松浦さんたちは、ラッコのキャビンの快適さ
を褒めていた。
「そんなに良かったら、ぜひまたラッコに乗
りに来てくださいね」
麻美子は、松浦さんたちに伝えた。
「熱燗にしない?」
麻美子が、雪に聞いた。
「いいね、熱燗にしよう」
雪だけでなく市毛さんも、麻美子の熱燗の提
案に賛同していた。
松浦さんたちは、ラッコのキャビンの快適さ
を褒めていた。
「そんなに良かったら、ぜひまたラッコに乗
りに来てくださいね」
麻美子は、松浦さんたちに伝えた。
「熱燗にしない?」
麻美子が、雪に聞いた。
「いいね、熱燗にしよう」
雪だけでなく市毛さんも、麻美子の熱燗の提
案に賛同していた。
皆が集まって、土鍋で鍋をしていたので、ラ
ッコのキャビンの中は暖房設備をつけていな
いのに、ポカポカと温まっていた。
「鍋のせいもあるかもしれないけど、この船
のキャビンは暖かいね」
「それは、うららよりは暖かいでしょう」
「いや、うららを差し引いても、このヨット
のキャビンは暖かいよ」
「さすがクルージング艇!冬に向いたヨット
だね。いつでも呼んだって来るからね」
加わって、パイロットハウスのサロンでは、
先に飲み会が始まっていた。
鍋に入れる野菜や魚介類をある程度小さく切
り分けたら、鍋の中に放り込んだ。
「あとは煮込むだけかな」
今日は、メインサロンとダイニングサロンに
は別れずに、全員がメインサロンのテーブル
に集まって、テーブルの真ん中に置かれた土
鍋を皆で突っつきあった。
「うまいうまい」
向けて走らせていた。
ラッコが横浜マリーナに戻ってポンツーンに
停まると、キャビンの中のギャレーでお昼の
準備を始めた麻美子だった。
「今日は、お昼は何を作るの?」
「寒いし、簡単だからお鍋にしようかと」
麻美子は、土鍋をギャレーの奥から出しなが
ら、松浦さんに答えた。
「お先に飲んでいてください」
松浦さんに阿古さん、市毛さんの3人に雪も
貯木場には、建設中の横浜ベイサイドマリー
ナの作業のため、台船やクレーン船が出入り
していて、ヨットやボートは入港できなくな
ってしまっていた。
「お昼どうするの?」
「横浜マリーナに戻って、マリーナのポンツ
ーンでお昼にしようか」
隆は、麻美子に返事した。
「香代、マリーナに戻ろう」
香代は、隆に言われて、ラッコをマリーナに
乗りに来てくれることになるとは、この時は
まだ夢にも思っていなかった。
「そろそろ、お昼だし貯木場に入りますか」
麻美子が聞いた。
「来春に横浜ベイサイドマリーナがオープン
するから、もう貯木場は入れないかもよ」
隆が、麻美子に答えた。
「お昼ごはんにヨットを入れられる場所が無
くなってしまうよな」
市毛さんが、隆に答えた。
「本当、めちゃめちゃ楽だわ、毎週ラッコに
乗ってほしいぐらい」
麻美子が言うと、
「いつでも呼んで」
「いや、呼ばれなくても、呼んだって言って
乗りに来ますから」
おじさんたちは笑っていた。
それが、この冬、春が訪れて暖かくなってく
るまでの時期は、ずっと横浜マリーナのヨッ
トオーナーさんたちがラッコにかわるがわる
「いつもだと、えっちらおっちらウインチを
回してセイルを上げないとならないのに、男
の人が大勢いてくれると全部上げてくれてし
まうから楽でいいわ」
麻美子が言った。
「そうかい。セイル上げるぐらいなら、いつ
でも呼んでもらえれば上げるよ」
「ラッコの短いマストのセイル上げるぐらい
ならお安い御用ですよ」
2人は、麻美子に答えていた。
「セイルを上げたい」
香代は、麻美子に伝えた。
「よし、じゃあ、セイルを上げようか」
マスト脇のウインチの側にいた麻美子よりも
先に、松浦さんと阿古さんがウインチハンド
ルを掴むと、シートを引いてあっという間に
セイルを上げてしまった。
「すごい!楽だわ」
麻美子は、2人に感嘆の声をあげていた。
「あっという間に上がってしまったね」
「ラッコの子たちは皆、元気な子が多いのに
彼女は静かなんだね」
松浦さんが、おとなしい香代のことを麻美子
と話していた。
「ええ、普段はもう少し元気なんですけど、
少し人見知りなの」
「え、ヨット乗るのに人見知りなのか」
「でも、可愛くてとっても良い子なのよ」
麻美子は、香代のことを愛おしそうに、松浦
さんと話していた。
「私も、金曜日の会社のお昼は、蕎麦を食べ
ていたよ」
「緑か赤どっちの蕎麦にしたの?」
「カップ麺じゃないよ。ちゃんとしたお蕎麦
屋の定食だよ」
「そうか、お弁当じゃなくて、昼に豪華なも
のを食べているんだな」
「一応、丸の内OLだからね」
瑠璃子は市毛さんと大きな声で話していた。
今日のラッコは人数多くて賑やかだった。
「ラッコが、これだけ生徒さんが残るのは、
彼女たち生徒さんじゃなくて、麻美子さんの
面倒見の良さなんだろうな」
市毛さんが結論づけていた。
「香代ちゃん、セイルは?上げる?」
麻美子は、今日はずっとおとなしくラットを
握っている香代に声をかけた。
「いつでも上げられるよ!」
陽子や香織も、セイルを上げる準備を終えて
待機していた。
れるからだからね」
「そうか」
少し残念そうに、松浦さんが呟いた。
「瑠璃子のセクハラの前に、彼女たちを分散
させたら、麻美子が耐えられませんよ」
隆が、松浦さんに言った。
「あ、うん。私が、この子たち全員を絶対に
手放せない」
麻美子が、隆に頷いた。
「ほら、そうなんだよ」
「そうだろう」
「だから、次のヨット教室が始まる前に、君
らを別々のヨットに振り分けたら、君らが先
導して、新しい生徒さんを育てていってくれ
るんじゃないかってアイデアも出たんだよ」
「それは無理かな」
瑠璃子が、理事の松浦さんに答えた。
「そうなのか」
「うん。だって私が下ネタ、セクハラに耐え
られるのも、ラッコに戻れば隆さんがいてく
「良い分析しているじゃん」
「そうだろう」
瑠璃子に言われて、松浦さんが肯定した。
「君は、アクエリアスの生徒さんだったけど
こっちに移っただろう」
「あ、私?」
香織が、市毛さんに答えた。
「それで、生徒同士が仲良くなると、ヨット
教室の生徒さんって皆、残れるかなと」
「そうね。それはあるかもね」
「え、何が?」
瑠璃子が、松浦さんに聞いた。
「いや、結局、去年のヨット教室で、生徒が
残った船ってラッコだけだったろう」
「うん」
「それを、理事会で分析したんだけど、ラッ
コは皆、同年代の女の子ばかりだったから、
生徒同士が仲良くなって、皆が残ったんじゃ
ないかなと」
松浦さんが言った。
瑠璃子が、陽子への返答に困っていたが、
「あれは、ほら、セクハラじゃなくて下ネタ
だったからね」
瑠璃子が陽子に返事を返していた。
「下ネタも、セクハラも大して変わらなくな
いか、瑠璃子は何でもOKなんだろう」
隆が、瑠璃子に言った。
「まあ、基本的にはね」
瑠璃子は、笑顔で隆に返していた。
「瑠璃子なら、他のヨットでも平気そうか」
瑠璃子が、3人のおじさんたちに言った。
「知ってる!お前はセクハラの会話の中でも
全く問題ないものな」
市毛さんが、いつも明るく陽気な性格の瑠璃
子に答えた。
「セクハラの会話はさすがの私も無理かな」
「そう?先週、プロントの人たちの下ネタの
会話に、自分から入って話していたよね」
陽子が、瑠璃子に言った。
「ああ、あれはね」
「それは、恥ずかしいよな。いきなり、おじ
さんたちがこんなに乗り込んで来たら」
松浦さんは、香代に笑顔で話しかけた。
「普段は、同年齢の若い女の子同士でしか
に乗っていないのだものな」
阿古さんも、香代のことをかばってくれた。
「こんなおじさんが3人もいたら、びっくり
しちゃうよな」
「私、女の子だけじゃなくても、ぜんぜん全
く問題なしで平気だよ」
リスという30フィートのヨットを学生時代
の仲間と2人で共同所有していた。
「ほら、香代!」
香代は、隆に言われて、ラットのところまで
行くと、隆が握っていたラットを交代しても
らった。
香代は、ラッコのラットも握っているのだが
ラット以外に、側にいる隆の袖もずっと握っ
たまま、まるで隆の陰に隠れるようにして、
ラッコのヘルムを取っていた。
にラットを握っていることは、市毛さんもマ
リーナでのラッコを見ていて、すっかりわか
っているのだった。
市毛さんは、横浜マリーナに30フィートの
クルーザーレーサータイプのヨットを保管し
ているオーナーだった。
松浦さんは、言わずとしれたレース艇のうら
らのオーナーだ。
阿古さんは、職人気質のアパレル関係のスタ
イリストさんで、横浜マリーナにはステラマ
「隆のところに行って、隆からラットを代わ
ってもらいなさいよ」
麻美子が、自分の横に隠れるようにしている
香代に声をかけた。
「どうぞ、ラッコのボースンさん、いつもの
ようにヘルムを取ってください」
市毛さんも、香代に言った。
ラッコのクルーの中で、一番背も低く、体も
小さくおとなしい香代が、ここ最近はラッコ
のクルーの中で一番ヨットの成長が著しく常
「香代、ラット変らなくても良いのか?」
いつもならば、マリーナを出航したらすぐに
隆からヘルムを交代する香代だったが、今日
は交代しようと言ってこないので、隆の方か
ら香代に声をかけた。
いつもならば、元気にラットへ飛んでくる香
代だったのに、今日は麻美子の横でおとなし
くしていた。
「香代ちゃん、おじさんたちの事は、気にし
なくてもいいのよ」
航する姿が見えると、
「呼んだ?」
と、そのヨットに近づき、自分のヨットは出
さずに、そのヨットの出航に便乗させてもら
うのが、寒い時期のヨットオーナーたちの常
になっていた。
今週は、ラッコが出航する所を見つかってし
まったので、ラッコが今週来ていたヨットオ
ーナーたちの相乗りになったのであった。
「呼ばれたから来たよ」
「うん、やっぱ呼ばれてたでしょう」
「そうですね」
隆は苦笑しながら、松浦さんに答えた。
横浜マリーナにヨットを保管しているオーナ
ーたちは、寒くなって来ても一応、横浜マリ
ーナには毎週末、顔を出すのではあったが、
寒いもので自分のヨットは出さずに、よくク
ラブハウスの暖房の前でダラダラとお喋りし
て過ごしていることが多かった。
そんなお喋りの最中で、どこかのヨットが出
「え、別に呼んではいないけど」
「なんか呼んだでしょう?」
松浦さんが、にっこりと笑顔で麻美子に再度
聞いた。
「呼ばれた気がしたんだけどな」
松浦さんと一緒に来た阿古さんも、同じこと
を麻美子に聞いた。
「乗りますか?」
ラットを握っていた隆が、コクピットから松
浦さんたちに聞き返した。
寒いので、クラブハウスの前に置かれている
椅子に腰掛けて、ずっと雑談していたうらら
の松浦さんや市毛さん、ステラマリスの阿古
さんたちが、クレーンで降ろされているラッ
コの船体に気づいた。
「なんか呼んだ!?」
松浦さんたちは、ちょうどクレーンで水面に
降ろされたばかりのラッコにやって来た。
そこには、隆たちと一緒に、水面に降りたば
かりのラッコに乗ろうとする麻美子がいた。
麻美子や隆より少しだけ年上の雪が言った。
「雪ちゃんは元気だから」
船台の上のラッコに上がると、出航準備を終
えて、マリーナ職員にクレーンで下ろしても
らえるようにお願いしに来た麻美子だった。
横浜マリーナ職員は、クレーンを動かして、
ラッコを水面に下ろしていた。
「お、出航するヨットがあるじゃん」
横浜マリーナのクレーンが大きな音をたてて
ヨットの船体を下ろす作業をしていた。
に脚立を掛けて、ラッコへ上がった。
「身体を少し動かせば、若さですぐポカポカ
になるよね」
「そうだよね」
陽子と香織は話していた。
「もうあまり若くない人としては、少しぐら
い動かしてもポカポカにはならないけど」
2人の後についてきた麻美子が言った。
「麻美ちゃんがもうあまり若くなかったら、
私はどうなるのよ」
いる子がいるよ」
隆は、香代の履いているショートパンツを指
差しながら、言った。
「え、ちゃんとショートパンツの下にタイツ
履いているよ」
「タイツって暖かいものね」
香織が言った。
「身体を動かせば暖かくなるよ。セイル準備
を始めよう」
陽子が皆を誘って、ラッコの出航準備のため