ヨット教室物語・第282話

「いらしゃいませ」

お店の女将が、店内から麻美子たちのことを

お出迎えしてくれた。

「すごいな、貸し切りですか?」

隆と陽子も、お店の中に入ってきた。

麻美子たちは、もう店内の和室のテーブルに

座っていた。広い和室の中央に、大きなテー

ブルが置かれていた。テーブルの周りに座布

団が敷かれていて、そこへ麻美子たちが座っ

ているのだった。

ヨット教室物語・第281話

麻美子は、雪に返事した。

「むしろ、陽子ちゃん、あんなおじさんの隆

といつも仲良くしてくれて、申し訳ないって

思ってしまうわ」

「そうなんだ」

瑠璃子は、麻美子に答えた。

「さあ、お店の中に入ろう!」

麻美子は、料亭の入り口のドアを開けて、店

内に入った。

「隆ー!お店の中に入るよ」

ヨット教室物語・第280話

「あれ、隆はどこに行ったの?」

麻美子は、周りを見渡した。

「お店の中へ先に入ってしまったのかな」

麻美子が、中庭をキョロキョロと見渡してい

ると、中庭の奥から隆と陽子が戻ってきた。

「あの2人、本当いつも一緒にいるわね」

仲良く談笑しながら、こちらに戻ってくる隆

と陽子の姿に気づいた。

「麻美ちゃん、もしかして焼いてる?」

「え、なんで?ぜんぜん焼いていないけど」

ヨット教室物語・第279話

「大丈夫。次から買い換えとか大きいものを

買う時は経理部長の私にぜんぶ相談するって

約束しているから」

麻美子は、香代の手を繋ぎながら、雪とお喋

りをしていた。

「建物の中庭も、すごく広い庭よ」

瑠璃子が、建物の奥にある中庭を走り回りな

がら、後から入ってきた麻美子達に叫んだ。

「本当、すごい豪華なお庭ね」

麻美子も、中庭に驚いていた。

ヨット教室物語・第278話

「あいつ、買い換える前って無駄に高価なス

ポーツタイプの輸入車に乗っていたから、そ

れを下取りに出したら、だいぶ予算が余った

のよ」

麻美子が、雪に説明した。

「それをクルージングの予算に回そうってこ

とになったのよ」

麻美子が言った。

「そうなんだ。隆さん、やっぱり輸入車の方

が良かったとか買い換えないかな」

ヨット教室物語・第277話

「どうして、こんな高そうな所に、私たちと

入ろうと思ったの」

「え、今回、大島に行くって隆から聞いてさ

せっかくだし、母からいつも聞いていたここ

で食べてみたいなって思っただけよ」

麻美子も、車から降りると、懐石屋の建物の

奥へ入りながら、雪に返事した。

「それにさ、ほら、車をたまご型の中古エス

ティマに買い換えたじゃない」

麻美子は、隆のことを指差した。

ヨット教室物語・第276話

「それは、きっとお金だけじゃないんでしょ

うね。都心でやったら、いくら儲かるとかじ

ゃなくて、この地で、この地のもので料理を

提供したいみたいなんじゃないの」

「さあ、お腹が空いた。お昼ごはん食べに入

ろうよ」

隆は、車を駐車場に停車させると、車を降り

て、陽子や瑠璃子と一緒に料理屋の建物の中

に入った。

麻美子も、雪と一緒に車を降りた。

ヨット教室物語・第275話

「さあ、懐石屋さんに行こうか」

隆は、エンジンをかけて車を出した。

「なんか、すごい厳かな正門の懐石屋さん」

雪は、隆の運転する車が懐石料理屋の正門を

くぐった時に感じていた。

「歴史のある由緒ある老舗の懐石料理屋さん

なんだってさ」

「なんで、そんなお店が大島にあるんだろう

東京辺りで営業した方が儲かるだろうに」

隆は、運転しながら麻美子に聞いた。

ヨット教室物語・第274話

「隆のバッグっていうか、お財布はここにあ

るじゃない」

麻美子は、自分のバッグの中にあるもう一つ

の財布を香代に見せた。

「これを隆に渡しておくと、落としたり無駄

遣いしたりするから、いつも私が持って管理

しているのよ」

麻美子は、隆のことを指差しながら、香代に

説明した。

「基本、俺は買い物しないし」

ヨット教室物語・第273話

「麻美子が食べたかった料理屋だから、今日

の昼は麻美子のおごりだよな」

「もちろん、うちの母からちゃんとお金もら

って来ているし」

麻美子は、隆に自分のバッグの中の財布を見

せながら答えた。

「そういえば、隆さんってバッグとか持って

いないの?」

助手席と運転席の真ん中に座っている香代が

麻美子のバッグの中を覗きながら聞いた。

ヨット教室物語・第272話

麻美子は、皆に言った。

「別に、そんな懐石でなくても、定食屋でも

大丈夫だったけど」

雪は、麻美子に答えた。

「麻美子が、そこの懐石を食べてみたかった

んだよな」

「そう、なんかうちの両親が新婚旅行で大島

に来た時に食べた懐石屋さんらしいんだ」

麻美子は、皆に説明した。

「思い出の懐石屋さんなんだ」

ヨット教室物語・第271話

「ミーアキャットもいるよ」

ミーアキャットたちが岩の上から2本足で立

ち上がって、こちらを眺めていた。

「お腹がすいたでしょう?」

麻美子は、リス村を出て車に乗ると、車の中

の皆に聞いた。

「うん、お腹が空いてきた」

「ここから割とすぐ近いところに、有名な懐

石料理屋さんがあるの。そこを予約してある

から、そこで食べましょう」

ヨット教室物語・第270話

「ウサギもいるんだな」

ヒマワリの種をぜんぶリスさんたちに上げて

しまった隆と香代は、ウサギたちのいる柵に

行って、ウサギたちに近くに生えていた草を

取ってあげていた。

「あっちにハムスターもいるよ」

「リス村っていっても、リスだけじゃないん

だな。いろいろな動物がいるんだな」

隆たちは、リス村の園内をあっちこっち動物

たちを見ながら、歩き回っていた。

ヨット教室物語・第269話

「噛まれたらどうするの」

麻美子は、隆と香代のことを叱った。

「お母さん・・」

麻美子の姿が、隆兄ちゃんと妹の香代を叱る

お母さんのように見えてしまったので、その

姿をみて陽子が思わず呟いていた。

隆と香代は、麻美子お母さんに叱られて、バ

ツが悪そうに、入り口でもらった皮のグロー

ブを自分の手に着用していた。

「そう、ちゃんと付けなきゃだめ」

ヨット教室物語。第268話

「かわいいな」

隆と香代が、自分たちの手の上でヒマワリの

種を食べてくれるリスに喜んでいた。

「ちょっと、あんたたち!素手であげて噛ま

れたらどうするのよ!」

麻美子が、素手でリスに餌をあげている隆と

香代の頭をポンと叩いて叱った。

「でも、大丈夫だよ。こいつら良い子だから

噛んだりしないよ」

「噛んだりしないよじゃないのよ!」

ヨット教室物語・第267話

麻美子は、入り口の入場券売り場で皆の分の

入場券を買いに行きながら答えた。

「餌をあげるときは、こちらのグローブを必

ず着用して下さいね」

入り口の案内人が、皆に皮のグローブと餌の

ヒマワリの種を1つずつ手渡してくれた。

「このヒマワリの種をあげられるのか」

隆と香代は、入り口でもらったヒマワリの種

をやって来たリスに差し出した。

「食べてくれた!」

ヨット教室物語・第266話

「え、大丈夫よ」

陽子は、麻美子が心配しないように答えた。

「っていうか、そういえば私だけ、昨日の晩

隆さんとお風呂入りに行っているもの」

「そうだったわね」

麻美子も、2人がお風呂に行っていたことを

思い出していた。

「髪の話は良いんだけどさ、リス村の中には

入らないのか?」

「入りますよ」

ヨット教室物語・第265話

雪が髪の長い2人に聞いた。

「長いといっても、私の髪は陽子ちゃんほど

には長くないけどね」

瑠璃子の髪は、肩にかかるぐらいだったが、

陽子の髪は胸の辺りまで伸びていた。

「そうよね、陽子ちゃんは髪が長いものね」

麻美子は、自分の肩ぐらいまで伸びてる髪に

触れながら、陽子に言った。

「今夜は、どこかでお風呂に入らないと、陽

子ちゃんの頭痒くなちゃうよね」

ヨット教室物語・第264話

なので、一昨日の夜もお風呂に入ってない。

「そういえば、私も一昨日、会社の仕事が終

わって直行してるから、お風呂入っていなか

ったわ」

雪も、自分が一昨日からお風呂に入っていな

い事に気づいた。

「私なんか、髪の長さがベリーショートだか

ら良いけど、陽子ちゃんは胸の辺り、瑠璃ち

ゃんも髪が肩の下まで長いから、お風呂入っ

ていないと落ち着かないんじゃないの」

ヨット教室物語・第263話

「私も、入浴の準備してきてないし、入らな

くても良いかな」

陽子も、麻美子に返事した。

「でも、お風呂はちょっと入りたいかも。昨

日もお風呂に入っていないし」

雪が言った。

「確かに!私なんか一昨日からお風呂入って

いないよ」

瑠璃子は、一昨日の夜は、会社の仕事が終わ

って真っ直ぐ横浜マリーナに直行していた。

ヨット教室物語・第262話

隆は、車を駐車場に停めると、運転席から降

りながら、麻美子に聞いた。

「温泉?大島って温泉なんかあるの?」

「温泉あるよ!さっきの三原山は活火山」

隆は、麻美子に言った。

「温泉は、私の頭には無かったな。温泉に行

きたい人いる?」

麻美子は、ラッコのメンバー皆に聞いた。

「温泉は、私は別にいいかな」

瑠璃子が答えた。

ヨット教室物語・第261話

「大島リス村」

三原山のあとにレンタカーでやって来たのは

大島リス村だった。

「リスがいるの?」

香代は、隣の助手席に座っている麻美子に聞

いた。

「うん、リスがいっぱいいるところ」

麻美子は、香代に答えた。

「そういえば、リス村も良いんだけど、温泉

とかは行かないの?」

ヨット教室物語・第260話

隆が後ろを振り向くと、麻美子と香代が観光

用の馬の背中に乗って、歩いていた。

「あ、いいな」

隆は、馬に跨っている麻美子と香代を羨まし

そうに眺めていた。

「隆、帰りは、ここで代わろうか」

麓の溶岩の隙間にできた道を突き当たりまで

馬に乗って行くと、麻美子がそこで馬から降

りて、隆と交代しようと言ってくれた。

帰りは、駐車場まで隆と香代が馬に乗った。

ヨット教室物語・第259話

「はい、その先の駐車場に車を停めて」

麻美子に言われて、隆は車を麓にある駐車場

に停車した。

皆は、車を降りると、麓のところにできてい

た通路を歩いていた。

「すごい溶岩ね」

雪は、道の脇に落ちている溶岩を拾い上げて

眺めていた。

「隆、ヤッホー!」

皆が歩いている後方で、麻美子の声がした。

ヨット教室物語・第258話

「うん」

麻美子は、隆に頷いた。

「なんか真っ黒な岩ばかりね」

車が三原山の麓辺りまでたどり着くと、周り

の景色が黒い溶岩だらけになった。

「噴火の後なんだ」

「まだ三原山は噴火しているじゃん」

隆が、車窓から見える三原山の頂上を指差す

と、山の頂上からは、未だに煙がモクモクと

上がっていた。

ヨット教室物語・第257話

真ん中には、香代と瑠璃子が座って、最後部

に雪と陽子が座った。

「そこを右ね、その先を左折」

隆は、これからどのコースでどう島を周るの

か知らなかったが、ぜんぶ行き先を麻美子が

把握、指示してくれるので、なにも心配せず

に、ただ麻美子に言われるまま走っていた。

「最初の目的地って三原山なの」

車は、海沿いからどんどん島の中央、内陸に

向かってずっと登っていた。

ヨット教室物語・第256話

港からアクエリアスが見えなくなるまで見送

ってから、レンタカーに乗車した。

「私、道をナビゲーションするから助手席に

座るね」

隆が運転席に座ると、反対側の席から麻美子

が助手席に乗り込んだ。

「今日は、ナビぜんぶ麻美子にお任せか」

「うん、任せて」

車は、サザエさんたちがよく乗車している日

産セレナで、6シーターだった。

ヨット教室物語・第255話

「確かに、その方が横浜に近づくから、明日

の帰りは楽ですね」

隆は、中村さんに返事した。

「それじゃ、うちらはアクエリアスが出航す

るの見送ってから、島内観光に出ようか」

隆たちは、岡田港への移動で出航するアクエ

リアスを見送ってから、レンタカーで島内観

光に出かけることになった。

岸壁から出航するアクエリアスの舫いロープ

を外して、出航を見送った。

ヨット教室物語・第254話

「レンタカーを借りているので、皆で島内観

光してこようと思っています」

隆は、中村さんに答えた。

「それじゃ、今日は1日じゅう、ラッコの船

は出さないんだ」

「ええ」

「うちらは、明日の帰りが楽になるから、今

日のうちに波浮を出て、大島北端の岡田港に

移動しようと思ってるんだけど」

中村さんは、隆に言った。

ヨット教室物語・第253話

朝、起きると、アクエリアスのクルーたちも

皆、ラッコのメインサロンにやって来て一緒

に朝食をしていた。

アクエリアスのクルーたちが、ラッコのメイ

ンサロンで朝食を食べていたので、瑠璃子や

陽子たちラッコのクルーたちは、パイロット

ハウス一段下がった所のダイニングで朝食を

食べていた。

「隆くんたちは、今日の予定はどうするつも

りなの?」