ニューヨークピュアラブストーリー・第五十九話 #ニューヨークピュアラブストーリー

「もうスリーアウトなの？」

「うん、うちのチームは弱いからね」

補欠なので、グランドに出ない治が、ゆみに

答えた。ゆみの側にいる時は、声が小さくな

る良明が、グランドで、ゆみから離れると、

大きな声で、皆に気合を入れていた。

「学校では話さないのに、野球では元気ね」

ゆみは、良明を眺めてつぶやいた。

「お弁当作ってきたから、皆で食べてね」

ゆみは、ベンチの治に伝えた。

「ゆみ、こっちのベンチにも来てよ」

グランドから自分のベンチに戻る途中、日本

人チームのベンチに立ち寄ったジェフは、そ

こにいるゆみに声をかけた。

「お腹空いたら、食べてもいいからね」

ゆみは、治に伝えると、お弁当のバスケット

を置いて、ジェフのベンチに移動した。

「このお弁当は、良明君のお弁当だからね」

ゆみは、良明用に作ってきた弁当も、治に渡

してもらえるようにお願いした。

「うわー、ゆみちゃん！」

ゆみが、アメリカ人チームのベンチに行くと

ベンチから大きな歓声が上がって、ベンチの

選手たちは、ゆみのことを歓迎してくれた。

「ゆみちゃん、相変わらず人気あるな」

グランドで守っている日本人チームの子たち

は、アメリカ人チームのベンチからの歓声に

反応していた。

「ゆみ。俺、ホームランを打つよ！」

４番のウイリアムがバットを振ってみせた。