中古車輸出・第61話

中古車オークション会場で落札すると会場の

手数料、1・5万ぐらいに輸出手続き料2万

ぐらい、会場から近くの港までの陸送料2万

ぐらいが掛かる。

それに、後は自分たちの会社の利益も足さな

ければならない。

「利益は5・5ぐらい足せばいいかな」

ゆみは、シャランに言った。

「利益ってどのぐらい足すの」

今井ゆみは、シャランたち営業担当者に聞

いて、周っていた。

中古車輸出・第62話

利益の出し方は、担当者それぞれで全然違っ

ていて、2万か3万ぐらいで安く見積もって

数を売って利益を得ていこうというタイプ、

営業経費などを考慮して5万、10万ぐらい

と強気で見積もるタイプなどに別れていた。

「でも経費とかも掛かるし、8万ぐらいは足

しておいた方が安全かな」

今井ゆみは、営業担当者皆の意見を参考に考

えていた。

「安く見積もりすぎて、赤字になってしまっ

たら大変だものね」

中古車輸出・第63話

最初から安く見積もらなくても、商談の中で

もう少し安くしてあげないとだめそうな方に

は、後から多少低く見積もり直してあげるよ

うにしてあげよう。

「少し高くないか」

ゆみは、見積もった金額をパキスタンの海外

バイヤーに提出すると、パキスタンの海外バ

イヤーから返答がきた。

そうね、それじゃと、ゆみは7500円だけ

提示した金額より引いてあげた。

「このぐらいならば良いでしょう」

中古車輸出・第64話

うちの会社だって、いろいろな経費も掛かっ

ているのだし、これ以上は、さすがに無理よ

と一言つけ加えて返答すると、その先は何も

返答が無くなってしまった。

「これ以上、安くしすぎても」

「それはそうだよな」

部長はともかく社長は、今井ゆみの方針に納

得してくれた。

「パキスタンの奴らは。値引きが多すぎるか

ら、全然おもしろくないぞ」

社長は、ゆみに答えた。

中古車輸出・第65話

今井ゆみに返事をくれた残りの2人、1人は

タンザニアの海外バイヤーだった。

タンザニアは、アフリカ大陸の右下辺りにあ

る国だ。アフリカの国は、日本から世界へ輸

出されている中古車の国の中で最もポピュラ

ーな国の一つだった。

「この国ならば、楽勝で受注できるわよね」

タンザニアやケニアなどアフリカの国々は、

月末にいつも会社でやっている売上げ報告会

議でも、シャランを始め、どの営業担当者も

普通に輸出している国だった。

中古車輸出・第66話

この国ならば、さすがにウェブの仕事しかし

ていない今井ゆみでも、車1台ぐらいの注文

ならば取れるだろう。

「タンザニアさんからは、車の注文をもらえ

るといいな」

と強く思っていた。

今井ゆみは、前にパキスタンからのオファー

メールの時に、シャランに聞いた返信の書き

方を思い出しながら、自分のこと、会社の自

己紹介から順番に返信文を書いていた。

「今度の車はハイエースか」

中古車輸出・第67話

今井ゆみは、また中古車オークション会場の

サイトにログインすると、ハイエースの落札

相場を確認していた。

ハイエースってすごく高い車からけっこう安

い車までいろいろあるのね。

前回は、パキスタンの人に安く安く言われて

お返事ももらえなくなってしまったし、高い

ハイエースで欲張るよりも、あんまり高くな

い方のハイエースで話を進めた方が、きっと

注文してもらえるわね。

「安めの車、安めの車」

中古車輸出・第68話

「この値段だったら、嬉しいんだけど」

タンザニアの海外バイヤーからゆみの所に返

事が返ってきた。

「この車は、18名乗れるのか?」

「18人も乗せたいの?」

「乗り合いタクシーをしたいからね」

海外バイヤーは、ゆみに言った。

タンザニアの人は、乗り合いタクシーの運転

手さんなのね。

「ハイエースの荷台に、ベンチシートとか置

けば、18人ぐらい乗れるのかな」

中古車輸出・第69話

「このハイエースって18人乗れるのか」

今井ゆみが返答すると、タンザニアの海外バ

イヤーからさらに質問がきた。

確かに、後部は広い荷物入れになっているけ

ど18人も乗れるのかな、乗れても椅子がな

いから乗るの大変じゃないかな。

「シャラン、ここに18人も乗れる?」

今井ゆみは、シャランに、自分が海外バイヤ

ーに送った写真を見せながら質問した。

「そんなところに人は乗れないよ」

シャランは、ゆみに答えた。

中古車輸出・第70話

そんなところに18人も乗れるわけないよ。

18人乗れるハイエースは、ハイエースコミ

ューターっていうハイエースのことよ。

「ハイエースコミューター?」

「オークション会場で検索してみなよ」

シャランに言われて、ゆみは中古車オークシ

ョン会場にログインして、検索してみた。

「あ、バスみたいなハイエースじゃん」

「バスだから」

シャランは、ゆみの返事に苦笑していた。

「こういうハイエースが欲しいのね」

中古車輸出・第71話

ハイエースには、何種類かあって、普通に後

部座席があるもの、後部が全て荷物入れにな

っているもの、車椅子などが乗れるようにな

っているもの、座席数が18人分あるバスタ

イプのものがある。

「アフリカってコミューターばかりなのね」

特にアフリカでは、この18人分の座席があ

るハイエースコミューターというものが人気

で、コミューターで探ておくと話が早い。

いわゆるよく田舎で走っている路線バスより

車体の小さいコミュニティーバスのことだ。

中古車輸出・第72話

コミューターの中でも、天井が高く盛り上が

っているハイルーフタイプのものが特に好ま

れる。アフリカの海外バイヤーからハイエー

スと言われたら、ハイルーフのハイエースコ

ミューターで探すと話が通じやすい。

アフリカの海外バイヤーで、ハイルーフのハ

イエースコミューターがほしいと望んでくる

バイヤーは、大概そのバスを使ってタクシー

乗り合いバスを始めたいという人が多い。

「アフリカって、バスの運転手さんになりた

い人がすごく多いのね」

中古車輸出・第73話

今井ゆみは、タンザニアの海外バイヤーとは

そんな会話を長々といろいろお喋りを続けて

けっこう感触は良い感じだった。

なのに、車の受注までには至らずに、メール

は途切れてしまった。

「残り1件はイランの人か」

今井ゆみは、イランから届いたオファーメー

ルの内容を確認した。

建設会社と取引している人なのだろうが、日

野自動車の日野レンジャーというトラックを

現場で大量に必要だという依頼だった。

中古車輸出・第74話

今井ゆみは、中古車オークション会場にログ

インすると今度は「日野レンジャー」で検索

してみる。

中古車オークション会場の使い方にも、だい

ぶ慣れてきていた。

日野レンジャーの落札相場を確認し、古いも

のから新しいものまで豊富に揃っていること

も確認できた。

「うん、いいトラックいっぱいある」

これなら大丈夫と、今井ゆみは思った。

「お願い、イランの人、どれか買ってね」

中古車輸出・第75話

今井ゆみは、イランの海外バイヤーにそのこ

とを伝えてあげた。

2015年ぐらいのものからいくらでも揃っ

ているから、注文してもらえれば、すぐにで

も輸出してあげられるよ。

今井ゆみは、イランの海外バイヤーには、け

っこう丁寧に自己紹介も入れて返信してあげ

ていたつもりだった。

だが、なぜか何も返事をもらえなかった。

「トラックの大量注文だものね」

流石に、私じゃ受注できないか。

中古車輸出・第76話

さすがに大型注文だったし、中古車輸出業の

素人営業担当じゃ相手にもされなかったか。

その後も毎日のように、営業担当者たちにオ

ファーメールを振り分けるだけでなく、自分

でも届いたオファーメール宛に返信し続けて

いたのだったが、いずれも、たまにお返事が

返ってきて、その海外バイヤーには、さらに

返信を書いて、メールのやり取りを続けては

いたのだが、なぜか車の受注までには至らな

かった。

「どうやったら、注文を取れるのだろう」

中古車輸出・第77話

「なかなか車の注文取れないな」

月末の売上げ報告会議の時、今井ゆみは社長

にも言われてしまっていた。

このままでは、本当にうちの会社のサイトか

ら来るオファーメールは、いたずらやスパム

メールばかりってことになってしまうなと冗

談交じりに、社長はゆみに言った。

「来月こそ絶対1台は車の注文取ります!」

「よし、頑張れ」

ゆみは、悔しくて思わず報告会議で社長に宣

言してしまっていた。

中古車輸出・第78話

今井ゆみは、社長から会社に届いた手紙を手

渡された。

「え、何これ」

ゆみは、社長から手渡された手紙の封筒を開

けると、中身を確認してみた。

丁寧なメールをありがとうと書かれていて、

日野レンジャーのトラックを200台順番に

送ってほしいと記載されており、手紙と一緒

に途轍もない金額が記載された書き留めが同

封されていた。

「なんなの、この金額」

中古車輸出・第79話

「私が見積もった金額じゃないんだけど」

ゆみは、社長にイランの人に見積もった時の

メールを見せた。

「金額は合っているけどな」

ゆみが見積もったのは、トラック1台分の金

額だった。社長は、計算機を使って、台数を

かけてみると、その途方もない金額は、ぴっ

たしの金額ではあった。

「それじゃ、車が売れたってこと?」

「なんとも言えない、現金書留だしな」

社長は、悩んでいた。

中古車輸出・第80話

「確かに、私がイランからのオファーメール

に返信したけど、全く何も返事をもらえなか

ったから駄目だったんだなと思って忘れてい

たんだけど」

ゆみは、社長に言った。

「詐欺だとは思うけどな」

社長は、ゆみに言った。

「この書き留めも?」

「ああ、偽物の書き留めだろう、恐らく換金

もできない偽物だろう」

ゆみは、手紙をデスクのゴミ箱に捨てた。

中古車輸出・第81話

「万が一、換金できるかもしれないから換金

手続きだけしてみるか」

「換金できたらトラック200台仕入れて、

輸出するの?」

「うまく200台仕入れられたとしても、犯

罪に使われる車に貢献することになるかもし

れない」

社長は、ゆみに警告した。

「やっぱり、辞めよう」

ゆみは、社長がゴミ箱から拾い上げた手紙を

再度ゴミ箱に捨てながら言った。

中古車輸出・第82話

「でも、換金できるかもしれないし手続きぐ

らいしてみるか」

社長は、ゆみに聞いた。

「え、やっぱ辞めておく」

「換金できるか手続きぐらい試してみるか」

社長に言ってもらえたが、ゆみは断った。

「頑張ってもっとちゃんとした海外バイヤー

から注文もらう」

「そうか、それならば頑張ってみなさい」

社長は、ゆみに言った。

「今井なら、もう少しで車の注文取れるさ」

中古車輸出・第83話

そして、社長と部長の予想通り、ゆみの初注

文が取れる日は近かった。

「え、ポルシェが欲しいって、ヨーロッパの

海外バイヤーさんがいるんだけど」

ゆみは、その日のオファーメールの内容を確

認していて気づいた。

いつも、オファーメールはアフリカや中東ア

ジア、オセアニア、カリブ諸島など南米から

来るものが多かった。

「ドイツ、ヨーロッパから来るオファーメー

ルなんて初めて見た」

中古車輸出・第84話

「そんなの無視しておきなよ」

シャランは、ゆみにアドバイスした。

「どうして?」

「だってポルシェってドイツ製の車だよ。な

んでドイツの人がポルシェ欲しいって日本に

オファーしてくるのよ」

シャランは、ゆみに言った。

「そうなのかな?」

でも、いつもお返事はアフリカとかの人ばか

りだったから、ゆみとしては、なんかヨーロ

ッパの人と話してみたくなった。

中古車輸出・第85話

「私、お返事書いてみようかな」

ゆみは、シャランに言った。

営業担当者皆が、いたずらだと言い、誰もお

返事を書こうとしなかったので、そのまま放

ったらかしでは、かわいそうだなとも思った

のだった。

そして、ドイツの海外バイヤーさんにお返事

を書いてみたのだった。

「ゆみ、お返事ありがとう」

次の日、ドイツの海外バイヤーさんからゆみ

宛にお返事が返ってきていた。

中古車輸出・第86話

「ゆみ、お返事ありがとう」

ゆみは、ドイツの海外バイヤーさんからのメ

ール内容を確認した。

80年代ぐらいの古いベンツやポルシェの車

がほしいのだけど、そちらの市場に、いくつ

か在庫があるだろうか。もしあるのならば、

まずはポルシェの車で取引を始めたいという

内容だった。

ゆみは、早速中古車オークション会場のサイ

トにログインすると、ポルシェの車を検索し

てみた。

中古車輸出・第87話

それなりに、けっこう日本の市場にも、ポル

シェの車ってたくさんあるじゃないの。

見つけた車を何台かドイツの海外バイヤーさ

ん宛にメールで教えてあげた。

「シャラン、プロフォーマインボイスってな

に?どうやって作るの?」

ゆみは、シャランに質問した。

ドイツの海外バイヤーが車を教えてくれてあ

りがとう、良い車が日本市場にもあることが

わかったので発注したいから、プロフォーマ

インボイスが欲しいという返事だった。

中古車輸出・第88話

「正式なインボイスの前に送る予備のインボ

スのことよ」

「予備のインボイス?」

「プロフォーマインボイスの価格とかを確認

して、海外バイヤーが注文するか決めるの」

「見積書みたいなものね」

「見積書?」

今度は、シャランの方がゆみに質問した。

「見積書のことじゃないの?」

「何それ?」

シャランは、ゆみに聞き返した。

中古車輸出・第89話

「見積書?」

シャランは、スリランカ人なので時々わから

ない日本語もあった。

何か物を買う時に、いくらかわからないから

営業の人に金額を教えてと聞くと、作っても

らえる書類とゆみが説明した。

「うーん、見積書で良いのかな?」

「正確には、プロフォーマインボイスと見積

書は違うものだけど、まあ、そんなようなも

のと考えてもいいよ」

部長が、ゆみに答えた。

中古車輸出・第90話

シャランが返事に困っていると、奥の席で2

人の会話を聞いていた部長が教えてくれた。

ゆみは、シャランからプロフォーマインボイ

スのテンプレートファイルをもらって、ドイ

ツの海外バイヤー宛のものを作成した。

「お返事ありがとう」

ゆみは、ドイツのバイヤー宛に返信した。

「プロフォーマインボイスを作成しましたの

で、お送りします。ご検討ください」

なるだけ、自分がにわか中古車輸出業者だと

思われないように書いたつもりだった。