットに乗っていると、寒い冬の海の上でも

暖かく過ごせて快適になった。

ヨット教室物語・第42話

麻美子が、街中で皆がよく着ている一般的な

コートで、冬の海のヨットに乗っていると、

それでは寒いだろうと隆が、自分のお金でヨ

ット専門の風を通さない暖かいオイルスキン

を購入してくれることになった。

「これって7万円もするよ!」

中目黒のマリンショップへ買いに行った時、

隆が購入してくれようとしていた暖かいオイ

ルスキンに付いていた値札を確認して、麻美

子は驚いていた。

「どうせならしっかりしたものが良いよ」

ヨット教室物語・第41話

「おはよー、麻美ちゃん」

冬の間ずっと毎週のように、横浜のマリーナ

に通っていると、フェリックスの市毛さん以

外にも、横浜のマリーナにヨットを停泊して

いる他のオーナーさんたちともすっかり顔見

知りになってしまっていた。

麻美子は、街中で皆がよく着ている一般的な

コートを着て、冬の海のヨットに乗っていた

「そのコートじゃ寒いだろう。今度、俺が暖

かいコートを買ってやるよ」

「これって7万円もするよ!」

ヨット教室物語・第40話

「私、別にクルーではないんだけど」

「もうクルーみたいなものじゃん。俺と一緒

にうちのヨットに乗っているんだから」

それから、寒い冬の間ずっと毎週のように麻

美子は、隆のヨットに乗っていた。

「あんたも一緒に乗ってあげなさいよ」

麻美子は、母から隆が1人で海にヨットを出

していて何かあったらいけないから一緒に乗

りなさいとも言われていたのだった。

そんなわけで、この冬は寒い中、毎週のよう

に横浜のマリーナに通うこととなった。

ヨット教室物語・第39話

隆が麻美子のことを市毛さんたちに紹介して

くれていた。

「いつも隆がお世話になっています。隆のこ

とをこれからもよろしくお願いします」

いつの間にか、麻美子は隆のヨットのクルー

にされてしまっていた。

ヨットのクルーとは、そのヨットのオーナー

と一緒に乗っている仲間、船員のことだ。

「クルーってそういう意味だったの」

麻美子は、フェリックスの人たちが帰った後

に、隆からクルーの意味を教わった。

ヨット教室物語・第38話

「サラダの前に、何かビールのつまみになる

ようなものを作ってくれるかな」

隆は、麻美子に命じた。

麻美子は、船長の隆に言われて、既に作り始

めていたサラダを中断して、冷蔵庫の中から

つまみになりそうなものを作って、お皿に盛

り付けてテーブルに出した。

「うちのクルーの麻美子です」

麻美子が、リビングにいる市毛さんたちに

おつまみの盛り付けられたお皿を持って行く

と、隆が麻美子のことを紹介した。

ヨット教室物語・第37話

隆の後ろからキャビンの中に入って来たのは

隆のヨットの真横に横付けした同じ横浜のマ

リーナに保管しているヨットのオーナーとク

ルーたちだった。

「フェリックスの市毛さん」

隆は、隣に横付けしたヨットのオーナー、市

毛さんのことを麻美子に紹介した。

「何か飲みますか?」

そして、隆はキッチンの冷蔵庫から缶ビール

を取り出すと、リビングのソファに腰掛けて

いる市毛さんたちに手渡した。

ヨット教室物語・第36話

「結局、私が作らないとだめか」

麻美子は、隆がいなくなったキッチンの中に

入ると、お鍋にお湯を沸かして、パスタを茹

でる準備を始めた。

パスタを茹でている間に、隆が出してくれた

生野菜を切り刻んでサラダを作った。

「あ、麻美子が作ってくれていたんだ」

キャビンの外から戻って来た隆は、料理して

いた麻美子に声をかけた。

「私が作るしかないじゃないの」

麻美子は、隆の頭を小突いた。

ヨット教室物語・第35話

「お腹空いたよね、お昼ごはんにするよ」

船内に入って来た隆が、麻美子に言った。

「今日のお昼は、生野菜とパスタがあるから

サラダとスパゲッティにしようか」

ヨットのキッチンにある食料庫から野菜とパ

スタを取り出している隆の姿をみて、隆が料

理してくれるごはんなんて初めて食べるから

ちょっと楽しみだなと麻美子は期待していた

が、しばらくパスタのパッケージに書いてあ

る説明文を読んでいた隆は、諦めたようにキ

ャビンの外に出て行ってしまった。

ヨット教室物語・第34話

隆がエアコンのスイッチを入れてくれたらし

く、しばらくするとキャビンの中はポカポカ

と暖かくなってきた。

「ありがとう、隆」

麻美子がキャビンの中にあるソファに腰掛け

て暖まっていると、ヨットは金沢沖の漁港に

入港して、そこの岸壁にロープで舫われた。

隆のヨットが岸壁に舫われ停泊すると、隆の

ヨットと同じ横浜のマリーナに停泊している

ヨットがやって来て、隆のヨットの横に横付

けで停泊した。

ヨット教室物語・第33話

「隆、キャビンの中に入っても良いかな」

ヨットが海に出航してからずっと船上のデッ

キにいた麻美子だが、さすがに海の寒さに耐

えきれなくなってきた。

隆に言ってキャビンの中に逃げこんだ。

「船内には、暖房も付いているんだよ」

一緒にキャビンの中に入って来た隆は、操舵

室の計器板にあるスイッチを入れると、自分

はまたキャビンの外に出て、セイルの操作に

戻っていた。

「なんか部屋が暖かくなってきた」

ヨット教室物語・第32話

隆がそれぞれのセイルを上げるため、セイル

に付いているロープを引っ張ったり出したり

して調整すると、セイルが上がり風を受けて

ヨットは走り出した。

「うわ、ヨットが走ってる」

「エンジンでなく風だけで走ってるんだぞ」

生まれて初めてヨットに乗る麻美子には、セ

イルをどう出したり引っ張ったりすれば、ヨ

ットが走り出すのか全くわからなかった。

ただ、隆がセイルを操作しているのを黙って

眺めているしかなかった。

ヨット教室物語・第31話

「それはさすがに心配だから、私も一緒に乗

りに行くわよ」

麻美子は、隆に伝えて、いま寒い海の上のヨ

ットにいることを少し後悔していた。

「さあ、セイルを上げよう」

隆は、マストの根元に移動すると、ロープを

引っ張ってセイルを上げていた。

セイルは全部で3種類あって、船体の前方か

ら順番にジブ、メイン、ミズンという名称の

セイルが付いていた。隆は、それらのセイル

を順番に上げようとしていた。

ヨット教室物語・第30話

麻美子は、ヨットに乗るつもりはなかったの

だが、隆が進水したばかりの新しいヨットに

1人で乗るというので、何かあったら心配な

ので一緒に乗ることにしたのだった。

「まだ進水したばかりでクルーもいないし、

来週はシングルで乗るよ」

シングルというのは、ヨットの専門用語では

シングルハンドの略で、1人の手、たった1

人でヨットに乗るという意味だ。

「え、1人で乗る気なの」

麻美子は、隆に聞いた。

ヨット教室物語・第29話

「1人じゃないよね?誰かヨットのお友達と

出るんでしょう?」

「今のところは、麻美子と2人だけかな」

「私は寒いから出ないわよ」

翌週

「うわ、寒いっ」

佐藤麻美子は、海に出航した隆のヨットの上

でジャケットの前を止めながら呟いた。

麻美子は、本当は寒いし冬のいまの季節は、

ヨットに乗るつもりはなかったのだが、隆に

誘われて、ヨットに乗っていた。

ヨット教室物語・第28話

「行こうと思えば、どこでもいくらでも行け

るさって話なだけだよ」

隆は、船内のソファに腰掛けながら、麻美子

に答えた。

「なんだ、そういうことね」

「今週は、船内で寛いだだけだけど、来週は

ヨットを海に出してセーリングしよう!」

「この寒い中、海に出る気なの?」

「もちろん!ヨットは、むしろ冬の方が風が

あって良い季節なんだよ」

隆は、麻美子に答えた。

ヨット教室物語・第27話

麻美子は、いつも隆が自分の家に遊びに来た

とき、利用しているジムのサウナルームを思

い浮かべながら、隆に返事した。

「フィンランド製のヨットだから、標準でサ

ウナまで完備しているんだ」

「サウナも、ベッドもキッチンもトイレも

リビングルームまであって、ここで住めそう

じゃないの」

「うん。船内で生活して、世界じゅうどこへ

だって行けるさ」

「ヨットで世界じゅうに行くつもりなの?」

ヨット教室物語・第26話

麻美子は、キャビン後部の部屋に入ってみる

と、大きなベッドが備わっていて、ベッドの

脇には鏡台まで備わっていた。

その手前の扉を開くと、シャワールーム付き

のトイレ、バスルームが付いていた。

「このバスルームは、フィンランド製だから

サウナも付いているんだぜ」

隆は、バスルームのスイッチをいじって、サ

ウナの電源を入れてみせた。

「もう中目黒のジムに在るサウナルーム使わ

なくても良くなるわね」

中古車輸出・第3話

今井ゆみは、入社するとすぐ、まずは海外の

お客様がインターネットから日本の中古車を

欲しいと会社にオファーしてもらえるように

会社の英語版ホームページを作りました。

いろいろな日本に在る魅力的な自動車、中古

車を写真付きでホームページにたくさん掲載

しました。さらに、その車の魅力などを各国

語の解説付きで紹介しました。

英語だけでも十分ですが、フランス語、スペ

イン語、ポルトガル語、ドイツ語、中国語や

ロシア語があっても良いかもしれません。

中古車輸出・第2話

今井ゆみは、美大を卒業して、就職活動をし

ていた際に、そんな仕事をしている横浜の貿

易会社に内定して、そこへウェブデザイナー

として就職しました。

中古車輸出業のお客さんは海外にいるため、

そんな海外のお客様にうちの会社で車を輸出

していますよってことを知ってもらうために

はホームページは必須ツールになります。

そのホームページを制作するスタッフとして

帰国子女のために多少は英会話も理解できる

今井ゆみは採用されたのでした。

中古車輸出・第1話

車を輸出している会社があります。

世界中には、中古でも良いから日本製の自動

車を欲しいという方がたくさんいます。

そんな世界の方々に、日本の中古車を中古車

オークション会場から仕入れて、自動車専用

船に船積みして、届けてあげるのが「中古車

輸出業」という職業になります。

世界じゅうのありとあらゆる国々の人たちと

グローバルに交流して、活躍できるのが魅力

な職種になります。

そこが、この物語の舞台です。

ヨット教室物語・第25話

「いや、海の上のヨットでは、俺だって自炊

ぐらいするさ」

「そうなんだ。どんなお料理するの?」

麻美子は、隆が料理している姿などぜんぜん

想像がつかなかった。

「船長の俺が作らないとしても、クルー(船

員)の誰かが作るさ」

「隆のヨットってクルーなんかいるんだ」

「今は、まだ進水したばかりでいないけど、

そのうち集まってくるさ」

「結局、自分では作らないのね」

ヨット教室物語・第24話

「ほら、台所もちゃんと付いているんだよ」

隆は、ヨットのキャビン、一段下に下がった

ところにあるキッチンの前に立って、麻美子

に説明していた。

「隆には、台所なんて必要ないじゃないの」

学生時代、大学に通うため田舎から出てきて

以来、1人暮らしの隆は、いつも外食ばかり

で自炊などしたことが全くなかった。そのこ

とを知っている麻美子が返事した。

「いや、海の上のヨットでは、俺だって自炊

ぐらいするさ」

ヨット教室物語・第23話

船内は特に暖房がかかっているわけではない

のだが、冷たい海からの風が入ってこないお

かげで暖かかった。

「あ、暖かい」

麻美子は、キャビンの中に入ると、思わず叫

んでしまっていた。

「本当、中は暖かいな」

隆が完成した自分のヨットを見に行こうとい

うから、ついてきたものの冬の海の岸壁は寒

くてたまらなかったのだった。

「コーヒーでも入れようか」

ヨット教室物語・第22話

一般的なセーリングクルーザーのデッキは、

基本的に真っ平らで、そこへ穴ぐらの入り口

みたいな扉が付いており、そこからステップ

を下ってキャビン、ヨットの船内へ入る。

隆のヨットは、モーターセーラーというタイ

プのヨットで、船上のデッキ中央部にパイロ

ットハウスと呼ばれる四方を窓ガラスで囲ま

れた操舵室が付いていた。

その操舵室の両サイドに開き戸タイプのドア

が付いており、そのドアを横に開けて、そこ

からキャビンの中に入れた。

ヨット教室物語・第21話

そのヨットが、フィンランドの港から貨物船

に載せられて、横浜の港まで輸入され、こう

して今、隆が所属している横浜のマリーナに

到着したのだった。

隆は、そのヨットを目前に眺めて感慨深そう

だった。

季節は12月初頭、海から流れてくる風は冷

たかった。隆の横に並んで立っていた佐藤麻

美子は、寒くて早くマリーナの暖かいクラブ

ハウスの中に戻りたかった。

「隆、会社作ってから頑張っていたものね」

ヨット教室物語・第20話

ヨットレースで常に優勝を目指せるような速

いヨットではないが、頑丈で重たい船体は荒

れた海の中でのどっしりと構え、安心して快

適なクルージングが楽しめるヨットだった。

フィンランドの造船所に建造をオーダーして

から、出来上がるまで隆自身も何度もフィン

ランドまで飛んで建造中のマイボートの状態

を確認していた。

建造途中で、あそこはああしてくれ、こっち

にはこの装備を追加してくれといろいろ注文

していた隆のこだわりのヨットだった。

ヨット教室物語・第19話

今井隆のマイボートは、フィンランド製のナ

ウティキャット33というヨットだった。

ナウティキャットは、フィンランドにあるヨ

ット専門の造船所で、キャビンのインテリア

にフィンランドの木材を多用した豪華な造り

売りのヨットだった。

外観の特徴は、大きなパイロットハウスと呼

ばれる操舵室が船体の中央部分に配されたモ

ーターセーラーという部類のヨットだ。その

船体は、頑丈で重く造られていて、ヨットレ

ースには不向きなヨットだった。

ヨット教室物語・第18話

麻美子は会社の経理担当として転職した。

「麻美子、本当に助かるよ」

佐藤麻美子のフォローもあり、今井隆の起業

した会社は毎年、順調に売上げを伸ばしてい

き、今では従業員を5、60人抱えるまでの

中規模の会社にまで成長していた。

「温かい」

佐藤麻美子は、ヨットのキャビンでお湯を沸

かして、隆とコーヒーを飲んでいた。

「本当、温かいな。外が寒すぎるよな」

「そうでしょう!隆もそう思うでしょう」

ヨット教室物語・第17話

「なんだよ、役所に提出する書面作りって以

外に面倒で難しいよな」

「もお!隆、本当に不器用よね」

佐藤麻美子は、書類作りに苦労している今井

隆をみて言った。

今井隆は、いろいろ面白いアイデアは出すア

イデアマンではあったが、役所に提出する際

の会社の書面作りとかは下手くそだった。

そんな隆がパソコンで何度も書類を作り直す

姿を見ていられなくなった佐藤麻美子も、隆

の起業したIT会社に転職したのだった。

ヨット教室物語・第16話

その父親の姿を幼い頃からみてきた佐藤麻美

子は、今井隆がIT会社を起ちあげる際、会

社の起業を色々手伝ってあげていた。

「隆の会社の起業は手伝ってあげたけど、そ

の後は、ちゃんと自分でやってね」

佐藤麻美子は、今井隆に伝えた。

佐藤麻美子自身は、特に自分が就職したその

会社を辞める気は全くなく、最初の会社の起

ち上げ時だけ今井隆の会社を手伝ってあげた

つもりでいたのだった。

「後は、隆1人で頑張ってね」

ヨット教室物語・第15話

人気サイトのおかげで、今井隆は、せっかく

就職できたその会社を辞めて、自分のIT会

社を起ちあげた。

プログラミングなんて全くわからず、サイト

の作り方も何もわからなかった今井隆は、会

社の起業の仕方も何もわからなかった。

「どうやって会社って起業できるのかな」

佐藤麻美子の父親は、東京の中目黒で輸入雑

貨の会社を起業した自営業者で、アメリカの

サンフランシスコに支店まで作り、単身赴任

でアメリカへ移住していた実績があった。

中国観光客激減も台湾韓国客で訪日市場安定

中国人観光客が大幅に減少する中でも、訪日

観光市場は安定した推移を見せている。観光

庁によると、台湾と韓国からの訪日客数が増

加し、落ち込みを補う形となった。特に地方

都市ではリピーターの割合が高まり、買い物

中心から体験型観光へと需要が変化している

宿泊業界では客層の分散が進み、特定国への

依存度が低下。専門家は「市場は量から質へ

移行している」と分析し、今後は地域文化や

日常体験を重視した観光戦略が鍵になると指

摘している。

オリンピック閉会式で閉幕

明日はオリンピック閉会式が開催されます。

約2週間にわたり繰り広げられた熱戦の締め

くくりとして、各国の選手団が一堂に会し、

平和と友情を象徴するセレモニーが行われま

す。競技で見せた真剣な表情とは違い、笑顔

で交流する選手たちの姿も閉会式の見どころ

の一つです。また、次回開催都市への引き継

ぎセレモニーも予定されており、新たなオリ

ンピックへの期待が高まります。大会期間中

に生まれた数々のドラマを振り返りながら、

感動のフィナーレを迎えます。